1_4_1 地下水位観測
達成目標
地下深部の動水勾配に影響を与えている地表付近の地下水位分布を把握することを目標とします。
方法・ノウハウ
①データセット:
地表から掘削されたボーリング孔の水位を観測します。地下水位は帯水層によって異なると考えられるため,水位観測を実施するボーリング孔の口元標高,掘削深度,地質・地質構造,ストレーナ深度,井戸仕上げの状況などの情報を事前に把握し,各ボーリング孔において同一帯水層の地下水位が観測できることを確認する必要があります。
②データの解釈:
地下水位分布は,地表から掘削されたボーリング孔の水位をもとに流線網を作成することで把握することができます。しかしながら,地下水位の観測結果のみから地下水位分布を把握するためには,調査領域全体に地下水の流動方向に沿った複数のボーリング孔が必要となるため,ローカルスケール領域を対象とした場合には多数のボーリング孔が必要になると考えられます。一方で,地下水位の分布は地形形状に支配されていると考えられることから,地形勾配を用いて地下水位分布を推定する方法も有効であると考えられます。
地下水位は,季節による降水量の違いなどによる季節変動が生じるものの,1年単位で見た場合の変化(年平均水位の変化)は小さいと考えらます。
東濃地域における実施例
地下水位分布については,ローカルスケール領域およびその周辺において掘削長30m程度のボーリング孔を約70本掘削して(図1)地下水位を観測しました1-4)。また,既存情報として道路建設工事中などに測定された地下水位に関する情報を収集しました5)。
表層でのボーリング孔における地下水位測定の結果,図2に示すように地下水位標高とそれを計測したボーリング孔の地表標高に良い相関性があることが確認でき6),地下水位分布の大局的な傾向を把握することができました。また,地下水位モニタリングの結果,年平均の地下水位変動は少なく,ほぼ一定の水位であることが確認されました(図3)。この結果から,ローカルスケール領域における大局的な地下水位の分布は地形形状に支配されていることが確認され,地形勾配を把握することでローカルスケール領域における大局的な地下水分布を推定できることが明らかとなりました。



参考文献
- 久田司, 三輪章, 平川清純 (1997): 試錐調査による表層の水理地質構造の把握 (その1), 動力炉・核燃料開発事業団, PNC TJ7409 97-003, 95p.
- 久田司, 三輪章,今井弘,平川清純 (1998a): 試錐調査による表層の水理地質構造の把握 (その2),動力炉・核燃料開発事業団,PNC TJ7409 98-001,254p.
- 久田司,三輪章,今井弘,平川清純 (1998b): 試錐調査による表層の水理地質構造の把握 (その3),動力炉・核燃料開発事業団,PNC TJ7409 98-002 91p.
- 久田司,三輪章,平川清純 (1999): 試錐調査による表層の水理地質構造の把握 (その4),動力炉・核燃料開発事業団,PNC TJ7440 99-009,290p.
- 斎藤庸,坂森計則 (2000): 広域地下水流動解析対象地域における地下水位データ整理業務,核燃料サイクル開発機構,JNC TJ7440 2000-010,387p.
- Saegusa, H., Inaba, K., Maeda, K., Nakano, K. and McCrank, G. (2003): Hydrogeological modeling and groundwater flow simulation for effective hydrogeological characterization in the Tono area, Gifu, Japan, In: Nishigaki and Komatsu (Eds), Groundwater Engineering, pp.563-569.