118 原子炉内シミュレーション
掲載日:2025年4月15日
炉心設計 検証を精緻化
データ不足課題
原子炉の出力規模や制御に関わる炉心設計では、専用プログラム(炉心設計コード)によるシミュレーションが活用されている。日本原子力研究開発機構は、炉心内の物理現象が相互作用する過程を解析できるシミュレーターを開発した。実験データに相当する詳細データを提供できるようになることで、仮想空間上の原子炉「バーチャル・リアクター」実現へと大きく一歩踏み出した。
カーボンニュートラル達成や宇宙開発を目的に、小型モジュール炉(SMR)をはじめ従来と大きく異なる原子炉「革新炉」の開発が世界的に進む。現場では炉心設計コードで炉内状況を模擬するが、コード自体の妥当性も確認する必要があり、実験データとの比較は不可欠だ。しかし、中性子輸送や熱流動など、複数の物理現象を同時に扱った実験は技術的・経済的にも実施が困難で、データ不足は世界的な課題になっている。
蒸気描き出す
そこで、原子力機構は既存の炉心設計コードを複数組み合わせて炉内現象を再現するマルチフィジックス・シミュレーション・プラットフォーム「JAMPAN」(JAEA Advanced Multi-Physics Analysis platform for Nuclear systems)を開発した。今回の第1版では、開発済みの中性子輸送計算コード「MVP」と熱流動計算コード「JUPITER」をJAMPAN上で連携した。
MVPは中性子挙動を計算し、核分裂反応による発熱を表現。JUPITERは熱流体工学に基づく冷却材の流れを解析、蒸気の泡分布を高精度に描き出す。現実世界で複数の現象が互いに影響しながら進展するのと同様に、JAMPANでは2つの計算コードを連係させながらデータを組み上げる。
モデル改良促進
沸騰水型軽水炉の燃料集合体を対象にシミュレーションを行った。燃料集合体の隙間に蒸気の泡が発生、水と泡が混ざった二相流の影響を受けて熱出力分布は変化する。これに呼応して蒸気の流れが変わる様子が詳細に解析できていた。
今後は既存原子炉だけでなく、革新炉などさまざまな条件で詳細なシミュレーションを行う予定だ。模擬実験データを積みあげていくことで、炉心設計コードの妥当性確認やモデル改良を促進。将来的にはバーチャル・リアクターで炉心設計の品質向上につなげ、安全性と経済性のさらなる改善へ貢献したい。

