119 ポリゴン型詳細人体モデル
掲載日:2025年4月22日
被ばく評価精緻化
日本人向け刷新
放射線の被ばく線量は体格、臓器の形状・材質(元素組成や密度)など特性を反映した人体モデルを利用して、シミュレーションで評価する。日本原子力研究開発機構では、従来よりも体内構造を精緻に再現した成人日本人の「ポリゴン型詳細人体モデル」を新たに開発、ソースコード管理サイト「GitHub web」で無償公開した。放射線感受性が高い水晶体の幹細胞領域も被ばく線量を正確に評価できることから、医療や原子力分野での被ばく線量評価や放射線防護研究への活用が期待されている。
従来の被ばく線量評価は、ボクセルと呼ぶ直方体要素を組み合わせて臓器形状を再現した「ボクセル型人体モデル」を利用してきた。直方体のサイズが小さいほど形状を正確に表現できるが、内部も同一の直方体で埋めて作る。このため、数㌢の臓器内部に1㍉未満の幹細胞領域を再現しようとすると、人体モデルのデータ量は膨大になり、シミュレーション計算コード上での取り扱いも困難になる。
さらに、国際放射線防護委員会(ICRP)が水晶体や皮膚組織の中でも放射線感受性が高い幹細胞領域について、線量評価の必要性を提言。しかし、ボクセル型には幹細胞領域の表現がなかった。
細胞領域を再現
そこで、われわれはアニメーション制作などで使われる3次元コンピュータグラフィックス技術の一つ、ポリゴン技術に着目。物体の表面形状を容易に再現・変形することが可能な「ポリゴン型詳細人体モデル」を開発した。水晶体の組織内にミクロサイズで複雑な幹細胞領域の構造を精緻に定義できただけでなく、計算コード上での取り扱い容易化に成功した。
被ばく影響は臓器や組織ごとに異なる。そのため人体モデルは男性型のJPM、女性型のJPFを用意し、標準成人日本人の体格と臓器質量を反映。これで様々な被ばく状況下の臓器別線量などを、体格特性を考慮した上で正確に評価できるようになった。
個人差に対応
現在は、人体モデルの姿勢や体格を変化させる変形技術の開発を進めている。今後、この変形技術を人体モデルに融合すれば、個々人の状態に合わせた被ばく線量評価技術が確立できる。たとえば、放射線治療の現場で患者や施術者それぞれの姿勢や体格を踏まえつつ、効果的な治療計画の下、線量管理を行える。こうした人体モデル開発を通じ、被ばく防護の最適化に貢献していきたい。

