2009年1月29日、米国エネルギー省(DOE)チュー長官は、ユッカマウンテン(YM)処分場計画に替わる米国の使用済燃料と高レベル放射性廃棄物の管理につき、安全かつ長期的な解決策を検討し政府に提言するため、「米国の原子力の将来に関する有識者委員会(Blue Ribbon Commission for America’s NuclearFuture)」の設置と委員名を発表した(委員名と略歴は別添参照)。共同議長2名を含む15名の委員は、超党派かつ種々の専門知識や経験を有する者からバランスよく選出されているが、一方で、原子力推進派により構成されている、あるいは再処理に関しては賛否が分かれるとも評されている。同委員会は、2011年7月末までに中間報告を行い、パブリックコメントを経て、2012年1月末までにDOE長官に最終報告を行うことになっている。
1月29 日付のオバマ大統領からチュー長官宛の覚書は、委員会のミッションが単にYMの代替策を含む核燃料サイクルのバックエンド政策のレビューのみならず、「資源回収/利用、原子力活動から発生する核物質の量を核不拡散の観点から最小化する先進核燃料サイクル技術の評価」も含むことを述べており、広範囲が評価の対象となっている。つまり、使用済燃料と放射性廃棄物管理に係る深地層処分、長期貯蔵、中間貯蔵、再処理及びこれらの組み合わせのみならず、これらに加えて、再処理のアップストリームにある原子炉や燃料製造など、濃縮を除く核燃料サイクルのフロントエンド部分も評価の対象となる可能性がある。同覚書はまた、委員会によるレビューは技術面及び政策面での代替方策を含む広範囲の観点を考慮すべきと述べている。つまり、元議員、政府要職者、アカデミア、産業界、環境問題専門家等の種々の経験と専門分野を持ち、また再処理等に関し異なる見解を持つ委員から構成される同委員会には、原子力に係る科学技術の観点はもとより、国内外の政治、外交、安全保障、エネルギー政策、核不拡散、地球環境問題、原子力安全、経済性等の多岐に亘る観点からのレビューが期待されている。このうち、政治的観点について言えば、最終報告がなされる2012年は大統領選挙の年であり、同委員会の報告書が選挙戦の主要項目となり、さらに、オバマ大統領が大統領選に出馬し再選されれば、第二次オバマ政権の原子力政策となる可能性もある。
現段階では、この有識者委員会がどのような結論を出すのか全く未知数である。しかし確実に言えることは、米国の原子力/核不拡散政策が、常に世界の原子力政策に多大な影響を及ぼしてきたこと、また将来的にも影響を及ぼすであろうことである。日本も例外ではなく、74年のインド核実験が起因となったカーター大統領の強硬な核不拡散政策により、東海再処理の運転開始が危ぶまれ、日米再処理交渉を経て2年間の条件付の運転を行い、後に核不拡散上の配慮から、工程をプルトニウムの単体抽出法からウランとの混合転換法に変えて、本格運転に至った経緯がある。最近の報道によれば、我が国において原子力政策大綱の検討の議論が始まる模様であるので、同委員会の動向に傾注しつつ、並行して技術や政治等の観点から、国際協力や情報交換等の種々の手段を通じ、日本の原子力政策の利益に適う時宜を得た適確な行動を採っていく必要があると考える。
2009年1月29日、米国エネルギー省(DOE)チュー長官は、ユッカマウンテン(YM)処分場計画に替わる米国の使用済燃料と高レベル放射性廃棄物の管理につき、安全かつ長期的な解決策を検討し政府に提言するため、「米国の原子力の将来に関する有識者委員会(Blue Ribbon Commission for America’s NuclearFuture)」の設置と委員名を発表した(委員名と略歴は別添参照)。共同議長2名を含む15名の委員は、超党派かつ種々の専門知識や経験を有する者からバランスよく選出されているが、一方で、原子力推進派により構成されている、あるいは再処理に関しては賛否が分かれるとも評されている。同委員会は、2011年7月末までに中間報告を行い、パブリックコメントを経て、2012年1月末までにDOE長官に最終報告を行うことになっている。
1月29 日付のオバマ大統領からチュー長官宛の覚書は、委員会のミッションが単にYMの代替策を含む核燃料サイクルのバックエンド政策のレビューのみならず、「資源回収/利用、原子力活動から発生する核物質の量を核不拡散の観点から最小化する先進核燃料サイクル技術の評価」も含むことを述べており、広範囲が評価の対象となっている。つまり、使用済燃料と放射性廃棄物管理に係る深地層処分、長期貯蔵、中間貯蔵、再処理及びこれらの組み合わせのみならず、これらに加えて、再処理のアップストリームにある原子炉や燃料製造など、濃縮を除く核燃料サイクルのフロントエンド部分も評価の対象となる可能性がある。同覚書はまた、委員会によるレビューは技術面及び政策面での代替方策を含む広範囲の観点を考慮すべきと述べている。つまり、元議員、政府要職者、アカデミア、産業界、環境問題専門家等の種々の経験と専門分野を持ち、また再処理等に関し異なる見解を持つ委員から構成される同委員会には、原子力に係る科学技術の観点はもとより、国内外の政治、外交、安全保障、エネルギー政策、核不拡散、地球環境問題、原子力安全、経済性等の多岐に亘る観点からのレビューが期待されている。このうち、政治的観点について言えば、最終報告がなされる2012年は大統領選挙の年であり、同委員会の報告書が選挙戦の主要項目となり、さらに、オバマ大統領が大統領選に出馬し再選されれば、第二次オバマ政権の原子力政策となる可能性もある。
現段階では、この有識者委員会がどのような結論を出すのか全く未知数である。しかし確実に言えることは、米国の原子力/核不拡散政策が、常に世界の原子力政策に多大な影響を及ぼしてきたこと、また将来的にも影響を及ぼすであろうことである。日本も例外ではなく、74年のインド核実験が起因となったカーター大統領の強硬な核不拡散政策により、東海再処理の運転開始が危ぶまれ、日米再処理交渉を経て2年間の条件付の運転を行い、後に核不拡散上の配慮から、工程をプルトニウムの単体抽出法からウランとの混合転換法に変えて、本格運転に至った経緯がある。最近の報道によれば、我が国において原子力政策大綱の検討の議論が始まる模様であるので、同委員会の動向に傾注しつつ、並行して技術や政治等の観点から、国際協力や情報交換等の種々の手段を通じ、日本の原子力政策の利益に適う時宜を得た適確な行動を採っていく必要があると考える。
(参考文献)
【解説:政策調査室 田崎】