116 フッ素系抽出剤で金属回収
掲載日:2025年4月1日
分離工程止めず高効率
液相制御に貢献
溶媒抽出法は様々な金属が溶け込んだ水溶液(水相)に特殊な油(油相)を接触させて、目的金属のみを油相へ移すシンプルな分離技術だ。日本原子力研究開発機構では、高効率で分離工程を阻害しない新たなフッ素系抽出剤を開発した。資源回収技術の高度化に資する技術として磨きをかける。
水相中の金属を効率的に濃縮できる利点があり、原子力分野では使用済み燃料再処理や放射性廃液処理のコア技術に位置づけられる。しかし、高濃度の金属を取り扱う場合、油相が軽い油相と重い油相(第三相)の2つに分かれる「相分離」が問題になる。第三相は多量の金属を取り込む性質があり、化学プラントの抽出工程を停止させてしまう。このため、第三相生成の要因を完全に取り除いた抽出システムが求められている。
我々は以前の研究で、第三相は油相に移行した金属錯体と水分子の巨大集合体でできていると突き止めた。だが、第三相を防ぐ具体的な解決策の提案には至らなかった。
フッ素位置工夫
そこで私は、自動車の車体コーティングでも用いる高い疎水性を示すフッ素を利用し、水分子の油相への抽出を制御すれば解決につながると考え、新たなフッ素系抽出剤を開発。一般的な工業用抽出剤(リン酸トリブチル)とフッ化炭素を組み合わせ、ブチル基の先にフッ化炭素の鎖が長く伸びる構造にした。
一般に、抽出剤を用いる際は第三相生成を避けるため、回収金属の濃度を意図的に下げ、抽出効率を犠牲にする必要がある。ところが、開発したフッ素系抽出剤は高濃度の金属を抽出させても第三相はできない。高い抽出効率と第三相を生成させないという2つの能力を共存させていたのだ。
小型分子集合体
この理由を解明するため、研究用原子炉JRR―3で、ナノ構造評価に威力を発揮する中性子小角散乱測定を行った。結果、開発したフッ素系抽出剤は、互いに反発しながら金属イオンを取り囲み、ナノスケールの小さな分子集合体を形成、油相に留まった(図右)。この発見は、第三相を阻止する具体的な解決策を示したことになる。
溶媒抽出法は廃電子機器から貴金属元素や希土類元素を回収する際も利用できるなど、循環型社会に貢献する技術として注目されている。
今後、フッ素を利用した抽出システムを高度化し、資源リサイクル技術を深化させて、資源問題の解決へとつないでいきたい。

