核不拡散ニュース No.0068 2007.09.14
<豪露が原子力平和利用協力協定に署名>
2007年9月7日、オーストラリアのダウナー外相とロシア原子力庁(Rosatom)のキリエンコ長官は原子力協力協定に署名した。
協定は、APEC首脳会議に出席する目的で、ロシアのプーチン大統領がオーストラリアを訪問した機会に、豪露両首脳の前で署名されたもので、両国が、協定発効に必要な国内手続きが完了したことを通知した日をもって発効するものとされている。また、両国首脳は同日、原子力協力協定が署名されたことを歓迎する主旨を含む共同声明を発表した。共同声明では、両国が、核不拡散を推進しつつ、原子力エネルギーの利用の拡大を支持する主旨が述べられるとともに、オーストラリアが関心を示しているGIF(第四世代原子力システム国際フォーラム)への加盟に対するロシアの支持が表明されている。
(情報ソース)
<米豪、原子力協力拡大で合意>
9月5日、ハワード豪首相はアジア太平洋経済協力会議(APEC)に出席のためシドニー訪問中のブッシュ米大統領と首脳会談を行い、「気候変動とエネルギーに関する共同声明」を発出した。共同声明の中で、両国は、エネルギー供給、気候変動への対応の両面から原子力の重要性を認識するとともに、二国間の民生原子力協力の強化、国際原子力エネルギー・パートナーシップ(GNEP)への支持に合意した。また、米国は、9月後半にウィーンで開催されるGNEP閣僚級会合へのオーストラリアの参加を歓迎する旨述べている。
加えて、同声明において原子力の研究開発、規制問題、技術訓練等の二国間の民生原子力協力のための共同行動計画が確定したことが示され、1981年に両国が締結した原子力平和利用に関する協定とあわせて両国間の民生原子力協力が拡大されることとなった。
このほか声明では、第4世代原子力システムの研究開発に関する国際フォーラム(GIF)へのオーストラリアの参加に対する米国の支持及びFuture Gen注1へのオーストラリアの参加への米国の歓迎表明がなされている。
なお、GNEPに関してオーストラリア政府が公表しているFACTSHEETによれば、オーストラリア起源のウランをGNEPの消費国(usercountries)が使用し、発生した使用済燃料及び核廃棄物はオーストラリアに返還することはなく、使用済燃料はリサイクル及びエネルギー資源として活用するために必要な技術を保有する国に移転されることになるという。
注1)2003年に米国エネルギー省が提案したプロジェクト。石炭から水素及び二酸化炭素を分離し、二酸化炭素を地下貯蔵する計画。2007年3月時点で米国、日本、インド、韓国、中国が参加。
(情報ソース)
【報告:政策調査室 大塚】
<日豪首脳、原子力協力を含む協力拡大で合意>
9月8日〜9日のアジア太平洋経済協力(APEC)シドニー首脳会談の機会に、安倍首相とハワード豪首相は、二国間首脳会談を行い、気候変動とエネルギー安全保障に関する両国の協力を拡大することを謳った「気候変動とエネルギー安全保障に関する更なる協力のための日本とオーストラリアの共同声明(仮訳)」を発出した。声明の中で、気候変動への対応とエネルギー安全保障の確保のためには、核不拡散、原子力の安全及び核セキュリティーを確保した形での原子力の平和利用における両国の互恵的な協力強化が必要であるとの認識が示された。また、アジアにおける民生用原子力協力を通じた原子力安全文化の発展における両国の貢献の必要性に対する認識が示され、オーストラリアによる第4世代原子力システムに関する国際フォーラムへの参加に対する日本の支持も表明された。さらに、原子力分野における日豪の互恵的協力強化の具体的な行動として、次回のエネルギーと鉱物に関する日豪高級事務レベル協議(HLG)の会合において、ウランの貿易、輸送及び投資の問題、並びに原子力エネルギー分野における技術及び研究協力に焦点を当てた協議を行うことが発表された。
日本はオーストラリア産ウランの最大消費国の一つであるが、原子力の平和利用における関係強化が日豪共同声明の中に盛り込まれたことで両国の原子力関連ビジネスのさらなる発展が期待される。また、アジアにおいて、原子力発電の導入に向けた動きが活発化する中、日豪両首脳が原子力の安全文化の発展及び核不拡散に対する協力強化の必要性についての認識で一致したことは、アジアにおける核不拡散体制強化において意義深いことである。
オーストラリア、ロシア両国は、旧ソ連時代の1990年に締結された原子力協力協定(1990年2月15日署名、1990年12月24日発効、以下「現協定」)の下で、オーストラリアからのウランの輸出等の協力を実施してきた。ただ、現協定は、オーストラリア産のウランをロシアの原子炉で燃料として使用することを想定していない(ロシア国内で転換、濃縮、燃料加工された核物質を第三国の原子炉で使用することが想定されていた。)など、協力の範囲が限定されていたため、新たな協定(以下、「新協定」)の締結により、両国の原子力政策の現状に合わせて、協力の枠組みを設定し直すことを意図したものである。すなわち、大規模な原子炉建設計画を有するロシアは、今後、オーストラリアからウランを輸入し、自国の原子炉の燃料としての利用を意図しており、また、オーストラリアについては、2007年4月28日に、ウラン資源の開発や原子力発電に関する新戦略を発表したことでも分かるように、積極的なウラン輸出政策を進めており、本協定締結は、中国との原子力協力協定の発効(2007年2月)、インドに対するウラン輸出の決定(2007年8月)といった動きと同じ文脈で捉えることができる。(協定の主な内容については添付を参照。)
【解説:政策調査室 山村】