核不拡散ニュース No.0020 2006.07.07
<北朝鮮プルトニウム>
米国のシンクタンク「科学・国際安全保障研究所」(ISIS)は6月26日、北朝鮮が使用済み燃料から抽出したプルトニウムは20〜53キログラムに上るとの推計を発表。核爆弾4個から13個分にあたる量で、プルトニウム製造が続けば2008年夏までに核爆弾8〜17個分になるとされる。
また、北朝鮮が建設再開を表明した5万キロワットの原子炉について大きな進展はみられないが、完成した場合にはプルトニウム生産能力は現在の10倍になると指摘。数年うちに北朝鮮が余剰分を輸出にまわすことも可能になると警告している。なお、「核兵器の小型化について、テポドンに積むほど軽量化されていないが、ノドンには搭載できるかもしれない」とISISはみている。
(情報ソース)
- 産経新聞 6月28日、朝日新聞 6月28日、読売新聞6月28日
<イラン>
シュタインマイヤー独外相は6月24日にベルリンでイランのモッタキ外相と包括案について会談した。イランは包括案に対して8月下旬の回答を表明したが、6ヵ国側は7月15日に開かれるサミット前の回答表明を求めており、ドイツはこの会談でイラン側に回答時期の明確化を求める。
また、イラン外務省のアセフィ報道官は6月25日の会見で、包括案について「迅速な回答で正確さを欠いてはいけないし、包括案の内容を真剣に検討するため時間が必要」と述べ、6ヵ国に対し理解を求めた。しかし、イランの最高指導者ハメネイ師は6月27日、核問題について「米国と話し合うことは我々の利益にならず、必要ない」と述べ、ウラン濃縮活動停止を条件に交渉を応じるとした米国の姿勢に反発した。一方で、包括案について「交渉の土台ができた。国際社会とは対話の用意がある」と強調した。
(情報ソース)
- 産経新聞 6月28日、朝日新聞 6月28日、読売新聞 6月28日、産経新聞 6月28日、日経新聞 6月26日、読売新聞 6月26日、毎日新聞 6月25、26日、朝日新聞 6月28日
6ヶ国の包括提案については、回答の時期を巡ってイランと6ヶ国側の駆け引きが続いている。6月6日EUのソラナ代表を通じての提案は、早期回答を求めており、遅くともG8サミットの始まる7月15日以前である。
イラン側は時間稼ぎをしながら、非同盟諸国(NAM, Non-Aligned Movement、116ヶ国)やイスラム諸国会議機構(OIC, Organization of the Islamic Conference、55ヶ国)がイランの原子力 平和利用の権利を認めるとの動きを利用し、いずれは回答後に行う6ヶ国との交渉に備えていると思われる。
北朝鮮の現在までの再処理により分離したプルトニウム保有量については、北朝鮮側が明らかにしないので推定するしかない。最も信頼出来る数値としては40kg程度と思われる。
核兵器に使うプルトニウム量については、これも諸説ある。IAEAはプルトニウム8kgをシグニフィカント量として定めている。核兵器の設計・製作能力によっても必要なプルトニウム量は変化するので、核兵器の個数の推定は更にばらつく。最近ではプルトニウム4kgという数値を使う例があり、この数値を使えば40kgのプルトニウムは核兵器10個に相当する。
なお5万KW電気出力炉については、実際に運転を始めることがあるにしてもかなり先と思われるが、プルトニウム生産能力は現在の5,000KW炉に比較して、理論的には10倍となる。
(注:シグニフィカント量:有意量
(IAEAの最新の保障措置用語集によれば;有意量‐1個の核爆発装置が製造される可能性を排除できない核物質のおおよその量。有意量では転換及び製造工程での避けることのできない損失が考慮されており、臨界質量と混同してはならない。有意量は、IAEA査察目標の量的要素を確定するのに用いられる)。
【報告:政策調査室 高橋】