1_1_2 不連続構造の調査・解析
達成目標

評価対象領域周辺の広域的な地下水流動に大きな影響を及ぼすと考えられる大規模な不連続構造の把握を目標とします。不連続構造の調査結果は,リージョナルスケール領域の地質構造モデルを構築する際の基本情報となります。

方法・ノウハウ

①データセット:

リージョナルスケール領域を対象とした調査段階では,地質環境に関する情報は文献などの既存情報が主体となります。大規模な不連続構造を評価するための有効な既存情報としては,公的機関発行の地形図,地質図,活断層分布図,衛星画像,広域的な物理探査データ(重力図,空中磁気図)などがあります。

②データの解釈:

広域的な地下水流動に影響を及ぼすと考えられる不連続構造としては大規模な断層があげられます。そのため,上記の既存情報を基にリージョナルスケール領域内に分布する不連続構造を抽出することが基本となります。データ解釈の手順は以下のとおりです。

東濃地域における実施例1-3)

リージョナルスケール領域(約50km四方)を対象として,衛星画像によるリニアメント解析や既存の重力探査結果を使った解析を実施した結果,以下のようなことを明らかにできました。これらの情報は,リージョナルスケール領域の地質構造モデルを構築する際の基本情報として活用しました。

左:LANDSAT衛星が取得した衛星画像(LANDSAT画像)に活断層の位置を重ねたもの。画像範囲は約5 km四方。右:LANDSAT画像から判読リニアメントのみを抽出し,活断層の位置を重ねた図。LANDSAT画像から判読したリニアメントが既存の活断層の分布と一致している。画像範囲は約50km四方。
図1 LANDSAT画像とリニアメント判読図
活断層に囲まれた領域ごとに作成したリニアメントの長さのローズダイアグラム。研究所用地は,北西の白川断層,北東の赤河断層,南東の屏風山断層,南西の華立断層によって囲まれており,NW方向とNE方向のリニアメントが卓越するが,例えば赤川断層の北側ではEW方向のリニアメントが卓越している。
図2 活断層に囲まれた領域ごとのリニアメント長さのローズダイヤグラム
参考文献
  1. 小出馨,柳澤孝一 (1994): リニアメント分布特性による広域地下水流動調査領域の検討,地質調査所研究,第229回プログラム,p.3.
  2. 小出馨,中野勝志,竹内真司,濱克宏,松井裕哉,池田幸喜,長谷川健,杉原弘造,武田精悦 (2000): 広域地下水流動研究の現状-平成4年度~平成11年度-,核燃料サイクル開発機構,JNC TN7400 2000-014,83p.
  3. 太田久仁雄,佐藤稔紀,竹内真司,岩月輝希,天野健治,三枝博光,松岡稔幸,尾上博則 (2005): 東濃地域における地上からの地質環境の調査・評価技術,核燃料サイクル開発機構,JNC TN7400 2005-023,373p.
  4. 動力炉・核燃料開発事業団 (1987): 航空写真等による水理地質構造の解析,核燃料サイクル開発機構,JNC TJ7440 2001-009.
  5. 活断層研究会編 (1980): 日本の活断層-分布図と資料-,東京大学出版会.
  6. 活断層研究会編 (1991): 新編日本の活断層-分布図と資料-,東京大学出版会.
  7. 200万分の1活断層図編纂ワーキンググループ (2000): 200万分の1日本列島活断層図-過去数十万年間の断層活動の特徴-,活断層研究,Vol.19,pp.3-12.
  8. The Gravity Research Group in Southwest Japan (Representatives: Shichi, R. and Yamamoto, A. (2001): Gravity Measurements and Database in Southwest Japan, Gravity Database of Southwest Japan (CD-ROM), Bull. Nagoya University Museum, Special Rept., No.9.

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