高温ガス炉って何?

優れた安全性でリスクを回避

実際の原子炉で実証した“止まる・冷える力”

高温ガス炉は電源が喪失する事故が起きても、自然の法則だけで出力が低下し、静定するようになっています。そのことを理論だけでなく、実際の原子炉を用いた試験によって証明しました。その安全性から需要地付近の建設が期待できます。

  • 従来の原子炉との違い

    従来型の原子炉は、水を循環させて熱を取り出しています。そのため、地震や津波などで電源が失われ、ポンプが止まってしまうと、炉を冷やすことができなくなります。

    すると、数十分という短時間で急激に温度が上昇し、燃料が溶け出す可能性があります。さらに、溶けた燃料が水に触れると化学反応で水素が発生し、爆発を引き起こすリスクがあります。

    高温ガス炉は、電源を失って冷却設備が機能を停止した場合でも、自然に冷え、放射性物質が閉じ込められる安全な状態が保たれます。ただし、安全な設計がゆえに大型化には向かないという特徴もあります。

    ※現在は、新規制基準に対応した対策が施されています。

    高温ガス炉の安全性を説明する図。耐熱性の高いセラミックスで覆われた被覆燃料粒子により炉心溶融を防ぐ仕組みと、熱容量に優れた黒鉛炉心が外部へ放熱することで、万が一の際も温度の急上昇を抑える仕組みを解説しています。
  • 実証された安全性

    「理論上は安全でも、実際はどうなの?」という疑問に応えるため、日本原子力研究開発機構(JAEA)は安全性実証試験という過酷な試験を行いました。

    原子炉の運転中に、意図的に冷却機能を全停止させ、原子炉を止める制御棒も入れないという、最悪の事態を想定した実験を行いました。

    その結果、原子炉は自然に温度が下がり、安全な状態で静定しました。この試験により、電源喪失や冷却停止といった事故が起きても、人の操作や機械の助けなしに静定することが実証されています。

    安全性実証実験の詳細
  • HTTRの新規制基準対応

    茨城県大洗町にあるJAEAの試験研究炉「HTTR」では、震災後の新しい規制基準への対応審査が行われました。

    通常であれば基準が厳しくなればなるほど、大規模な補強工事や追加の安全設備が必要になりますが、震災前より実証していた、炉心溶融が起きない、自然に冷えるという固有の安全性が評価され、大規模な追加工事なしで運転を再開できました。

    HTTR(高温工学試験研究炉)とは
  • 高い安全性で需要地近接立地が可能

    高い安全性から、需要地に近接した立地が期待できるため、高温ガス炉はコンビナートなどの熱エネルギーを必要とする工場の近くに設置することも検討されています。

    遠くの発電所から電気を送るだけでなく、身近な場所で安全に水素を作る。 高温ガス炉は、そんな安心できるエネルギーの未来を切り拓こうとしています。

    解説イギリスの高温ガス炉実証炉建設候補地の例

    高温ガス炉の開発が進むイギリスでは、産業界の脱炭素に向け、高温ガス炉の熱及び水素を活用するため、2021年12月に高温ガス炉開発を決定しました。建設候補地のひとつとして挙げられるのが、イングランド北東部ハートルプール。周辺の化学工業等の工業地帯に、高温ガス炉を用いて蒸気、水素を供給することを目指しています。

    イギリス・ハートルプールの建設候補地マップ。実証炉から周辺の化学工業地域、製鉄所、港などの産業施設へ熱や水素を供給する位置関係を示しています。
    • 英国高温ガス炉実証炉 建設候補地(EDFエナジー社提案)EDF=Energyパンフレットより