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第12回 原子力機構報告会
「原子力の未来 ―原子力機構の挑戦―」

全体概要 大洗研究開発センター燃料研究棟における汚染について (テキスト版)

全体概要
大洗研究開発センター燃料研究棟における汚染について
理事 青砥紀身

それでは、私のほうから「大洗研究開発センター燃料研究棟における汚染について」を報告させていただきます。

まず最初に、先ほど理事長の挨拶の中にもありましたが、このような作業員の内部被ばくを伴うような汚染事故を起こしましたことにつきまして、心からおわび申し上げます。

〔パワーポイント映写。以下、場面がかわるごとにP)と表示〕

P) 事故の概要をお話しします。

平成29年6月6日、本年の6月6日ですが、11時15分ごろ、大洗研究開発センター燃料研究棟の108号室でプルトニウムとウランを含む試験試料の入った貯蔵容器を5人の作業員が点検していたところ、合成樹脂製の袋が破裂して汚染が発生、作業員が被ばくしています。

その保管容器ですけれども、このような形をしていまして、プルトニウム、ウランの試料はこのポリ容器の中に入れられています。その外側をビニールバッグ、合成樹脂の袋で二重に密閉した後、こうした鋼製容器の中に入っていました。この鋼製容器を、ここに見せてありますようなフードの中でふたをあけようとしていて、ふたがあいた途端に中の袋が破裂して被ばく事故を起こしています。

その後、事故原因の分析、再発防止対策の策定等を行い、原子力規制委員会に9月29日に第3報を提出しています。さらに、その後10月16日までにこの当該室の除染作業を終了し、立ち入り制限区域を解除しています。

事故時、また事故後の継続的に監視してきた放射線モニターの指示値に変動はなく、この事故による環境への影響はありません。

この燃料研究棟は、高速炉用新型燃料等の研究を行う目的で昭和49年度に建設され、その後種々の試料作製ですとか分析をし、所期の目的をほぼ達成した後、老朽化をしているということで、平成25年度に施設の廃止の方針を決定しています。

施設の廃止の方針を受けて、それまで使っていた試料、核燃料物質の管理状態を改善するために、まずはそれをおさめる既存の貯蔵容器80個のあき容量の確認作業をしているところで、31個目の確認作業中にこの事故は発生しています。

P) 作業員の被ばく状況ですけれども、作業員は事故後キレート投与による治療を受け、現在まで作業員全員の体調に特段の変化はありません。治療がなく、今後50年間内部被ばくが継続するという仮定に基づき算定した預託実効線量では、100mSv以上200mSv未満が1名。10mSv以上50mSv未満が2名。10mSv未満が2名という結果を出しています。

事故の現場の復旧ですが、7月20日までに、事故発生の貯蔵容器と事故時に飛散した物質を取りまとめて、108号室から別室のグローブボックスに収納しています。その後、当該のフード、108号室の全面にわたりまして汚染検査、各種除染機器を使った除染、そしてすき間やさまざまなひび割れなどでぬぐい切れないところにつきましては、特殊なペイントで固着して汚染を拡大させないようにして、室内全域の最終汚染検査を行い、表面密度限度が4Bq/cm2未満であることを確認し、10月16日、最終汚染確認の後、立ち入り制限区域を解除しています。

ここにお見せしているのは、その除染前と除染後の汚染検査の結果で、現在ただいまは全てが確認未満であるということを確認しています。

P) 合成樹脂の袋が破裂に至った原因特定ですが、貯蔵容器の中の確認、そしてその袋自体がどのように劣化して、どういう圧力で破裂したかの試験、あるいはそれをシミュレーションで対応することなどをあわせて、最終的にはその要因分析のフォルトツリー図を作成して、最終的に樹脂製の袋が破裂した主な原因は、平成3年にプルトニウムと一緒に封入したエポキシ樹脂が、その後α線により分解を起こし、その結果、ガスが発生して内圧が増加したことによると特定しています。また、その5年後に点検を行った際、既に袋が膨れ上がっていたのにもかかわらず、詰めかえ時の対応が不十分であったことも要因の1つと考えています。

P) また、所定の装備をしていながら内部被ばくを起こした原因推定についても対応しています。

作業員からの聞き取りや、着装していた半面マスクの汚染分布測定を行い、それらを要因分析図を使用して、作業者ごとの内部被ばくの原因推定をしています。

ここに示しました図は、最も重い被ばくを受けた作業員の半面マスクの内側、顔に密着する部分の汚染検査の状況です。この部分が鼻に当たるところ、この部分が下の顎に当たるところです。上下ともに、ここにお見せしますように、汚染の状況は実際に有意であるということがわかっていますし、こちら側サイドで袋が破裂している、そちら側のサイドのほうが汚染が厳しいといったことがわかっています。この絵は、また別の測定方法により対応したもので、この図とこの図は間違いのないようなことを確認しています。

これらの結果、袋の破裂時の摂取は、破裂したときの顔の動き、室内での会話や発汗等による半面マスクの密着性の低下により、顔面等に付着した放射性物質がマスク面体の接顔部からマスク内に入り込み、放射性物質を吸入、摂取した可能性が高いものと推定しています。

P) こうした原因をいろいろ分析した上で、今回の事故を起こした重要な直接要因を示しています。それは保管時あるいは保管管理の期間、また今回の作業の計画時、そして実施時にさまざまな点で重要な要因があると考えています。

保管時は、この手引書にきちんとした注記がされているにもかかわらず、試験で使用済みのプルトニウム及びウランを含んだエポキシ樹脂を、酸化加熱処理せずに貯蔵容器に貯蔵してしまったということ。また、保管管理においては、先ほど申し上げたように、点検時に既にこの実際の袋の膨張を確認していたにもかかわらず、金属容器への変更等の改善を行わず、またこの情報自体が十分伝わらなかったこと。また今回の作業段階では、このような情報が余りなかったために、安定化した状態で保存されているという思い込みがあり、汚染防止に対して十分な作業計画が作成できなかったこと。さらには実施時に実際にふたをあけていく途中でふたが浮き上がり、中から内圧が抜けた音がしたにもかかわらず、それを完全な異常と認識せずに作業を中断できなかったことが挙げられています。

これらに対して、再発防止対策を示しています。

保管時、保管管理時におきましては、核燃料物質の安定保管のための貯蔵管理に関する基準を改善し、情報の整理、明確化、記録の管理手法を改善する。さらには、それらのことを徹底した教育を行っていくということにしています。

また、作業計画時においては、取り扱う物質が不明瞭、安全が確認できない場合等の高いリスクを考慮した安全な作業計画の作成のための手順を明確化すること。中で実施に当たっては、異常を感知した場合の作業の中断を含む作業計画でのホールドポイントの明確化を示すようにしています。

さらに、こうした直接要因を生んだ組織的な要因につきましても、現在検討を進めており、意思決定プロセスが不明確であること。原子力安全にかかわる知見を業務に反映する取り組みがまだまだ不足していたこと。安全確保に対する慎重さ、常に問いかける姿勢がまだ十分でなかったこと等を挙げています。これに対しても、組織を挙げて対応していきます。

P) 事故発生後、原子力機構の総力を挙げて、これらの原因究明、現場復旧に取り組んでまいりました。それらを終えて再発防止対策を策定したことによって、原子力規制委員会に報告を行っています。この報告書に対して、原子力規制委員会で指摘、コメントがありましたので、それを踏まえ、単に直接的な原因を踏まえたものではなく、その背景にある組織的な要因の分析及び対策等について取りまとめ、改めて原子力規制委員会に報告する予定です。

これら再発防止策については、既にその発災もとである大洗研究開発センターにおいて是正処置として具体化して実施していますが、これらについて機構内での水平展開についても、各拠点に展開し、必要な改善を図っているところです。

今回の事故を非常に重く見て、機構全体で核燃料物質の管理に関する改善を図るため、改めて核燃料物質の管理基準について、年内に運用開始を目標に改善策定を進めております。

原子力機構は、今回の事故を深く反省し、核燃料物質を取り扱う研究開発機関として、より高いリスクを考慮した保安活動を徹底し、安全確保に努めてまいります。

御清聴ありがとうございました。