高温ガス炉は格段に優れた安全性をもち、発電や水素製造などへの熱利用技術が期待されている次世代の原子炉です。私が所属する高温工学試験研究炉部は、国内唯一の高温ガス炉であるHTTR（高温工学試験研究炉）を使った技術開発を進めています。
私は、安全性と実用性の両面で重要な冷却設備の保守に従事しています。機器や配管を点検する際は、計器類の数値以外に設備が発する音や匂いにも注意を払って異常を察知します。また、冷却設備だけでなく、原子炉建屋を地下３階から地上２階、屋上まですべて見回る日もあり、HTTRの健全な状態を維持しています。
さらに、2021年7月にHTTRが再稼働した時に得たデータを元に、今後の設備の運用方法について検討しています。

高温ガス炉の実用化には、さらなる安全性の実証と、熱利用技術の研究開発が必要です。今後も産業界との連携を深めながら、HTTRで培った国産の高温ガス炉技術の実用化を目指すことが原子力機構の役割です。
また、職場環境の魅力として、配属の際に個人の意思を尊重してくれる点が挙げられます。私は入構1年目で高温ガス炉設計グループに所属し設計プロジェクトを補佐する中で、将来のため高温ガス炉の実物を知っておく必要があると思い始めました。そこで今の組織への配属を志望し、入構2年目で幸運にもHTTRの再稼働に立ち会うことが叶いました。再稼働は約10年ぶりで、無事に臨界に達した時には拍手が起こり、とても感動したのを覚えています。仕事の面でも現場から学ぶことは多く、新鮮な毎日を過ごしています。

学生時代の専門は流体力学で、それを活用して温室効果ガス削減に取り組みたいと考え、特に水素製造に強い関心を持っていました。私の理想は、大量の水素を国内で、しかもカーボンフリーで製造することです。
その実現可能性がある高温ガス炉及び熱利用技術が、原子力機構で研究されていると知ったのが志望動機です。また、複数の企業が「今後、原子力発電は増えていくだろう」と予測しており、原子力に寄せられる期待の大きさを感じたことも決め手の一つです。

研究を続けていくからには何か一つ、将来の高温ガス炉に実装されるような成果をあげるのが目標です。具体的には、入社してすぐに取り組んだ実用高温ガス炉の燃料製造に関する研究を実用化させたいと考えています。自分の専門外の知識も必要ですが、身近にさまざまな専門分野の職員がいて質問しやすい雰囲気であるため、安心して研究に取り組めます。研究職は専門の枠にとらわれず、複数のテーマを持つことも珍しくありません。そういう職場環境が研究のモチベーションにつながっています。
また、世界的に高温ガス炉への注目度が高まる中、各国で進められている研究開発の動向にも注目し続けていきます。

仕事の後や休日など、幼少期から20年以上続けている剣道で心身をリフレッシュします。現在は大学の先輩が在籍する実業団の剣道部に所属し、週2回練習をしています。また、自主トレも兼ねて定期的に筑波山に登っています。
学生時代は大会での入賞を目標に練習に励んでいました。最近はコロナ禍で活動が制限されていましたが、徐々に大会が開催されつつあるので再び勝負の世界に飛び込もうという気持ちが芽生えています。

原子力機構の研究分野は多岐にわたり、さまざまな専門の人が活躍しています。学生の皆さんは、原子力と関係がなさそうな研究をしていても、「学生時代に学んだことを、原子力機構のこういう分野に役立てたい」という意志があれば必ず活躍の機会が訪れます。個人的には、その分野に「高温ガス炉の技術開発」や「その熱利用技術開発」が含まれているとうれしく思います。実用化までには長い道のりが残されており、皆さんの力が必要です。少しでも興味を持っていただけたなら、ぜひ説明会に参加してください。
最後に、コロナ禍のため一人で過ごす時間が増えても、オンラインを活用して友人との関わりを大切にしてほしいと思っています。研究や就職活動の相談をはじめ、プライベートも含めて率直に話せる相手は一生の友人となります。