地質環境の長期安定性に関する研究
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FAQ
Q.断層が動いた場合,地下施設に影響はないのでしょうか?
A. 活断層が、岩盤中の地下のトンネルで動いた例がありますが、その被害は小さいものでした。
活断層をトンネルが横断し、その活断層が動いた例があります。1930年の北伊豆地震によって、掘削工事中の丹那トンネルの中の活断層が動きました。しかし、トンネルは形状を保ったまま断層を境に約2mずれただけでした。このように、断層活動にともなう地下構造物の破断・破砕は、活断層破砕帯の近傍に限られ、比較的小さいといえます。

活断層が動くと地下深部では、断層角礫、断層ガウジ、カタクレーサイトなどの断層岩が形成されます。この中には、カタクレーサイトのように過去に地下深部で形成され、その後の隆起・侵食によって地表近くに現れたものもあります。ここでは、安全側に評価するとの観点から、断層岩の存在する帯を活断層に伴う破砕帯(以下、活断層破砕帯)と呼びます。室内実験と国内外の断層データから、活断層破砕帯の幅と累積変位量との間に相関があることが知られています(Otsuki,1978)。
○断層を横切るトンネルの断層活動による変位に関する報告事例
1930年北伊豆地震(M7.3,丹那トンネル)と1978年伊豆大島近海地震(M7.0,伊豆急稲取トンネル)では、丹那断層で約2m、稲取-大峰山断層で50~70cm程度の変位が生じました。1930年の北伊豆地震の場合は活断層破砕帯から西側1.5kmまで(羽田,1981)、1978年伊豆大島近海地震の場合は活断層破砕帯周辺の約400mの区間で変形が認められました(小野田ほか,1978)。なお、1995年兵庫県南部地震(M7.2)によるトンネルの被害は、ほとんどが被圧水や断層粘土をともなうような破砕帯部分での崩落であり、横尾山断層で8cmの変位が1箇所確認されています(小山ほか,1996)。
[文献]
羽田 忍(1981):いわゆる活断層の工学的問題点と取扱い.応用地質, 22, pp. 17-31.
小山幸則,朝倉俊弘,佐藤 豊(1996):兵庫県南部地震による山岳トンネルの被害と復旧.トンネルと地下, 27, pp. 235-245.
日本原子力研究開発機構(1999;当時,核燃料サイクル開発機構):わが国における高レベル放射性廃棄物地層処分の技術的信頼性-地層処分研究開発第2次とりまとめ-分冊1わが国の地質環境.
http://www.jaea.go.jp/04/tisou/houkokusyo/dai2jitoimatome.html pdf版,p. 88.
小野田耕治,楠山豊治,吉川恵也(1978):伊豆大島近海地震による被害(1)鉄道トンネルの例.トンネルと地下, 9, pp. 375-380.