安全と環境への取組み

施設の安全性

再処理施設の安全性について

再処理廃止措置技術開発センターでは、原子力発電所で使用した核燃料(使用済燃料)から、燃え残ったウランと新しくできたプルトニウムを分離、回収する、再処理技術の開発に取り組んできました。このウランとプルトニウムは、核分裂をする性質を持っているため、これらを取り扱う上で、臨界事故を防止するための対策が必要となります。また、再処理の工程で、有機溶媒という油など、可燃性の物質を使用する必要があることから、火災や爆発を防止する対策も重要です。この他、停電対策、放射性物質や放射線の漏洩の防止も行っています。

また、福島第一原子力発電所事故以降の安全性向上対策については、再処理廃止措置技術開発センターの紹介ページをご覧ください。

臨界事故を防止するための対策

臨界を防止する方法には、濃度や質量の制限、設備等の形状の制限、中性子吸収材の使用といったものがあります。再処理施設では、それぞれの工程に応じて、これらの方法を取り入れた対策を行っています。

臨界にならない条件

JCO臨界事故の際、臨界発生の確認や臨界の終息に時間がかかりました。再処理施設では、臨界の発生を速やかに発見するため、中性子検出器や臨界警報装置を施設内に設置しています。また、万が一臨界が発生した場合には、速やかに臨界が発生した容器からウランやプルトニウムの溶液を抜き取って臨界を停止させるとともに、再び臨界が起きないように維持するため、中性子吸収材の注入などを実施します。再処理施設では、これらの作業を遠隔操作で行うことが可能です。


中性子検出器(臨界で発生する中性子を検出します)

火災爆発を防止するための対策

ウランやプルトニウムを分離し、精製する工程では、有機溶媒(油)の漏れと引火などが想定されます。そのため、有機溶媒を扱う部屋(セル)では、電気機器の使用をなるべく避け、腐食に強い材料の使用により有機溶媒の漏れを未然に防ぐとともに、速やかな漏れの検知と回収ができる仕組みを導入しています。また、引火点が高い有機溶媒を使用し、工程上温度を上げる必要がある場合でも引火点より低い温度で実施しています。万が一火災が発生した場合は、セル内火災温度検知器によって速やかに火災を検知し、水噴霧設備等の消火設備による消火を行います。


消火設備

停電を防止するための対策

再処理施設に必要な電力は、外部の2系統の電源から供給されています。また、非常用の発電機が備えられているので、万が一、外部の2系統の電源が両方とも停止した場合でも、30秒以内に非常用の発電機が作動し、電気を供給することが可能です。非常用の発電機は2つ設置されており、一方が作動しない場合は自動的に切り替わります。電源供給の信頼性を向上させるため、定期な試験、検査、点検、保守により機能の確認、維持を行っています。

放射性物質や放射線を施設外に漏らさないための対策

臨界、火災・爆発、停電の発生、また機器や配管等の破損などが発生しても、放射性物質や放射線が施設の外へ漏れ出さないよう以下の対策を行っています。

  • 放射性物質を扱う機械や設備は、全てステンレス製の内張り、厚いコンクリートの壁、二重底になった部屋(セル)に入っており、放射線は閉じこめられます。
  • タンクや配管には腐食に強い材料を使用するなど、装置から放射性物質が漏れない構造となっています。
  • 建物内の気圧を内部に行くにしたがって低くし、空気が汚れても外にでないようにしています。(空気は気圧の低い方に流れます。)
  • 建物内で出た気体や液体は、処理装置により放射性物質を出来るだけ取り除き、安全が確認されてから放出されます。

放射性物質や放射線を施設外に漏らさないための対策

プルトニウム燃料技術開発センターでは、再処理技術開発センター等で回収されたプルトニウムを使い、「常陽」や「もんじゅ」等の高速増殖炉で用いるMOX燃料(モックス燃料:プルトニウムとウランの酸化物を混ぜ合わせて作った燃料)の技術開発に取り組んでいます。このMOX燃料は、既に商用発電に利用されているウラン燃料と違い、燃えるウラン(ウラン235)のかわりにプルトニウムを使います。

MOX燃料の概念図

このプルトニウムは、ウランに較べて放射線や熱を出しやすく、またウランよりも少ない量で臨界に達しやすいといった特徴を持っています。このため、MOX燃料を扱う上で、「被ばく対策」、「発熱対策」、「臨界事故対策」が必要となります。さらにプルトニウムは、「核兵器への転用防止対策」も重要です。

被ばくを防ぐための対策

放射線による被ばくは、大きく分けて「内部被ばく」と「外部被ばく」とに分類されます。プルトニウムを吸い込むなどの場合は内部被ばく、プルトニウムから放出される放射線が体の表面にあたる場合は外部被ばくとなります。 内部被ばくを防ぐ対策として、作業員がプルトニウムを吸い込むようなことがないよう、プルトニウムはグローブボックスと呼ばれる密閉容器の中で取扱っています。

被ばくを防ぐための対策

グローブボックスは、ゴム製の手袋を取り付けた箱型の包蔵設備であり、万一、グローブが破れるようなことがあってもプルトニウムが外に出てこないよう、グローブボックスの中の気圧を外側よりも低くしています。
一方、外部被ばくを防ぐ対策としては、設備の自動化や遠隔化を進めるとともに、グローブボックスの部品に放射線を通し難い材料を使用するなどを行なっています。

放射性物質を施設外に漏らさないための対策

施設の外に放射性物質が漏れ出さないようにするため、グローブボックス(1つ目の壁)、工程室の壁(2枚目の壁)、施設の外壁(3枚目の壁)からなる、3重の壁で放射性物質を閉じ込めています。また施設の気圧を内側に行くほど低くし、万一の場合でも放射性物質が施設の外に漏れ出さないようになっています。

放射性物質を閉じ込める3重の壁

熱を逃がす工夫

プルトニウムは、原子核崩壊の際に発生するエネルギーにより自然に発熱するため、MOX燃料の粉末を運ぶ容器や、粉末を一時的に貯蔵する容器には冷却フィンを取り付けるなど、熱を逃がしやすい工夫をしています。

MOX燃料の粉末を運ぶ容器の仕組み

臨界事故を防ぐための対策

臨界を防止する有効な方法の一つは、取り扱う核燃料物質の量を制限することです。プルトニウム燃料施設では、制限量以上のプルトニウムを一度に取り扱わないよう、その重量を測定、管理しています。また、グローブボックスの搬出入口のシャッタおよび核燃料物質の搬送設備は、中央管理設備及び工程側情報の両方から運転を管理しており、全ての条件が揃わなければ物理的に核燃料物質の移動ができない機構となっています。

核物質の核兵器等への転用を防止するための対策

プルトニウムやウランなどの核物質が勝手に持ち出されたりしないよう、施設への出入りは厳しく管理しています。さらに、施設への侵入を防止するための、様々な工夫をしています。また施設は、国際機関(IAEA)による査察を受けており、核物質が平和目的にのみ利用されていることが確認されています。

盗難などから核物質を守るための対策