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地質環境の長期安定性に関する研究

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FAQ

Q.火山の分布に規則性はありますか?

A.日本列島の火山の分布には規則性があります。

日本列島およびその周辺海域は沈み込み帯に位置し、ここには約350の第四紀火山が分布しています。これらの火山は、千島、北海道、東北本州を経て伊豆諸島からマリアナに至る東日本火山帯と山陰から九州を経て南西諸島に至る西日本火山帯に分布しています。これらの分布の特徴は、プレートの配置、沈み込む方向・角度、沈み込むプレートの年代あるいはその到達深度などと密接に関係していると考えられます。

図 日本列島周辺のプレート配置と第四紀火山の分布
図 日本列島周辺のプレート配置と第四紀火山の分布

東日本火山帯は北米プレート、ユーラシアプレートおよびフィリピン海プレートの上に位置し、そこには太平洋プレートが沈み込んでいます。火山フロント(火山の分布する最も海溝に近い縁)は千島弧、東北本州弧、伊豆-小笠原弧の3つの島弧-海溝系の伸長方向に対してほぼ平行に延びています。
西日本火山帯はユーラシアプレートの上に位置し、そこにはフィリピン海プレートが沈み込んでいます。東日本火山帯と西日本火山帯の間には150 kmに及ぶ火山分布の空白域が存在しています。
火山の分布密度、すなわち火山の発生頻度については、沈み込むプレートの年代とその沈み込みの方向に関係していることが指摘されています。東北日本弧や琉球弧のように明瞭な火山フロントを形成する島弧には比較的古いプレートが島弧とほぼ直交方向に沈み込んでいるのに対して、西南本州弧では比較的若いプレート(四国海盆)が斜交して沈み込んでいます。この理由については、前者の方がプレートが効率的に引きずり込まれるため、ウエッジマントルにおける対流が後者に比べて顕著となり、活発な火山活動が引き起こされたという考え(Uto and tatsumi, 1996)もあります。
また、日本の第四紀火山(約350)について、火山体の構造や噴出物の種類、噴火年代や岩石の量比などをとりまとめた「第四紀火山カタログ」(第四紀火山カタログ委員会編、1999)が作成されています。

[文献]
第四紀火山カタログ委員会(宇井忠英,荒牧重雄,梅田浩司,河内晋平,小林哲夫,小山真人,佐藤博明,高橋正樹,千葉達朗,津久井雅志,林信太郎,湯佐泰久)編(1999):日本の第四紀火山カタログ(CD-ROM版),日本火山学会.
Uto,K. and Tatsumi,Y(1996):Quaternary volcanism of the Japanese Islands, The Island Arc, 5, pp.250-261.


東日本火山帯

千島弧の南西部に位置する北海道東部の火山は、北東-南西方向に雁行配列し、その方向は千島弧の伸長方向に斜交しています。また、この地域の火山は、利尻を除くと火山フロントから60 km以内の範囲に分布しています。北海道東部で東北東-西南西方向に延びている火山フロントは、北海道南西部において南北方向に変化し、東北本州弧の伸長方向とほぼ平行になっています。ただし、千島弧との会合部にあたる地域では約50 kmの火山分布の空白域が存在しています(中川ほか,1995)。
東北地方の第四紀火山は火山フロントにあたる脊梁山地とその背弧側に位置しています。脊梁山地の火山のほとんどは、7 つの火山地域(数~数十の火山が密集した地域)に分布し、火山地域と火山地域の間は60~100 kmにわたって火山分布の空白域になっています(林ほか,1996)。また、背弧側の火山は、これらの火山地域の西側に分布しており、そこでの深発地震面の深さは約160 kmになります。
関東・甲信越地方は東北本州弧と伊豆-小笠原弧の会合部に位置し、火山フロントも著しく屈曲しています。この地域では広い範囲で火山が分布していますが、そこには北東-南西方向に延びる3つの火山列が認められます。これらの火山列は平行に配列しており、相互の間隔は約50 kmです(Uto and tatsumi, 1996)。富士火山以南の火山帯は、伊豆-小笠原弧の伸長方向に平行に北北西-南南東に延びています。火山帯の幅は南に向かうにつれて徐々に狭くなりますが、沈み込んでいる太平洋プレートの沈み込みの角度は南に向かうにつれて大きくなります。最終的に火山帯は一列の火山島になります。伊豆-小笠原弧の第四紀火山(七島-硫黄島海嶺)のすぐ西側には八丈凹地やスミス凹地などの背弧凹地が存在しますが、これらは第四紀以降、拡大を開始した可能性があります(Taylor et al., 1991;西村・湯浅,1991)。


[文献]
林信太郎,梅田浩司,伴 雅雄,佐々木実,山元正継,大場 司,赤石和幸,大口健志(1996):東北日本,第四紀火山の時空分布(1)-背弧側への火山活動域の拡大-,1996 年度日本火山学会講演予稿集,2,p.88.
中川光弘,丸山裕則,船山 淳(1995):北海道第四紀火山の分布と主成分化学組成の広域変化,火山,40,pp.13-32.
西村 昭,湯浅真人(1991):伊豆・小笠原弧のスミスリフト-海洋性島弧における背弧リフトの形成の一例-,地球科学,45,pp.333-344.
Taylor,B., Klaus,A., Glenn,RB., Moore,G.F., Okumura,Y. and Murakami.F.(1991):Structural Development of Sumisu Rift, Izu-Bonin Arc, Jour. Geophys. Res., 96,pp.16113-16129.
Uto,K. and Tatsumi,Y(1996):Quaternary volcanism of the Japanese Islands, The Island Arc, 5, pp.250-261.


西日本火山帯

近畿から山陰にかけての西南本州弧の東側の火山は、分布密度が低く、他の島弧のように明瞭な火山フロントを認識することができません。また、この地域にはいくつかの完新世に活動した火山が存在しますが、歴史時代に噴火した火山は知られていません。さらに、西南本州弧の日本海側に沿ってアルカリ玄武岩の単成火山群が離散的に分布するという特徴もあります。これらの地域の深発地震面は深さが約80 km以浅までしか観測されておらず、これらの火山は、沈み込み帯に関連しない火山である可能性があります(Iwamori, 1992;宇都,1995)。
九州中部には雲仙火山、阿蘇火山、九重火山などの活火山が分布していますが、これらの火山は別府-島原地溝帯に位置しています。別府-島原地溝帯は沖縄トラフの拡大軸の延長(木村,1983;多田,1983)、あるいは大分-熊本構造線の右横ずれ運動にともなうグラーベン(鎌田,1992)と考えられており、南北方向の地殻水平歪も大きく、東西方向に伸びる正断層が多数分布しています。
九州南部の霧島火山と阿蘇火山の間の約150 kmは、火山分布の空白域です。この空白域は九州-パラオ海嶺と呼ばれる海山の列が沈み込んでいる地域の西側(背弧側)に位置しています。九州の下で観測された深発地震面によると、九州中部では沈み込み角度が70°であるのに対して九州南部では50°とやや緩くなっています。また、深発地震面の最深部は前者で140 km、後者で170 kmです。
琉球弧の火山フロントは霧島火山から南西側に延び、沖縄鳥島付近までは明瞭ですが、それ以南は陸域に存在する第四紀火山は認められません。しかしながら、火山フロントの延長上には地磁気異常をともなう海山や海丘が存在し、これらは第四紀火山である可能性があります(古川,1991)。火山フロントの直下の深発地震面の深さは約100 kmです。また、火山フロントの背弧側には沖縄トラフが存在していますが、これは第四紀初頭に拡大を開始したことが指摘されています(木村ほか,1985)。



[文献]
Iwamori,H(1992):Degree of melting and source composition of Cenozoic basalts in Southwest Japan; evidence for mantle upwelling by flux melting. Jour. Geophys. Res., B97, pp.10983-10995.
古川雅英(1991):琉球弧のテクトニクスと西表島群発地震,月刊地球,13,pp.656-663.
鎌田浩毅(1992):中央構造線の西方延長としての大分-熊本構造線の右横ずれ運動とフィリピン海プレートの斜め沈込み-,地質学論集,no.40,pp.53-63.
木村政昭(1983):沖縄トラフの陥没構造形成に関する考察,地質学論集,no.22,pp.141-157.
木村政昭,伊勢崎修弘,古川雅英,石原丈実(1985):沖縄トラフ中部の地磁気異常,地学雑誌,94,pp.16-29.
多田 尭(1983):沖縄トラフの拡大と九州地方の地殻変動,地震,37,pp.407-415.
宇都浩三(1995):火山と年代測定-K-Ar, 40Ar/39Ar 年代測定の現状と将来,火山,40,pp.S27-S46.

第四紀火山カタログ

第四紀火山の活動年代、規模、噴火様式などの特徴および活動域の時間的・空間的変化を把握するためには、第四紀火山の情報を収録したデータベースが必要となります。日本列島における第四紀火山のデータベースとしては、1962年にIAVCEI(国際火山学地球内部化学会)の前身が刊行した活火山カタログや気象庁が刊行した日本活火山総覧、地質調査所による「日本の火山第2版」などがありますが、これらは活火山が対象であったり、収録項目が限られたりしていました。そのため、日本列島のすべての第四紀火山(約350)を網羅し、各火山の特徴を簡潔に記載した「第四紀火山カタログ」が取りまとめられました。
火山カタログの収録火山は、地質調査所による「日本の火山第2版」を基本として、その後、得られた年代測定結果などに基づいて、第四紀火山の加除修正を行っています。収録したデータ項目は、火山体の構造分類、中心火道の緯度・経度、火山体の面積・体積、噴出物の種類、噴火年代、産出する岩石名とその量比、SiO2組成レンジと分析データ数、文献リスト、火山地質図などです。


図 第四紀火山カタログの例(羊蹄)
図 第四紀火山カタログの例(羊蹄)

[文献]
第四紀火山カタログ委員会(宇井忠英,荒牧重雄,梅田浩司,河内晋平,小林哲夫,小山真人,佐藤博明,高橋正樹,千葉達朗,津久井雅志,林信太郎,湯佐泰久)編(1999):日本の第四紀火山カタログ(CD-ROM版),日本火山学会.

[関連情報(外部サイトへのリンク)]
日本の第四紀火山カタログの紹介(日本火山学会HPからのリンク)
http://www.geo.chs.nihon-u.ac.jp/tchiba/volcano/index.htm