核不拡散ニュース No.0006 2006.01.24
<ウクライナも核燃料サイクルか?>
ウクライナのユシチェンコ大統領は、ガス問題で露呈されたロシアへの依存を軽減するためにも自前の核燃料サイクルを確立する意向を示した。核兵器製造の意図はないという。3月に控えた大統領選をにらんだ発言という見方もある。
(情報ソース)
- Washington Post, January 13, 2006
<防護の薄いウラン施設>
Arms Control Todayの1月号には、核テロリスト、または核爆弾を模索する国家、あるいはその両方にとって高濃縮ウランを多量に保有する安全性の低い施設が最も狙われると警鐘を鳴らした。適切に閉鎖していない原子炉が世界に258もあり、50〜100トンの高濃縮ウランを含んでいるという。多くはロシアに存在するという。
(情報ソース)
- UPI, January 16, 2006
この様なことを背景に、2002年6月のカナナスキス・サミット(カナダ)において「大量破壊兵器及び物質の拡散に対するG8グローバル・パートナーシップ」が発表され、ロシア等に残された様々な脅威の源の除去等に取り組むため、G8諸国が10年間に総額200億米ドル(日本は当面2億ドル)を上限に資金協力を行うこととされている。また、米ロ間では、両大統領によるブラチスラバ・サミットでの合意に基づき、ロシアの核セキュリティ改善を目指した協力が行われているところ。
【報告:政策調査室 倉崎】
<米国で核廃棄物対策を発表か?>
ブッシュ大統領が今月中に核廃棄物計画を発表する可能性がでてきた。エネルギー省副長官のClay氏によれば、既存のPUREXプロセスを改良することに焦点をあてているという。廃棄物対策に関しては2つのオプションが存在し、技術開発期間中またはユッカマウンテンがオープンするまでは、1)再処理用にフランスや日本に輸送する、2)米国内で新技術が開発される箇所に輸送する、というものである。
(情報ソース)
- NTI, January 18, 2006
米国が使用済燃料処分の問題やエネルギーセキュリティーの問題などを背景に、これまでのワンスルー政策を再処理政策に転換する検討がなされているとの報道等が昨年後半から時々あった。この検討結果が何等かの形で2007年度の予算要求が開始される今月末に公表される可能性がある。また米国は、既にPUREXプロセスを改良した核拡散抵抗性の高い燃料処理技術としてUREXプロセス(ウランのみ、または、ウランと幾つかの限られた物質のみを分離する技術)や乾式の処理技術の研究開発を開始している。この技術を使った燃料処理により、将来ユッカマウンテンのような廃棄物処分場を大幅に減らせる可能性があるとしている。
なお、米国の使用済燃料の処理を欧州や日本で行う提案がなされた場合の影響は大きなものが予想されるので、この計画については、全体を注意してフォローする必要がある。
【報告:政策調査室 堀】
<イランのロシア大使がロシア案を評価>
イランの駐ロシア大使が、一度はイランが拒否したと伝えられたロシア国内におけるウラン濃縮提案に対し、一転して評価する発言を行った。同大使の発言は、国連安保理へ付託しようとする国際社会にイランの協力姿勢をアピールする狙いがあるとみられている。
(情報ソース)
- 各新聞紙、January 16,17, 2006
イランは今月、安保理付託の場合は国内法に基づいてIAEAとの協力を中止する旨発言している。2月2〜3日にIAEAで緊急理事会が開催されイラン問題の国連安保理付託が議論される予定だが、日本もイランでの油田開発問題もあり、安保理付託=イラン制裁と即座に結びつかない状況も考えられる。
ウクライナは、ソ連崩壊後に旧ソ連時代に配備されていた核兵器をロシアに移管し、非核兵器国としてNPT条約に加盟した。しかしその過程で、西側諸国による支援を見返りとして求める等、紆余曲折を経た経緯がある。
この発言は、ナショナリズムを反映しての国内向けの性格が強いとみられるが、仮に文字通りだとするならば、ブッシュ大統領やエルバラダイ事務局長の多国間管理構想、燃料供給保証、新規濃縮・再処理施設のモラトリアムとの関係が注目される。
【報告:政策調査室 大塚】