核不拡散ニュース No.0013 2006.04.17
<豪州、ウラン輸出で、中国と合意>
豪州訪問中の中国の温家宝首相は3日、ハワード豪首相と首都キャンベラで会談し、豪州から中国へのウラン輸出などで合意した。この合意は、両国の原子力協力協定の署名形式で行われ、その中で、豪州産ウランを軍事目的に転用しないこと等が規定されている。豪外務省によれば、その他にも保障措置査察義務の遵守、豪州による豪州産ウランの使途の追認措置などを定められているという。中国への輸出開始は2010年ごろになる見通し。
(情報ソース)
- 読売新聞、産経新聞、4月3日及び4日
<北朝鮮とイランの会社を経産省の大量破壊兵器規制リストに記載>
日本の貿易管理リストに、北朝鮮、イランの会社、研究所が追加された(北朝鮮20、イラン4)。高度技術の輸出が大量破壊兵器の開発に使用されるおそれがあるためである。リストは毎年更新され、大量破壊兵器やミサイルの開発を行う疑いがある国家等が含まれる。
今年作成されたリストの総合的な規制対象組織数は185で、イスラエル、シリア、中国、パキスタンとアフガニスタン、台湾などが含まれる。経済産業省によれば、リストのうち北朝鮮が58の会社及び研究所を有し最も多い。朝鮮中央銀行、公共図書館、道路建設会社とピョンヤン市建設部も含まれるという。
(情報ソース)
- Japan Times、4月5日
核不拡散のための重要な輸出規制として、経済産業省では原子力関連機器・技術の輸出の際に対象機器等のリスト規制を行っているほか、それ以外のものについても大量破壊兵器の開発などに用いられる懸念がある場合には、経済産業省の事前許可を得ることを義務付けるなどのキャッチオール規制を2002年4月から取り入れている。上記リストは、特にその懸念がある企業等をリストアップしたものである。この様に原子力関連機器・技術だけでなく、汎用性のある機器・技術に関しても輸出管理を厳しく行うことは核不拡散政策を遂行する上で重要であり、最新情報に基づいて毎回リストの見直しを行っていくことが重要である。北朝鮮の核開発に日本の製品が使用されていると言われており、北朝鮮の多くの公的施設(病院等)も対象に含まれている点は、北朝鮮に対する日本の慎重な態度をあらわしている。
【報告:核不拡散科学技術センター 小鍛冶】
<米議会、米印協定で意見割れる>
3月2日に合意した米印原子力協力について、米国議会内で意見が割れている。賛成派は、中国やロシアを視野に入れたインドの地政学上の重要性を指摘する。一方、反対派はインドの核兵器製造助長を懸念している。
3月16日、インドへのフルスコープ保障措置適用除外法案が米国議会に提出された。法案の概要は、昨年7月の米印共同声明の内容をインドが遵守していると米大統領が判断した場合、フルスコープ保障措置を適用しなくとも協力を可能とするものである。これに対し、議会は様々な意見で割れている。以下に一部主張を記しておく。
(賛成派)インドとの戦略的関係が米国にとって一番の利益(ルーガー上院議員:共)
(反対派)協力はインドのより多くの核兵器製造につながる(マーキー下院議員:民)
(慎重派)核兵器用の核分裂性物質の生産禁止を確約することが発効条件(サム・ナン元上院議員:民)
上記以外にも米印原子力協力の実施には、原子力供給国グループ(NSG)の合意が必要である。5月に行われる予定のNSG総会を注視する必要がある。
【報告:政策調査室 大塚】
<ロシア解体プルトニウム処分の最近の動き>
進捗が見えない米露解体プル処分計画について,米DOEがロシア側の状況を説明し米露間の双務性を一概に否定することは事の成就に有効ではないと述べた。 即ち,Jerry Paul NNSA副長官は,上院の軍事委員会で証言に立ち,ロシアは軽水炉よりも高速炉を解体プル処分計画で使うことを志向していると発言した。従来からの案である軽水炉による処分については,却下されてはいないものの,コスト見積もり総額の約$2.7Bが要されない限り,実施に至らないと露が言明していることから,議会筋には,米露が並行して処分を実施することを放棄すべきとの意見があるようだが,それは,国際的な協力を維持していく上で,マイナスになる恐れが大きいと述べた。
なお,ヒラリー・クリントン上院議員のロシア側のMOX燃料施設建設コストに関する質問に対しては,コスト評価では総額$2.7Bとされており,G6の拠出表明資金総額は$844Mであると応えた。露は,一方で,高速炉(BN-600, 将来的にはBN-800)によるプル処分が可能となれば,自らの資金の提供可能性を示唆しており,現在,米は露とこの件に関して協議中であると述べた。
(情報ソース)
- Monitor, nuclear weapon & material 4/3
昨年5月以降、賠償責任問題の解決の方向が見えたことから解体プル処分については米露を中心に水面下で技術的な協議が開催されている。この中でJAEAは従来からのわが国の主張であるBN600バイパック燃料オプションの推進に対し、議論に加わるとともに技術協力を進めている。具体的には日露共同研究(バイパック燃料施設改造整備)、21体デモ処分によるバイパック燃料健全性実証、BN600ハイブリッド化の具体化の検討等の技術協力・支援である。
ロシア解体プル処分のシナリオは、拡大G8の専門家による協議でVVER1000(MOXペレット燃料)、BN600(MOXバイパック燃料)によって行うことが議論されているが、MOXペレット燃料製造工場の建設費等が高く、G8諸国からの拠出金では1/3にも満たない状況でなかなか進まない状況である。一方、核兵器処分の当事国である米露においては協議が進んでおり、モニター社の記事に示されているように、ロシアは解体プル処分を軽水炉より高速炉で行うことを志向しており、VVER1000(MOXペレット燃料)による処分については、費用をすべてG8から支援してもらわないと実施しないと発言したことが伝えられている。
記事に示されている双務性は、核兵器処分は原則的に米露両当事国が同様のペースで実施すべしというという合意のことである。現在米国側は、サバンナリバーにMOXペレット燃料製造工場を建設し、軽水炉でプルサーマルにより処分する準備が整っているがロシア側はそれに見合うような計画が進行していない。このため米国の解体プル処分が進まず、米国内の問題、処分コストの増大等が問題視されている。Jerry Paul NNSA副長官 の発言は、このような双務性を考え直そうという議会の一部議員(?)の状況を背景にしている。
本件に関しては、ロシア側からの情報が極めて乏しいこともあり、ロシア側の真意をこの情報だけで推察することは困難。また、双務性堅持についてもこれがDOEの真意であるかは疑問の残るところである。ただ現在DOEを中心にロシア解体プル処分を進めようという機運のあることも事実である。情報の性格に留意しつつ、このような情報も参考にJAEAの協力・支援を継続することが肝要と考える。
ウランの世界埋蔵量の40%以上を所有する豪州は、ウランの輸出にあたっては輸出先が核兵器国か非核兵器国かを問わず、非軍事・非爆発的目的であることを供給条件としている。これを担保するため、核兵器国に対しても、豪州産ウランに対してはIAEA保障措置の適用を求める政策をとっている。
中国は、今後、原子力発電の拡大が計画されており、核兵器国における原子力平和利用の軍事転用防止については、垂直的不拡散の観点から、国際的に適切な対応をすることが必要である。
また、中国はウラン資源国であり、豪州産ウランの輸入により自国のウランを核兵器に利用することにつながる懸念もあることから、カットオフ条約(兵器用核分裂性物質生産禁止条約)についても適切に対応することが求められる。
【報告:政策調査室 道正】