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燃料デブリの特性把握

冷却材の喪失により原子炉燃料が溶融し、原子炉構造材や制御棒と共に冷えて固まった「燃料デブリ」は、圧力容器内のみならず格納容器下部にまで広範囲に存在していると推測されます。この燃料デブリを安全に効率よく回収し、保管・管理あるいは処理・処分するためには、その特性を把握し、適切な取り扱い方法を検討する必要があります。

燃料デブリの特性の把握と処置に向けた基盤データの取得pageTop

◎ 目的

溶融した燃料ペレットは、被覆管成分のジルコニウム以外に、原子炉構造材のステンレス鋼、コンクリート、制御棒材料、さらには冷却のために注水された海水成分等と反応し、その反応の際の雰囲気条件に応じて様々な化学形態を持つと予想されます。これらの回収方法等を検討するためには、その化学形、相、組織、密度、混在状態といった物理的・化学的性状を把握することが重要となります。

◎ 技術開発

実際の燃料デブリが採取されるまでには今後数年を要すると見込まれているため、まずはその混合物、生成条件等を模擬した「模擬デブリ」を作製、分析を行うことにより、燃料デブリの特性データベースを拡充します。加えて、原子力科学研究所に保管されているスリーマイル島原発事故時の燃料デブリの分析も行い、回収、保管、処理のための技術開発へ情報を提供します。

また、模擬デブリの作製にあわせて、その分析のための処置方法の検討も行なっています。分析対象となる燃料デブリの中には、従来の溶解方法が適用できないものも含まれると予想されるため、従来技術の適用可否について評価を行ないます。

◎ 技術開発を行なっている施設等

・ホット試験施設

生成条件の異なる模擬デブリの組織例
生成条件の異なる模擬デブリの組織例

溶解が難しい模擬デブリのアルカリ処理後の外観
溶解が難しい模擬デブリのアルカリ処理後の外観

この技術開発は廃止措置等に向けた中長期ロードマップのうち、以下の課題解決に貢献しています。

  • ・(2-③-1) 模擬デブリを用いた特性の把握
  • ・(2-③-3) デブリ処置技術の開発

燃料デブリの再臨界の防止pageTop

◎ 目的

炉心溶融の際には、核分裂連鎖反応を止める役割を果たす制御棒も同時に壊れ、燃料デブリとともに本来の位置から動いていると想定されています。この燃料デブリは、水中において破砕した後、取り出し、保管・管理されることになりますが、このときの状態変化により、再び核分裂連鎖反応(=再臨界)が起きる可能性が示唆されています。

一方で、ジルコニウム、鉄、コンクリートなど様々な物質が核燃料と溶融・混合した燃料デブリの臨界挙動は、未だ十分な研究がなされておらず、その取り扱い時における再臨界のリスク評価やそれ自体を防止する確実な対策が必要不可欠です。

◎ 技術開発

多様な組成をもつ燃料デブリそれぞれについて、想定される状態変化に応じた臨界量を計算し、どのような作業時にどの程度の再臨界リスクがあるのかを評価しています。さらに、リスクの高い作業について、対策を講じた上でもリスクがゼロにならない場合の安全策として、再臨界を未然に感知する監視技術の開発を並行して進めています。

また、これらの検討結果を実際の燃料デブリ取り扱い作業に適用するには、その信頼性を実証することも重要です。そのため、臨界実験装置と呼ばれる小型の原子炉にて模擬デブリの臨界量を実験により確認し、信頼性の高い臨界防止対策を検討します。

◎ 技術開発を行なっている施設等

臨界防止の考え方
臨界防止の考え方

臨界実験装置による模擬デブリの臨界量測定(概念図)
臨界実験装置による模擬デブリの臨界量測定(概念図)

この技術開発は廃止措置等に向けた中長期ロードマップのうち、以下の課題解決に貢献しています。

  • ・ (2-①-9) デブリの臨界管理技術の開発

燃料デブリの計量管理方策pageTop

◎ 目的

日本は国際原子力機関(IAEA)と保障措置協定を締結しており、核燃料物質等が軍事転用されていないことをIAEAを通じて国際的に示す責務があります。一方で、炉心溶融により生成された燃料デブリは、様々な物質が混合された不定形な塊であると考えられるため、事故前のような通常の計量管理手法を用いることができません。

◎ 技術開発

過去の類似事故であるスリーマイル島原子力発電所事故とチェルノブイリ原子力発電所事故における核物質の計量管理に関する調査を行い、福島第一原発の状況との比較検討を行った上で、燃料デブリに適した計量管理手法を検討していきます。

また、得られた情報から燃料デブリへの適用可能性のある技術を抽出するとともに、新たな測定装置を開発し、燃料デブリへの適用性について実験等による確認を行なっていきます。

固体シンチレーション中性子検出器を用いた検査装置
固体シンチレーション中性子検出器を用いた検査装置

この技術開発は廃止措置等に向けた中長期ロードマップのうち、以下の課題解決に貢献しています。

  • ・(2-③-1) 燃料デブリに係る計量管理方策の構築
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