127 原発の確率論的リスク評価
掲載日:2025年6月24日
複合自然災害に対応
弱点を把握
原子力発電所は安定したエネルギー供給源である一方、人や環境に放射線影響を及ぼし得るリスク源でもある。そのリスクを効果的かつ効率的に低減するには発電所の弱点の把握が不可欠だ。
予め想定した事故に対して「有効な対策が講じられているか」は定性的に把握できる。しかし、発電所の安全を脅かす自然災害は多種多様で、必ずしも想定通りの事故進展となるとは限らない。かといって、全ての事故や自然災害に対して完全な対策を取ることは現実的ではない。
このバランスを取るための手法の一つが「確率論的リスク評価」だ。機器の作動失敗や自然災害による損傷確率をイベントツリーやフォールトツリーと呼ばれる樹形図に整理し、事故の進展や対策の効果をモデル化する。これにより、炉心損傷に至る確率やその際の影響を定量的に評価でき、より効果的な安全対策を検討できる。
不確実性を考慮
日本原子力研究開発機構では、確率論的リスク評価において、地震などの自然災害を複合的に扱える手法を開発した。具体的にはフォールトツリー内に複数の自然災害による機器の損傷確率を織り込むことで、組み合わせの影響を反映できるようにした。さらに、多くの不確実な要素を考慮するため、無作為に条件を変えながら何万回もシミュレーションを行う「モンテカルロ法」を活用。複数の機器が同時に損傷する確率を詳細に取り扱えるようにした。
この手法を使って、東京電力福島第一原子力発電所を襲ったような地震随伴津波のリスクを試算した。解析では、発電所内で地震や津波によって損傷するおそれがある機器を特定し、リスクの傾向を分析した。評価の結果、地震単独の場合と比較して、津波の影響を考慮すると全交流電源喪失の発生確率が上昇することを確認した。この傾向は、実際の事故進展の様相とも整合している。
計算時間を短縮
現在は、解析コードの計算速度向上に向けた改良を進めている。従来に比べ計算時間を短縮しつつ、より詳細なシナリオ分析が可能になる見込みだ。
さらに、提案手法の適用範囲の拡大を目指し、新規制基準に基づき発電所に備えた対策の有効性検証を計画。実現すれば廃炉時のリスク評価や次世代革新炉の安全性向上にも応用が期待できる。この手法の確立を通じて、確かな原子力安全規制とリスク情報のさらなる活用につなげたい。

