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地質環境の長期安定性に関する研究

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FAQ

Q.火山の活動地域が変わることはありますか?

A.日本列島の火山の活動地域は200万年前から現在までほぼ変わっていません。

現在から200万年前までの火山活動は、東日本火山帯と西日本火山帯の中で活動しており、火山フロントの海溝側には活動が認められません。また、東北日本弧における火山フロントは脊梁山地の東西20~30 kmの範囲内に位置しています。
また、火山岩類・深成岩類の分布範囲からも、中新世後期~鮮新世頃から概ね今の場所で活動が続いていると考えられます。

図 日本列島における第四紀火山の時空分布1    日本列島における第四紀火山の時空分布2
図 日本列島における第四紀火山の時空分布
A: 0~0.5 Maに活動した火山,B: 0.5~1.0 Maに活動した火山
C: 1.0~1.5 Maに活動した火山,D: 1.5~2.0 Maに活動した火山

図 中新世後期~鮮新世以降の火山岩類および深成岩類の分布
図 中新世後期~鮮新世以降の火山岩類および深成岩類の分布


「第四紀火山カタログ」(第四紀火山カタログ委員会編,1999)のデータをもとに、日本列島における第四紀火山活動の時間的・空間的変化を把握するため、現在から200万年前までに活動した火山の分布を50万年ごとに整理して検討した結果、第四紀火山は、東日本火山帯と西日本火山帯の中で活動しており、火山フロントの海溝側には活動が認められないことがわかります。また、東北日本弧における200万年前以降の火山フロントには新第三紀中新世にみられるような顕著なフロントの移動は認められず、各時代の火山フロントは脊梁山地の東西20~30 kmの範囲内に位置しています(梅田ほか,1999)。このように第四紀の時間スケールでは、島弧スケール(数百kmオーダー)の火山活動の変化、たとえば、火山フロントの顕著な移動などは確認されません。このことから、第四紀の時間スケールでの火山活動の変化については、むしろ、火山帯の中の火山地域や火山列(数十kmオーダー)での活動の変化、たとえば、活動域の拡大・縮小、移動などを検討する必要があります。
また、中新世後期~鮮新世以降になると、それ以前に比べて火山活動が偏在する傾向が認められます。中新世後期~鮮新世、更新世前期、更新世中期、更新世後期~完新世の火山岩類および深成岩類の分布範囲が第四紀の東日本火山帯と西日本火山帯にほぼ一致していることからも、日本列島の火山活動の偏在性は、およそこの時期まで遡ることができると考えられます。


図 東北日本における各時代の火山フロント
図 東北日本における各時代の火山フロント

<文献>
地質調査所(1992):100 万分の1 日本地質図幅 第3 版,地質調査所.
第四紀火山カタログ委員会(宇井忠英,荒牧重雄,梅田浩司,河内晋平,小林哲夫,小山真人,佐藤博明,高橋正樹,千葉達朗,津久井雅志,林信太郎,湯佐泰久)編(1999):日本の第四紀火山カタログ(CD-ROM版),日本火山学会.
梅田浩司,林信太郎,伴 雅雄,佐々木 実,大場 司,赤石和幸(1999):東北日本,火山フロント付近の2.0 Ma 以降の火山活動とテクトニクスの推移,火山,44, pp.233-249.

火山地域や火山列(数十kmオーダー)での活動の変化

火山地域・火山列スケールでの火山活動の時間的・空間的変化を把握するためには、対象とする地域の火山すべてについて精密な活動史を編纂する必要がありますが、わが国ではこのような調査・研究がなされている地域はあまりありません。ここでは、これまでに比較的多くの火山地質調査や放射年代測定などが行われており、火山活動の時間的・空間的変化について検討されている仙岩地域(梅田ほか,1998;大場・梅田,1999)に関する事例を示します。
東北日本の仙岩地域には東西50 km、南北30 kmの範囲に岩手、秋田駒ケ岳、秋田焼山などの活火山を含めて37 の火山が分布しています。これらの火山のうち、200万年前から現在までに活動を開始した火山の分布によると、南西に分布する火山に比べて北東に分布する火山の活動の開始時期が新しいことがわかります。また、この地域の火山の活動期間は数万年~数十万年程度であることから、活動域は南西から北東に移動していることになります。
以上のように、火山地域・火山列スケールでの火山活動は、第四紀の時間スケールの中で活動域の拡大・縮小あるいは移動などの変化が生じており、これらの変化にはある一定の傾向(方向・速度など)が認められる場合があります。

図 仙岩地域における第四紀火山(噴出中心)の出現年代(活動開始年代)
図 仙岩地域における第四紀火山(噴出中心)の出現年代(活動開始年代)

<文献>
大場 司,梅田浩司,(1999):八幡平火山群の地質とマグマ組成の時間-空間変化,岩鉱,94,pp.187-202.
梅田浩司,中司 昇,湯佐泰久(1998):地質環境の長期安定性:火山活動について,日本原子力学会1998 年秋の大会,p.829.