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地質環境の長期安定性に関する研究

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FAQ

Q.隆起・沈降の速さはどれくらいですか?

A.隆起・沈降の速さはほとんどの地域で千年に1m以下です。

隆起しているか沈降しているかは場所によって異なります。日本列島全体としては隆起している地域が多いと考えられますが、平野部では沈降しています。隆起速度も沈降速度も、その速さは最大でも1m/千年程度であり、ほとんどの地域はそれ以下です。

図1 最近10万年間における日本列島の隆起速度の分布.単位はm/千年
図1 最近10万年間における日本列島の隆起速度の分布.単位はm/千年.藤原ほか(2005)による


海岸部では海成段丘の高度分布から、最近の約12.5万年間の隆起量が調べられています(図2)。これによると、日本の海岸部では、12.5万年前から現在にかけては隆起している地域が多く、その大きさは10~100 mほどであることが分かります。これは、隆起速度に換算すると、1 m/千年以下の速さとなります。内陸の山地域では、主に河岸段丘の高度分布から隆起量(速度)が求められていますが、海岸域に比べてデータの質・量ともにやや劣っています。内陸部では、海岸域に比べて平均的な隆起速度は大きいのですが、最大値では概ね1 m/千年以下と、海岸域とほぼ同程度の速さとなります。
日本列島全体としては隆起している地域が多いのですが、平野や盆地では100万年前以降の地層が厚く堆積していることから、最近100万年間は沈降していると考えられます(図3)。その速さは、地層が堆積した年代と現在の深度から、計算することができ(図4)、概ね1m/千年程度かそれ未満であると考えられます。


図2 最終間氷期(約12.5万年前)に形成された段丘の旧汀線高度(単位m)
図2 最終間氷期(約12.5万年前)に形成された段丘の旧汀線高度(単位m)
当時の海面高度(現在比約+5m)を差し引いた値が、過去約12.5万年間の隆起量に相当する。太田(1996)による。


隆起しているか沈降しているかは場所によって異なります。日本列島全体としては隆起している地域が多いと考えられますが、平野部では沈降しています。隆起速度も沈降速度も、その速さは最大でも1m/千年程度であり、ほとんどの地域はそれ以下です。

図3 鮮新世・更新世の堆積盆地の分布
図3 鮮新世・更新世の堆積盆地の分布
堆積盆地では、最近の地質時代では沈降が進んでいると考えられる。


図4 第四紀堆積盆における100万年前以降の地層の深度と年代の関係
図4 第四紀堆積盆における100万年前以降の地層の深度と年代の関係
赤線が沈降速度1m/千年を表す。赤線の右下の範囲では、沈降速度は1m/千年以下となる。小池・町田編(1999)による。



[文献]
小池一之,町田 洋編(1999):日本の海成段丘アトラス,東京大学出版会,105p
藤原 治,柳田 誠,三箇智二,守屋俊文(2005):地層処分からみた日本列島の隆起・侵食に関する研究,原子力バックエンド研究,11,113-124.
成瀬 洋(1990):日本の第四紀盆地の形成と変遷,大阪経済大学教養部紀要,8,pp.70-85.
太田陽子(1996):最終間氷期の海岸線に関する諸問題,小池一之・太田陽子編「変化する日本の海岸」,古今書院,pp.69-99.