核不拡散ニュース No.0090 2008.05.23
<英国・UAE間の原子力平和利用協力のためのMOU(了解覚書)の署名について>
<米国・サウジアラビア間の原子力協力に関するMOU(了解覚書)の署名について>
2008年5月16日、米国とサウジアラビアは原子力協力に関するMOU(了解覚書)に署名した。最近、米国は、バーレーン(2008年3月24日)、UAE(2008年4月21日)との間で立て続けに原子力協力に関するMOUを締結したが、サウジアラビアとの間のMOUはこれに続く、中東諸国との原子力協力強化の動きと捉えることができる。米国国務省のプレスリリースによれば、米国は、医療、産業、発電に係る原子力平和利用に関して、サウジアラビアを支援し、IAEAの指導や基準に則って、サウジアラビアが人材育成、インフラ整備を実施することを援助するとしている。また、サウジアラビアは、バーレーンやUAEと同様、核燃料の供給を国際市場に依存し、自国における機微原子力技術の開発・保有を追求しない旨を述べたとし、このことは、イランの行動とは全く対照的であるとしている。
同プレスリリースによれば、サウジアラビアは、「核テロリズムに対抗するためのグローバル・イニシアティブ」の71番目の参加国になるとともに、拡散に対する安全保障構想(PSI)を是認する外交文書を米国に提出したとされている。
米国による中東諸国との原子力協力枠組み構築の動きの背景として、イランによる核開発があるものと見られ、自前の濃縮、再処理を放棄する国に対しては、積極的に原子力協力を行う政策を明確に示すことにより、イランとの違いを際立たせるとともに、米国に友好的な中東諸国を米国主導で開始された核不拡散イニシアティブに組み込もうとする動きとして注目される。
(情報ソース)
【報告:政策調査室 山村】
<GNEP第2回運営グループ会合の開催について>
2008年5月14-15日、ヨルダンにて、28か国、3国際機関の参加により、GNEPの第2回運営グループ会合が開催された。運営グループ会合では、既存の2つのワーキンググループ(基盤整備ワーキンググループ、信頼性が高い核燃料サービスワーキンググループ)の議論の進捗状況が報告されるとともに、新たに、電力系統に適合した発電炉の開発に関するワーキンググループを設置することが議論された。今後、運営グループの上位に位置する閣僚級の理事会に提案されることになる。
2008年5月15日、英国とアラブ首長国連邦(UAE)は、原子力平和利用協力に関するMOU(了解覚書)に署名した。報道によれば、本MOUは、UAEによる民生用の原子力インフラの整備に関し、両国の協力の枠組みを構築するものであるとともに、発電、核医療、農業を含む、様々な原子力平和利用に関し、訓練やその他の知識共有に関する協力を含むものとされている。
英国側を代表してMOUの署名を行った英国貿易投資大臣のジョーンズ卿は、UAEの原子力平和利用に関する責任あるアプローチや、UAE国内に濃縮、再処理能力を持たないとする政策等、セキュリティ、信頼性、透明性を最大限高めるというUAEのコミットメントを歓迎するとともに、UAEが2008年4月20日に発表した「原子力平和利用の評価と将来の開発可能性に関するUAEの政策1」と題する白書にある核不拡散分野のコミットメントに裏打ちされた軽水炉の建設計画については、原子力平和利用計画を有する、あるいは検討中の国に対して、素晴らしいモデルとして評価している。UAEは、このところ原子力発電の導入に向けた検討を進めるとともに、2008年1月にフランスとの間で原子力協力協定を、2008年4月には米国との間で原子力協力に関するMOUを締結するなど、原子力協力の枠組みの構築に向けた動きを活発化させている。
<核不拡散ニュースNo.0087>参照
(情報ソース)
【報告:政策調査室 山村】