1_8_7 地温勾配および熱特性の深度分布
達成目標

地下施設の建設に先立って,地下空洞周辺の力学・水理状態把握のための基礎的な情報として,地温に関するデータを収集し,以降の調査や解析のための基礎的な情報として整理することを目標とします。

方法・ノウハウ

①データセット:

地温の深度分布については,物理検層データのうち,温度検層の結果から得られます。岩盤の熱物性はボーリングコアを用いた熱物性試験によって把握されます。

②データの解釈:

取得した情報を全国平均値(3℃/100m)と比較することにより,地温勾配の特徴を把握することができます。

サイトスケール領域における調査においては,地温勾配や熱特性の測定はローカルスケール領域程度の範囲で数箇所程度測定すればおおむねサイトスケールおよびブロックスケール領域においても適用できるデータを採取することが可能です。

東濃地域における実施例

地下の温度環境については,サイトスケールおよびブロックスケール領域における既存情報を用いた調査・解析では,地下の温度環境の基本的な情報として,正馬様用地内の深層ボーリング孔(MIUシリーズ孔)における温度検層およびボーリングコアを用いた熱特性試験(熱伝導率,比熱,線膨張係数)を用いました。この結果,正馬様用地の地温勾配の平均値は2℃/100mとなり,ローカルスケールにおける地温勾配と一致する結果が得られました(図1)。また,熱特性についても,ローカルスケール領域と同じ分布となりました(図2)。

これより,地温勾配や熱特性はローカルスケール程度の範囲において数箇所程度を測定すれば,サイトスケールおよびブロックスケール領域においても適用できるデータが採取可能であることがわかりました。

MIU-1~3,AN1,3,4号孔の深度0での平均地温は14℃,深度1,000mでの平均地温は36度と直線的に上昇している。
図1 温度検層の結果1)
縦軸が頻度,横軸が各物性値をとった棒グラフで表現されている。白抜きが文献データ,塗りつぶしなしの赤枠がDH-6~8(広域調査),黄の塗りつぶしが正馬様用地のデータ。頻度のピークを正馬様用地/DH-6~8/文献データの順に示すと以下のとおり。熱伝導率[Wm/K/]:3.5/3.5/3,比熱[kJ/kg/K]:0.95/0.6・0.8・0.9/1.05,線膨張係数[10-5/K]:0.9/1.0/1.5。
図2 正馬様用地内の熱物性値の頻度分布
文献調査のデータは佐藤ほか2), 3)を引用
参考文献
  1. 核燃料サイクル開発機構 (2005): 高レベル放射性廃棄物の地層処分技術に関する知識基盤の構築-平成17年取りまとめ- -分冊1 深地層の科学的研究-,核燃料サイクル開発機構,JNC TN1400 2005-014,415p.
  2. 佐藤稔紀,石丸恒存,杉原弘造,清水和彦 (1992): 文献調査による我が国の岩石の物理的特性に関するデータの収集,動力炉・核燃料開発事業団,PNC TN7410 92-018,46p.
  3. 佐藤稔紀,谷口航,藤田朝雄,長谷川宏 (1999): 文献調査によるわが国の岩石の物理的特性に関するデータの収集 (その2),核燃料サイクル開発機構,JNC TN7400 99-011,36p.

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