核不拡散ニュース No.0023 2006.07.28
<イランについて>
ワシントン・ポスト紙およびフランス通信によると、国連安全保障理事会は7月13日、6月6日にイランに提案されたイギリス、フランス、ドイツ、ロシア、中国、および米国の六カ国(英仏独米露中)による包括的見返り案の内容を明らかにした。この見返り案には、イランの核活動が平和的目的だけのものであるとのIAEAによる保証を条件に、軽水炉の建設支援、ロシアによる軽水炉燃料の商業ベースでの供給保証、WTO加盟への支援、民間航空事業および通信事業における規制撤廃の可能性などが含まれている。20日に米英仏が提出した案を、25日に六カ国が修正。六カ国は
- イランの濃縮・再処理活動停止の義務付け、
- イランが応じない場合の経済制裁、
- イランから回答期限を8月31日とする、
とした修正案に合意した。
(情報ソース)
- ワシントン・ポスト 7月13日、21日、フランス通信7月13日、産経新聞 7月22日、NIKKEI NET 7月25日
イラン政権に対して強い不信感を持つ米国は、当初から、イラン問題への取組みにあたって安保理で取り上げ、制裁決議の採択を目指していた発動を重視していた。しかし3月の安保理決議では露中に阻まれ、議長声明の発出に留まった。その後、5月、米国は安保理決議採択を目指した後、31日に、イランの濃縮活動停止次第、英仏独と共に交渉のテーブルに着く用意があるとの態度を表明。他の関係五カ国がイランに対する制裁に理解を示すと約束したことで、譲歩し、包括的見返り案に共同提出国として名を連ねた。という経緯を持つ。
一方、イラン側には、濃縮活動継続の意思が強く、またも米国の姿勢に対するのコミットメントに対する不信感が根強く存在する。イランは、包括的見返り案を「前向きな措置」と一定の評価を示しながらも、内容には多くの不明瞭な点があるとして、その明確化を求めるという対応を取り、8月22日までに提案に対する考えを示すであろうと述べている明確な回答は先延ばしにしてきたという経緯を持つ。両国の相互不信は強く、包括案をめぐっての双方の解釈立場にも依然として大きな開きがある。
7月20日の案は、イランにウラン濃縮活動と再処理活動の停止を義務付け、イランが一定期間応じない場合は制裁を発動するとした決議案を提示していたが、それに対しロシアは、制裁は時期尚早とし、代わりに、制裁に関する表現を緩め、またイランのウラン濃縮停止の決断を8月31日まで待つ姿勢を示した案を提示し、イランが主張する8月22日過ぎの回答に理解を示していた。(記:7/25)
【報告:政策調査室 濱田】