核不拡散ニュース No.0043 2007.02.13
<北朝鮮動向:六者会合で核放棄に向けた初期段階の措置に関する成果文書を採択>
2月8日から北京で開催された六者会合は、北朝鮮の非核化に向けた2005年9月の共同声明実施のための初期段階の措置を定めた成果文書を採択した。成果文書の概要は以下の通り。
【成果文書概要】
- 「行動対行動」の原則に従い、朝鮮半島の非核化という共通の目標実現に向けて段階的に以下の措置を取ることで一致した。
- 初期段階の措置として、以下のことを60日以内に実施する。
- 北朝鮮は再処理施設を含む核施設を、最終的に放棄することを目的として、停止し(shut down)封印(seal)する。
- 北朝鮮は、IAEAと北朝鮮との合意に準じた監視と検証を行うためのIAEA要員の復帰を求める。
- (抽出プルトニウムを含む)すべての核計画に含まれる項目について他の関係5カ国と協議する。
- 他の関係国(米中韓露で、拉致問題での状況から日本は参加せず)は重油5万トンに相当する緊急エネルギー支援を開始する。
- 米朝は関係改善に向けた二国間協議を開始し、米国は北朝鮮に対するテロ支援国家として指定解除および対敵通商法の適用終了のための作業を開始する。
- 日朝は過去の清算と懸案事項の解決を基本とする国交正常化に向けた二国間協議を開始する。
- 上記の初期段階措置実施のため、(1)朝鮮半島の非核化、(2)米朝国交正常化、(3)日朝国交正常化、(4)経済及びエネルギー協力、(5)北東アジアの平和及び安全のメカニズムの5つの作業部会を設置する。原則として各作業部会の進捗は他の作業部会の進捗からは独立している。各部会の諸計画は全体として調整された形で実施される。六者は、今後30日以内に上記5つの作業部会を開催することで合意した。
- 北朝鮮による全ての核計画の完全な申告と既存の核施設の無能力化を含む次の段階において、北朝鮮に対して重油100万トン(初期段階の措置で提供される5万トンを含む。)に相当する支援が提供される。その具体的内容は、上記作業部会によって決定される。
- 初期段階の措置実施後、閣僚会議を開催する。
- 直接的な当事者は、朝鮮半島の恒久的な平和体制について協議する。
- 次回六者会合は2007年3月19日に開催し、各作業部会からの報告を聴取する。
上記成果文書は、履行していく上で争点となる要素を多く含んでいる。その例としては、停止・封印がどのような形で行われるのか、IAEAのそこでの役割は何か、放棄対象の核関連活動の定義は何か、嫌疑のかかるウラン濃縮活動および現存する核兵器の扱いはどうなるか、「核計画についての完全な申告」ならびに「核施設の無能力化」の定義、また初期段階の措置としての緊急支援ならびに次の段階における重油100万トンに相当する支援はどのタイミングでなされるのか、つまり核施設の停止・封印の確保、「核計画についての完全な申告」ならびに「核施設の無能力化」が保証されることを条件にするとしたら、どの状況・段階でそれを確認するのか、など、問題は山積みである。六者会合米国首席代表ヒル国務次官補が喩えたように、北朝鮮の核問題はやっと「終わりの始まりが始まったばかり」で、まだまだ予断を許さない。
【報告:政策調査室 濱田】