核不拡散ニュース No.0128 2009.09.02
<アフリカ非核兵器地帯条約(ペリンダバ条約)の発効>
【要旨】
2009年7月15日にアフリカ非核兵器地帯条約(ペリンダバ条約)が28カ国目の締約対象国であるブルンジの批准書寄託により発効した。非核兵器地帯条約の発効は、今年に入ってから3月21日の中央アジア非核兵器地帯条約に続く本年2件目であり、トータルで5件目の非核兵器地帯条約の発効となった。
本条約は、これまでに核兵器を開発、保有した上で、これを放棄した経験を有する国(南アフリカ:1998年3月13日に批准)を締約対象国として構想された初めての条約であり、条約発効以前に保有した核兵器及び核兵器の製造に使用された施設を破壊及び解体するための手順及びその検証に関する条項(第6条)を有していることが、他の非核兵器地帯構想には無い最大の特徴である。
今年に入ってから2件目の非核兵器条約となる本条約の発効は、来年5月に開催が予定されているNPT運用検討会議に向けた非核兵器国側からの強いメッセージであり、同会議に臨む核兵器国側も核軍縮に向けて、より積極的な対応が求められることになると思われる。
【報告】
(1)ベリンダバ条約の発効
報道によれば、2009年7月15日にアフリカ非核兵器地帯条約(ペリンダバ条約)が本条約の28番目の締約対象国となるブルンジの批准書寄託により発効した。
本条約は、1960年のフランスによるサハラ砂漠での核実験開始をきっかけとして、国連総会が1961年11月24日にアフリカにおける核実験及び核兵器の貯蔵、運搬の自制を求める決議(国連総会決議1652)を採択したことに起源を発する。
本決議の後、1964年にアフリカ統一機構(OAU)首脳会合でアフリカを非核地帯とするカイロ宣言が採択されたが、南アフリカの核開発疑惑の発生により、その後の進展が滞っていた。
その後、1991年に南アフリカが自国で開発した核兵器を放棄した上で、NPTに加盟したことから条約化の実現に弾みがつき、1995年6月にOAU首脳会議において、アフリカ非核兵器地帯条約の最終案文が採択され、1996年4月12日にカイロにて署名の為に開放された。本条約の発効のために、対象国(アフリカ地域の54ヶ国)の内28ヶ国※の批准が要件とされていたが、今般署名開放後約13年を経過した2009年になってその効力が発生したもの。なお、署名済の未批准国は24ヶ国である。
また、本条約は、かつての南アフリカにおける核弾頭製造施設が存在した原子力研究所がある町(今後、本条約の実施機関となるアフリカ原子力委員会が設置されることになっている)の名前をとって別名「ペリンダバ条約」と称されている。
※批准国はアルジェリア、ベニン、ボツワナ、ブルキナファソ、ブルンジ、象牙海岸共和国、赤道ギニア、エチオピア、ガボン、ガンビア、ギニア、ケニア、レソト、リビア、マダガスカル、マラウィ、マリ、モーリタニア、モーリシャス、モザンビーク、ナイジェリア、ルワンダ、セネガル、南アフリカ、サウジランド、トーゴ、タンザニア連合共和国、ジンバブエである。また、署名済未批准国はアンゴラ、カメルーン、カーポ・ベルデ、中央アフリカ共和国、チャド、コモロ、コンゴ共和国、コンゴ民主共和国、ジプチ、エジプト、エリトリア、ガーナ、ギニア・ビサオ、リベリア、モロッコ、ナンビア、ニジェール、サハラアラブ共和国(我が国は未承認)、サントメ・プリンシペ、セイシェル、シェラレオネ、ソマリア、スーダン、チュニジア、ウガンダ、ザンビアである。
非核兵器地帯条約の発効は、本年3月21日の中央アジア非核兵器地帯条約に続く2件目であり、トータルで5件目の非核兵器地帯条約の発効となった。
(2)条約の構成
条約は、本文、附属書及び3つの付属議定書から構成されており、主要な条項は以下のとおりである。
※なお、付属議定書IおよびⅡは米・露が署名のみ(英・仏・中は批准済み)、付属議定書Ⅲはスペインが未署名(仏は批准済み)となっていることから、この議定書は未だ発効していないと考えられる。
(3)本条約の特徴
本条約と既存の非核兵器地帯条約を比較した場合、条約の内容については概ね他の非核兵器地帯条約と重なる部分が多いが、以下のように特徴のある条項も数点有している。
(4)本条約の評価
非核兵器地帯条約の歴史を見ると、最初のトラテロルコ条約(ラテンアメリカ及びカリブ諸国核兵器禁止条約)が1969年に発効、ラロトンガ条約(南太平洋非核条約)が1986年に発効、バンコク条約(東南アジア非核兵器地帯条約)が1997年発効であり、これまでの全世界的な拡大のペースは決して速くない。
しかしながら、今年に入ってから2件の非核兵器地帯条約が発効したことは、本年5月に開催されたNPT運用検討会議第3回準備会合に於いて非核兵器国側から示された核兵器国の核軍縮に向けた期待とともに、非核兵器国から核兵器国に対する強いメッセージである。このため、同会議に臨む核兵器国もNPT上の責務である核軍縮に向け、より積極的な対応が求められることになると思われる。
【解説:政策調査室 和泉】
(参考資料)