独立行政法人日本原子力研究開発機構

平成25年2月22日
独立行政法人日本原子力研究開発機構

世界最大流量を有する液体リチウム流動試験装置にて高速自由表面流を実証
−核融合炉材料開発に必要な中性子源の開発が大きく前進−

【発表のポイント】

独立行政法人日本原子力研究開発機構(理事長 鈴木篤之、以下「原子力機構」という。)は、欧州と共同で進める幅広いアプローチ(BA)活動1)において、世界最大流量を有する液体金属リチウムの流動試験装置を建設し、凹面形状の背面壁に沿って流下する幅100mm・厚さ25mmの自由表面リチウム2)を、秒速20mという高速で安定に生成することに世界で初めて成功しました。本成果は、自由表面リチウム流に重水素ビームを入射し中性子を発生させる加速器駆動型の中性子源の開発を大きく前進させるものであり、BA活動のもと核融合炉材料開発に必要な高エネルギー・高密度の中性子源の開発が着実に進展していることを示す成果です。

核融合炉の材料開発には、核融合反応で生成される中性子を模擬した高エネルギー・高密度の中性子源が必要です。そのため、国際核融合材料照射施設(IFMIF)3)の建設が検討されています。IFMIFでは、高エネルギーに加速した重水素ビームを、幅260mm・厚さ25mmの自由表面リチウム流に入射し中性子を発生させる計画です。そこでは、液体リチウムを凹面形状の背面壁に沿って秒速15mという高速で安定に流すことにより、リチウム流内の圧力を遠心力で高め重水素ビームの入熱による沸騰を防ぎつつ、リチウム流の循環で除熱します。これにより、固体では不可能な入熱時の形状維持を可能とし、定常な中性子源を実現します。これまで、小流量の試験装置において基礎的な実験を行ってきましたが、大流量では高速になるほどリチウム流が不安定になりやすいため、実規模での高速自由表面流の実証が課題となっていました。

今回建設した装置では、水を用いた模擬試験や小流量試験など、大学等と行ってきた共同研究によって積み重ねてきた基礎技術を発展させ、大流量でもリチウム流を安定化させるための最適な流路形状を明らかにし、高精度加工で最適形状を実現しました。その結果、IFMIFと同じ厚みの自由表面リチウム流を、想定流速を上回る秒速20mで安定に生成することに成功しました。

以上

参考部門・拠点:核融合研究開発部門

戻る