独立行政法人日本原子力研究開発機構：JAEAメールマガジン　No.290

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世界最大流量をもつ液体リチウム流動試験装置　～国際核融合炉材料照射施設の工学実証・工学設計活動(IFMIF/EVEDA)事業の進展～

核融合炉原型炉の早期実現を目指す幅広いアプローチ活動(Broader Approach(BA))の中で、国際核融合炉材料照射施設の工学実証・工学設計活動(IFMIF/EVEDA)事業を欧州研究開発機関と共同で2007年より実施しています。
　核融合炉のための材料を開発するためには、核融合炉の環境を模擬した中性子源が必要です。この中性子源にはターゲットとして液体リチウムを選択し、4千万電子ボルトに加速した高強度の重陽子ビーム(250mA)を、自由表面を持つ液体リチウムに入射させる方式が最良と考えられています。この時、最大1万ｋWの重陽子ビームの熱量をリチウムから除熱するため、固体ではなく、液体として秒速15mの高速度でかつ、安定に流動させなければなりません。また、加速器の重陽子ビームを安定に照射させるため、リチウムの沸騰を防ぐ必要があります。このため、リチウム流の底面には湾曲した凹面形状の背面壁を設けています。そして、この背面壁に沿ってリチウムを秒速15mで流動させることで、リチウム流内の圧力を遠心力で高めて重陽子ビームの入熱による沸騰を防ぐことができます。また、リチウム流の循環により除熱することで、定常的で安定な中性子源を実現させる仕組みをもつことができます。IFMIFについては、日欧の協力体制下で詳細な設計評価がとりまとめられたところです。
　本活動の中で、IFMIFを実現させるためには様々な工学的な課題を解決していく必要があり、IFMIFのための加速器開発を青森研究開発センターで行い、世界最大電流の重陽子ビーム（9MeV、125mA）を加速させるプロトタイプ加速器製作とその評価が急ピッチで進められています。また、並行して、世界最大流量(3,000リットル/分)を有する液体金属リチウムの流動試験装置を大洗研究開発センターの協力を得て、2011年に完成させました。
　そして、様々な機能試験を段階的に実施し、最近、凹面形状の背面壁に沿って流れる幅100mm・厚さ25mmの自由表面リチウムを、秒速20mという高速で安定に生成することに世界で初めて成功しました。本成果は、自由表面リチウム流に重陽子ビームを入射し中性子を発生させる加速器駆動型の中性子源の開発を大きく前進させるものであり、BA活動のもと核融合炉材料開発に必要な高エネルギー・高密度の中性子源の開発が着実に進展していることを示す成果です。

なお本研究成果は、平成25年2月22日にプレス発表されました。詳しくは以下のHPをご覧ください。
　 http://www.jaea.go.jp/02/press2012/p13022202/index.html

（核融合研究開発部門　IFMIF照射・試験施設開発グループ）