原子力機構の価値 ~原子力の社会実装に向けて~

日刊工業新聞にて毎週火曜日連載中

117 核不拡散へ 非破壊分析高度化

掲載日:2025年4月8日

原子力人材育成・核不拡散・核セキュリティ総合支援センター 技術開発推進室
専門研究員 小泉 光生

専門は原子核物理実験。加速器を使ったガンマ線分光、レーザー核分光などの原子核構造研究に従事。近年では、核不拡散・核セキュリティー分野での研究開発を展開。核不拡散に適用する技術としてのアクティブ非破壊分析技術や、核セキュリティー(テロ対策)向けの移動型放射線源検出システムの開発を行っている。

レーザー活用、小型化推進

核不拡散や核セキュリティー(テロ対策)の現場では、非破壊検査分析は重要な武器だ。日本原子力研究開発機構は社会的要請に応えるため「中性子共鳴透過分析」(NRTA)の高度化に取り組んでいる。レーザーを用いた中性子発生器(中性子源)での実証実験に初成功し、目指すNRTAの小型化実現の可能性が見えてきた。

原子力で使う核物質を管理するため、様々な測定技術が用いられている。試料が出すガンマ線や中性子などの放射線を測定し、試料中の核物質量を決定する非破壊分析技術はその一つだ。

しかし、将来的に使用が検討されるものには、核物質のほか放射性同位体を含むものもある。その分、多くの放射線が出るので、単純な放射線計測では対応できない。そこで原子力機構は、測定試料にガンマ線や中性子を照射し、これらが引き起こす反応を測定・解析するアクティブ非破壊分析技術開発を進めている。

小型化を視野に

NRTAはパルス中性子を当て、試料中の単位面積当たりの原子核の数(面密度)を割り出す分析方法だ。用いる中性子源はパルス幅が短く、十分な強度が要る。有力候補に電子線加速器を用いた中性子源が挙がるが、装置は大きい。

こうした中、短パルスかつ高強度なレーザーを用いたレーザー駆動中性子源(LDNS)が、新たな中性子源候補に浮上した。LDNSはより小型な短パルス中性子源を実現、システムの小型化に有利だ。現状のレーザー装置は巨大だが、今後の小型化も期待される。

我々は大阪大学、量子科学技術研究開発機構と共同で、NRTAによる非破壊分析試験を実施。阪大レーザー科学研究所が開発したレーザー装置とLDNSを使い、試料中の面密度解析に初成功した。

工学応用も

今回の実証実験は最初の一歩にすぎない。この分析技術を身近なものとするには、レーザーシステム本体の小型化をはじめ、多くの技術的課題を乗り越える必要がある。本研究が呼び水となり、技術的進歩が促されるのを期待している。

そして遠くない将来、核不拡散分野では放射能レベルの高い核物質試料に対する非破壊測定、核セキュリティーでは不審物中の核物質検知といった場面で、コンパクトなNRTAは有効な手段となるだろう。科学研究や工学応用も可能だ。試料中の原子核の成分分析や検知・検出、温度測定などの用途でも有用な技術になると考えている。