大学等への公開特別講座

2023年度大学等への公開特別講座の講演テーマ

1. 「原子力機構の研究開発成果 2022-23」掲載の最新研究テーマ

原子力機構では成果普及情報誌「原子力機構の研究開発成果2022-23」を発行し、分野毎に最新の研究開発成果を紹介しておりますので、この中から講演テーマをお選びいただけます。詳細は以下のページを参照ください。

原子力機構の研究開発成果 2022-23

2. 各研究開発部門等におけるテーマ

1)福島研究開発部門
1-1 福島第1原子力発電所事故後のJAEAの取組
福島第1原子力発電所事故の概要と事故後の原子力機構の環境回復、廃止措置への取組等(全体概要)を紹介する。
1-2 放射性セシウムの吸脱着メカニズム
放射性セシウムの土壌に対する吸脱着メカニズム
1-3 高度化する無人モニタリング技術
モニタリング技術開発(航空(ヘリ、航空機)モニタリング・水中モニタリング・シンチレーションファイバー)について説明する。
1-4 放射能マップはこうしてできあがる
放射能分布の詳細調査(線量・土壌測定~マップ作成~中高可視化への取組み)について説明する。
1-5 福島長期環境動態研究
福島県における放射性セシウムの移動予測と移動抑制について説明する。
1-6 環境中の放射性核種分析方法の研究
モニタリングに有用な放射性核種の分析技術に係る研究開発状況などを紹介する。
1-7 燃料デブリ取り出しに向けた研究
福島第1原子力発電所の廃止措置に向けたロードマップについて、及び原子炉内で何が起こったか、溶融燃料デブリの取り出し向けた研究開発について説明する。
1-8 福島第一原子力発電所事故と災害対応ロボット
福島第一原子力発電所事故時のロボットによる緊急時対応の事例と、そこから見える災害対応ロボットの課題について紹介する。
1-9 事故に由来する廃棄物の管理と放射性核種の汚染ふるまい
事故に由来する廃棄物の管理方法について、通常の廃棄物の場合と比較して概説するとともに、放射性核種の汚染ふるまいについて述べる。
1-10 放射性廃棄物の処分へ向けた研究
放射性廃棄物の処分に向けた研究を概括する。
1-11 レジリエンスエンジニアリングの視点でみた福島第一原子力発電所事故対応について
安全を達成するために必要な能力を醸成するツールを開発し、提供することを目的としたレジリエンスエンジニアリングの手法を用いて、事前の対策および備えの多くが機能しない未曾有の危機の状況となった福島第一原子力発電所において、臨機に対応した「人」の能力およびその背景について解説する。
1-12 人の能力や役割に注目した安全について(レジリエンスエンジニアリング、ヒューマンファクター、Safety-II)
人を「エラーする存在」ではなく「本質的に危険なシステムを安全に運転している存在」として捉えなおし、実際の事例に基づきながら、「安全を守り、向上させる資源である人」が安全を実現できるために必要な取組み等について解説する。
2)安全研究・防災支援部門
2-1 軽水炉の安全向上に向けた熱水力安全研究(安全研究・防災支援部門)
現行原子炉の安全確保の方法について、基礎となる深層防護の考え方や安全研究の内容、さらには福島第一原発事故を踏まえた安全対策の高度化の内容について述べるとともに、様々な新型原子炉で検討されている安全性高度化手法について解説する。
2-2 反応度事故及び冷却材喪失事故時の軽水炉燃料のふるまい(安全研究・防災支援部門)
軽水炉施設の安全性を評価するために想定される「設計基準事故」として、「反応度事故」及び「冷却材喪失事故」が代表的である。これらの事故条件下における軽水炉燃料のふるまい等について解説する。
2-3 原子炉建屋・機器の健全性評価に関する最先端シミュレーション技術(安全研究・防災支援部門)
原子炉建屋に対する耐震評価や飛翔体衝突の影響評価、安全上重要な機器に対する地震やシビアアクシデント等の事象が発生した場合の健全性評価の構築に向けて開発を進めている最新のシミュレーション技術について概説する。
2-4 長期間使用された原子炉機器を対象とした健全性評価研究(安全研究・防災支援部門)
国内軽水炉の運転期間の長期化等を踏まえ、原子炉圧力容器や配管等を対象とした材料劣化予測手法や健全性評価手法の最近の取組みについて概説する。
2-5 原子力施設のリスク評価研究(安全研究・防災支援部門)
シビアアクシデント時における炉心溶融進展やソースタームの評価、それらの結果を活用して格納容器破損頻度や放射性物質放出頻度を評価するレベル2の確率論的リスク評価(PRA)を中心に、シビアアクシデントに係わる解析手法やPRAの手法等を概説する。
2-6 原子力施設の確率論的事故影響評価研究-防災分野への適用-(安全研究・防災支援部門)
環境への放射性物質の放出による公衆のリスクを評価するレベル3の確率論的リスク評価(PRA)について、その解析手法を概説するとともに、原子力機構が開発中のOSCAARコード及び原子力防災への適用に係る最新の研究成果を紹介する。
2-7 臨界事故を防ぐー合理的な評価方法の確立(安全研究・防災支援部門)
再処理施設等での臨界事故において生じる核分裂数などの評価手法の開発の現状、一点炉動特性を中心とした臨界事故の物理、燃料デブリなどの乱雑な体系の臨界事故の特徴など最新の話題について説明する。
2-8 核拡散防止のための核物質の極微量分析技術(安全研究・防災支援部門)
核兵器開発など秘密裡の原子力活動を検知する技術は、核拡散を防止するために必要不可欠である。ここで、原子力施設内で採取された環境試料を分析し、そこに含まれる極微量の核物質の素性を明らかにできれば、その施設での原子力活動の内容の推定が可能となる。講演では、このために必要な極微量分析技術の開発内容について紹介する。
2-9 リスク情報を用いた原子力施設の安全性の評価について(安全研究・防災支援部門)
現実世界のあらゆる行動・行為は多かれ少なかれメリットとデメリット、あるいは便益と損害のバランス、つまりリスク情報に基づいて行われている。このことを定量的に取り込むことが工学、そして原子力のような、メリットもデメリットも巨大である工学の安全性の把握に有用であり、昨今その研究が進んでいる。原子力を例に、リスク情報の扱い方、リスク情報活用の研究について解説する。
3)原子力科学研究部門
3-1 「核図表」から知る元素の成り立ちと放射線 / 宇宙の錬金術(先端基礎研究センター)
原子核の性質を核図表の観点から解説する。「放射性元素」「宇宙における元素の起源」「ニホニウム」といったキーワードを中心に、身の回りの放射線、地球に鉄が豊富な理由、ウランの存在の起源、日本の新元素合成に関する話題を、講演者が作成した「原子力機構核図表」を用いて紹介する。(上記からテーマを絞って講演も可能)
関連ページ: 1校に1枚核図表」を! 原子核の世界観を届けたい | academist (アカデミスト)
サイエンスアゴラ2020
ニホニウム - 共立出版
3-2 核分裂と超重元素研究の最前線(先端基礎研究センター)
核分裂は原子力エネルギーの基礎となる現象であるが、この基礎過程の記述は難解であり、現在でも実験および理論の両面で勢力的な研究が世界的に進められている。一方、近年、日本が113番元素を合成して「ニホニウム」という元素名を与えたように、人類が合成できる元素の存在限界およびその合成方法に注目が集まっている。本講演では、核分裂と超重元素合成の基礎を説明するとともに、最先端の研究を説明する。
3-3 超重元素の化学的研究 ?周期表への挑戦?(先端基礎研究センター)
超重元素の生成に関わる核反応などの合成機構と、それに利用される加速器などについて解説しつつ、超重元素の化学的研究に焦点を当て紹介する。特に、このような極端に重い元素の化学挙動への「相対論効果」の影響と元素の周期表の関わりについて、最新の研究動向とともに講演者自らが携わってきたユニークな研究に触れ紹介する。
3-4 放射線輸送計算の落とし穴(原子力基礎工学研究センター)
講演内容*2 中性子・γ線の物質中での挙動を計算する放射線輸送計算を実際に行う上で注意すべきことは多々あるが、必ずしも知られていないのが現状である。本講演では、専門家でさえ認識していないような放射線輸送計算の注意点(落とし穴)を計算コード、核データ、遮蔽・廃止措置の観点からわかりやすく紹介する。
3-5 分離変換技術による放射性廃棄物の減容・低減化研究(原子力基礎工学研究センター)
原子力発電所から発生する放射性廃棄物の安全な処理処分は、原子力利用における重要な課題である。高レベル廃棄物から、問題となる半減期の長い核種などを分離して減容化し、大型加速器と原子炉を組み合わせた「加速器駆動システム(ADS)」に供給して長期的な有害度を低減化する分離変換技術研究を紹介する。また、分離される有用な元素や同位体について、期待される新たな利用法についても併せて紹介する。
3-6 中性子で探る原子・分子の世界(物質科学研究センター)
中性子は原子や磁気の配列およびその振動のような物質中の原子レベルの情報を知る強力な手段である。物質中の原子や磁気は、物質が示す性質と密接に関連する。講演では中性子を用いて物質中の原子レベルの情報を調べる方法と、それを利用した超伝導や磁性などの機能を持つ物質についての研究例を紹介する。
3-7 加速器駆動システム(ADS)による放射性廃棄物低減のための核変換技術開発(J-PARC)
原子力発電に伴い発生する高レベル放射性廃棄物の減容化や有害度低減のための大強度加速器と未臨界原子炉を組み合わせた「加速器駆動システム(ADS)」による核変換技術とともに、大強度陽子加速器施設J-PARCなどを活用した高温液体金属(鉛ビスマス)技術や陽子ビーム技術に関する研究開発の現状を紹介する。
関連ページ: 核変換|J-PARC
核変換の研究|J-PARC|大強度陽子加速器施設
3-8 中性子散乱入門(J-PARC)
中性子は高い透過力や磁石の性質を有するなど様々な特徴があり、多岐にわたる分野で中性子を用いた研究が行われている。中でも、J-PARCは世界有数の中性子実験施設であり、国内外から多くのユーザーが来訪している。講演では、中性子の性質や実験手法をわかりやすく説明し、J-PARCの最先端装置と研究例についても紹介する。
3-9 パルス中性子による材料強度学の研究(J-PARC)
中性子の高い透過力と原子配列を見る力を活かして、中性子回折パターンに表れるBragg反射の位置・強度・プロファイルを詳細に解析することで、材料の内部応力・相比・転位・集合組織など、新材料の設計や構造物の信頼性評価に役立つ様々な情報を得ることができる。J?PARCの高強度中性子と最先端のデータ収集方法を用いれば外力負荷、温度などの環境下での種々の研究が可能となる。講演では、パルス中性子を用いた工学材料強度学の基礎から最新研究例を分かりやすく解説する。
3-10 中性子で観る物質の構造と性質(J-PARC)
物質内部の原子の並び(構造)とその物質が示す性質には密接な関わりがあり、物質の性質の起源を知る上で構造を調べることは非常に重要である。講演では、J-PARCのパルス中性子を用いた構造解析手法の解説をするとともに、中性子を用いた構造物性研究について紹介する。
3-11 パルス中性子を用いた新しい可視化技術(J-PARC)
中性子イメージングは、中性子の高い物質透過力を利用して非破壊で物体の内部を観察・分析する技術です。J-PARCでは、これまでに一般的に実施されてきた中性子を用いたラジオグラフィおよびトモグラフィだけでなく、パルス中性子を活用することで結晶組織構造、温度、磁場の空間的な分布を可視化する技術を開発しています。講演では、パルス中性子を用いた新しい可視化技術について説明するとともに、その応用について広く紹介します。
3-12 中性子による分子性結晶の化学(J-PARC)
単結晶中性子回折法は水素原子をはじめとした軽元素に対する感度が高いため、有機化合物や金属錯体などの分子性結晶の構造、機能の研究においては結晶中の水素原子を正確かつ確実に観察する手法として重要となる。講演では、J-PARCのパルス中性子を用いた単結晶構造解析の手法を解説するとともに、最先端の研究成果を紹介する。
4)高速炉・新型炉研究開発部門
4-1 高速炉における構造・材料の研究開発
高速炉の意義や設計上の特徴を概説するとともに、高温構造設計の高度化や規格・基準の整備に向け解決すべき構造・材料にかかる課題に焦点を当て、それを克服するための研究開発の現状を解説する。
関連ページ: 高速炉機器・構造の設計評価 | 高速炉・新型炉研究開発部門
5)核不拡散・核セキュリティ総合支援センター
5-1 核不拡散・核セキュリティを巡る国際情勢と日本の対応
原子力の平和利用を推進するためには、原子力安全のみならず核兵器を持つ国を増やさないための核不拡散措置と、テロリスト等から核物質や放射性物質を防護する核セキュリティ対策が必要である。講演では、核不拡散及び核セキュリティがどのように発展してきたのか、世界的にどのような脅威があるのか、どのような国際枠組みや取組みがあるのか、最新の国際動向、特に国際原子力機関(IAEA)の役割等を紹介し、核不拡散・核セキュリティの概要について理解を促進する。また、核不拡散及び核セキュリティに係る人材育成支援、核不拡散(IAEA保障措置・計量管理)や核セキュリティ技術(核鑑識・核検知等)、包括的核実験禁止条約(CTBT)国際検証体制について、原子力機構の貢献及び技術開発の動向等を紹介する。なお、ニーズに応じて講演内容は調整可能である。
関連ページ: 技術開発及びCTBTへの貢献
人材育成
政策研究
ISCNニューズレター
核不拡散動向