日仏原子力研究開発協力ワークショップを開催(2018.02.15)

当機構パリ事務所は、2月15日、フランスの関係機関との協力を更に深化させるとともに、パリにおける原子力コミュニティとの人的ネットワークの拡大を図ることを目的として「日仏原子力研究開発協力ワークショップ」を開催しました。

原子力・代替エネルギー庁(CEA)、放射線防護原子力安全研究所(IRSN)、原子力関係企業等からのフランス側参加者、当機構、在仏日本大使館、在仏の原子力関連企業等からの日本側参加者に加え、パリに本部を置く経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)からも参加が得られ、計59名が参加しました。

冒頭挨拶として、当機構児玉理事長から、日仏両国は原子力先進国として長い協力の歴史を共有していること、日仏が直面する共通の課題に対する広範な取組みの一環としてこのワークショップを位置づけていること、本ワークショップでは、パートナー機関との相談の上、今日的な課題である廃止措置と安全研究という2つのテーマを取り上げることにしたこと、両分野における協力関係の強化が期待されることなどが述べられました。CEAのヴェルベルドゥ長官からは、当機構がパリでワークショップを開催したことへの謝意、廃止措置と原子力安全研究は日仏両国にとって重要な課題であること、特に、廃止措置については、双方でフェニックスやもんじゅなど同様の廃止措置対象施設を有しており、さらなる協力の深化が期待されることなどが述べられました。IRSNのピネル国際部長からは、東京電力福島第一原子力発電所事故後の中期・長期の安全研究課題(安全裕度評価技術、過酷事故事象進展モデル化技術など)が示されるとともに、これらの課題解決への日仏協力の拡大の重要性などが述べられました。経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)のマグウッド事務局長からは、第4世代原子炉研究開発などのR&Dにおける多国間協力の重要性が示されるとともに、廃止措置や安全研究分野における日仏のさらなるNEAへの貢献を期待することなどが述べられました。在仏日本大使館の堀内公使からは、廃止措置と安全研究分野における日仏両国の協力の重要性が述べられました。

基調講演として、CEAのピヴェ原子力局次長から、CEAの組織、ミッション、当機構との研究協力の現状、フランスにおける原子力産業支援のための技術開発(第3世代原子炉や燃料サイクルなどの技術)、ASTRID計画の概要、試験研究施設(ジュールホロビッツ試験研究炉、過酷事故試験装置PLINUS-2など)、日仏研究協力の重要性などが述べられました。当機構の渡辺理事からは、当機構のミッション、組織、最近の各分野の動向、研究開発予算、今後の研究開発の方向性、仏の関係機関との協力の現状などを述べた上で、我が国の原子力利用を取り巻く状況の中で直面する多くの課題を解決するためには国際原子力コミュニティとの絆を強化し、とりわけフランスとの協力を拡大、深化していきたいとの考えが表明されました。

その後、廃止措置及び安全研究の2つのテーマで技術セッションが行われました。まず、廃止措置セッションにおいては、当機構の目黒バックエンド研究開発部門廃止措置技術開発室長から、当機構における廃止措置の現状として、施設中長期計画、ふげん、もんじゅ、東海再処理施設等の廃止措置の状況、廃止措置に関連する技術開発の状況などが紹介されました。CEA除染・解体局のピケティ次長からは、CEAの廃止措置の現状として、各研究サイトにおけるこれまでの廃止措置の取組み、施設の解体のための研究開発(施設の汚染評価、高線量下での解体装置、ヴァーチャルリアリティシステム等)が紹介されました。また、CEAの解体プロジェクトのリーダーであるジョルジュ氏からは、当機構とCEAの本分野におけるこれまでの協力のレビューが行われるとともに、今後の2機関間の更なる協力の可能性やEUの枠組みによるマルチの協力として検討されているSHAREイニシアティブについて言及されました。

その後の質疑応答においては、日本において、極めて高いレベルで要求されるクリアランスレベルを技術的に如何に達成し得るかなどの技術的議論や、各国共通のニーズが明確であるにもかかわらず、組織面や資金面での協力が実施されていないことなどの政策・社会的な議論もなされました。また、各国の有する経験と課題をシェアすることの重要性も認識されました。一部の出席者から、廃止措置については、解体物を再利用しない場合、解体処理に係る新規のR&D要素は少なく、個々の特徴を考慮した解体プロセスのマネジメントが焦点であることから、必ずしも研究開発機関の関与は必須ではないため、より効率的な廃止措置の実施のためには、専門の第3機関・法人などを設立し、専門集団として養成して行くことが現実的ではないかとの見解が示されました。本技術セッションを通じて、廃止措置のプロジェクト管理及び施設解体時に発生する廃棄物の管理等の重要性が共有されるとともに、今後の研究開発協力の進め方等に関して2機関の情報交換会議等で継続して検討していくことが確認されました。

2つ目の安全研究セッションでは、当機構の与能本安全研究センター副センター長から、東京電力福島第一原子力発電所事故後に安全研究センターに新たに期待されることになった原子力規制委員会(NRA)の技術支援機関(TSO)としての役割、安全研究センターの各グループが実施している研究開発及び国際協力の概要などについて紹介されました。IRSNのルイエ部長からは、IRSNの安全研究に関する活動概要として、ミッション、戦略、サクレーやカダラッシュ研究拠点における研究施設、東京電力福島第一原子力発電所事故後に開始された主要なプロジェクト、国際協力などについて紹介されました。また、当機構からIRSNに長期派遣されている郡司研究員からは、当機構とIRSNとの協力の良好事例として、福島の燃料デブリの分析に資するための定常臨界実験装置STACYを利用した臨界安全に関する協力(PRINCESS Project)の現状及び今後の予定などが報告されました。

その後の質疑応答においては、従来から行われてきた燃料安全等に係る研究協力の重要性、今後行われる予定の火災安全等に係る新たな研究協力に係る認識が共有されるとともに、研究員の長期派遣等により得られる人的ネットワーク構築の重要性が認識されました。また、昨年11月にIRSN-NRA-JAEAの三者により開催された安全研究のワークショップは若い研究者の育成、逆に若い世代からインプットを得る上でも有意義であるという認識が共有されました。

最後に、当機構の渡辺理事から閉会挨拶として、本ワークショップへの参加及びパートナー機関(CEAとIRSN)の協力への謝意が示されるとともに、両技術セッションでの議論の総括が行われました。また、日仏のさらなる協力の拡大や深化を目的としたこのような活動を今後も継続していくことが表明されました。