核不拡散ニュース No.0019 2006.06.29
<北朝鮮ミサイル>
北朝鮮の長距離弾道ミサイル「テポドン2号」の発射準備を進めているとみられる問題で、6月17日、麻生外相とシーファー駐日米国大使の会談では「挑発的行為であり発射すれば断固たる措置をとる」との認識で一致。6月18日、米国のスノー長官は99年の米朝高官会議で北朝鮮がミサイル発射凍結を表明したことを強調し凍結継続を呼びかけた。また、小泉首相は6月19日「米国や韓国と連携し、発射しないよう働きかけている。発射した場合は、米国と協議して厳しい対応をとらなければならない」と語った。対応措置として、国連安全保障理事会への経済制裁提案や改正外為法や特定船舶入港禁止法発動などを念頭に置いている。デポドン2号の問題に関し6月19日、韓国の外交筋は「北朝鮮にとって当面の課題は米国の銀行に北朝鮮が口座を持つマカオの銀行との取引を禁じた金融制裁である」と述べた。
北朝鮮の韓成冽(ハン・ソンリョル)国連次席大使は6月20日に、米朝が1999年に合意したミサイル発射モラトリアム(一時停止)について、「米朝対話が進んでいるときだけに適用され、現時点で試験発射をしても違反にはならない」と韓国のメディアに答えた。また、「交渉を通じて問題を解決しようというのが我々の立場だ」と米国との直接交渉を求めた。
ハドリー米国大統領補佐官は同日、「北朝鮮は危機感をあおりたがる傾向がある。何か有利になると考えているようだ」と北朝鮮の手法を批判した。一方、中国の王大使は、「現地(北朝鮮)も安保理も行動を起こすべきではない」と、この問題を安保理で取り上げることに消極的な態度を示し、「あまり騒ぎすぎると北朝鮮に利することになってしまう」と冷めた見方を示した。だが、ミサイルが発射されれば、北朝鮮に融和的な韓国、中国も対応をとらざるを得なくなる。韓国の金大中前大統領の訪朝延期決定で、国際社会の懸念を北朝鮮に伝える南北パイプは閉ざされた。金大中(キムデジュン)前韓国大統領の側近で元国政状況室長張誠ミン(チャンソンミン)氏は「南北対話を行えばミサイル危機が失速し、米国を交渉に引きずり出せなくなる。北朝鮮は瀬戸際外交を強化するだろう」と分析している。
米国務省のエアリー副報道官は6月21日、「北朝鮮との直接対話というカードは存在しない。北朝鮮の核問題は地域全体の問題であり、話し合いは6者協議とその枠内で行うべき」と述べ、二国間協議の可能性を否定した。ボルトン国連大使も6月21日、ロシアのチェルキン国連大使と協議し「発射阻止が最優先課題だが、発射された場合に国連安全保障理事会が素早く行動できるよう準備している」と説明した。また、6月20日、米国防総省がミサイル防衛システムでの迎撃も検討していると米国メディアは報道し、アラスカに配備している地上発射型迎撃ミサイルを「試験モード」から「実践モード」に切り替えたという。なお、北朝鮮は平和的目的の人工衛星と主張している。
(情報ソース)
- 産経新聞 平成18年6月18日、日経新聞 6月18、20、日、読売新聞6月18、20、21日、毎日新聞 6月18、20、21日、朝日新聞 6月17、20日、東京新聞6月17日
<イラン包括案>
イランのアフマディネジャド大統領は6月21日、「包括案について8月22日までに回答する」と述べ6月20日にモッタキ外相は「最終回答を出す前に(6カ国)との交渉を開始する必要がある」と述べた。これに対して、米国のブッシュ大統領は6月21日、「提案を分析するには長すぎる」と拒否。西側諸国は「イランが時間稼ぎをし、ウラン濃縮活動の既成事実を図るつもりではないか」との懸念や、7月15日から開かれるサミットで核問題に関する突っ込んだ議論を阻止しようとするロシアの思惑があるのではないか、とみられている。
制裁措置は原案段階で含まれていたが包括案では削除され、欧州連合のソラナ共通外交・安全保障上級代表がラリジャニ最高安全保障委員会事務局長に包括案を提示した際に口頭で伝えた。制裁措置の削除理由については「国際社会の交渉戦略の変化を示すもの」、「6カ国はイランを潜在的に責任ある交渉相手として扱うと決断した」、「イランに拒絶する口実を与えないため」としている。
包括案に対してイランのアフマディネジャド大統領は6月16日、「対話再開の申し出でがあり、うれしく思う」と述べる一方、包括案の中で「イランの濃縮活動停止の要求が最大の検討課題」と述べた。また、「我々は基本的に核兵器開発を求めていない」と強調したが、核開発能力に関する質問に「我々には自国防衛能力がある」と答え、核の自力開発が可能であると含みを持たせた。
イランのアフマディネジャド大統領は中国の胡国家主席と6月16日に上海で会談し、イラン国内にある核はすべて平和利用を目的としたものだと強調。また、「イランは対話と協議を通じ核問題の平和的解決を希望する」と述べた。胡国家主席は「イランが包括案を真剣に検討し、積極的な回答をすることを希望する」と早期再開を促した。
(情報ソース)
- 産経新聞 平成18年6月20、22日、日経新聞 6月17、20、22日、読売新聞6月17、21、22日、毎日新聞 6月17日、朝日新聞 6月17、22日
非同盟諸国(NAM, Non-Alignment Movement,114ヶ国から構成)が、イランの原子力平和利用の権利を認めることに重点を置く事でややイランよりの動きを強めるなかで、回答まで長期間置くことは、イランに有利に働きそうである。6ヶ国側、特に米国は提案の趣旨にしたがって早期の回答を求めている。
北朝鮮のミサイルの発射に関しては、6月19日の週に入ってから国内外でますます注目を浴びている。ミサイルへの液体燃料の注入の有無を巡ってもニュースが錯綜している。
特に、米国側の警戒の動きが目立ち、イージス艦を2隻日本海に派遣する動きも見せ、迎撃も辞さずとの姿勢を暗示している。北朝鮮は、ミサイル試射騒動で、米国側からの直接対話などの譲歩を引きだそうとしているが、成果を得ていない。
今後も駆け引きが続くと予想される。なお、北朝鮮はミサイル開発は固有の権利と主張しており1998年のテポドンー1号打上げについても人工衛星打上げのためであったと主張している。一方、国際的には、日朝平壌宣言などで、ミイサル発射を凍結(モラトリアム)しており、発射することでそれらの違反となる。
【報告:政策調査室 高橋】