査察
査察とは、国際保障措置上はその対象となる核物質および原子力活動が保障措置協定の規定に従って使用され、実施されていることを検認するための一連の現場作業のことで、国内法上は保障措置協定で規定されている国際約束および各事業者が施設ごとに定める計量管理規定の遵守状況を確認する立ち入り検査のことを言います。そのため国内的には保障措置検査と言われています。
査察では、以下のようなことが行われています1。
- 帳簿検査:施設に保管されている計量管理記録の内容と、国とIAEAに報告された内容がきちんと合っているかどうかを、施設を訪問して確認します。
- 員数勘定:施設の計量管理記録に記載されているものが実際にその施設に存在するかどうかを、施設を訪問して確認します。
- 現場測定:核物質が記録通り存在するかどうか、査察者側が持ち込んだ非破壊測定器により帳簿通りの核物質であることを検査し、確認します。
非破壊測定とは、測定対象に有意な物理的又は化学的な影響を与えないで、測定対象中の核物質の量、元素、又は同位体含有率を測定する手法です。これは一般的に測定対象からの放射線の放射又はその応答を観測し、かつ当該放射又は応答と、化学分析によりその量が測定されている本質的に類似の単位体を用いた較正結果と比較することにより実施されます。非破壊測定には大きく分けて二つの分類があり、一つは、パッシブ・アッセイで、中性子、ガンマ線の自発放射又は全崩壊エネルギーの測定です。もう一つはアクティブ・アッセイで、誘導放射(例えば、中性子又は光子による誘導核分裂)の測定です。
- 試料収去:核物質の成分が記録通りであるか否かを確認するため、少量のサンプル(試料)を採取します。採取したサンプルは、保障措置分析所で化学分析にかけます。
- 監視カメラの設置・封印の適用等:施設には核物質の取り扱いを監視するためのカメラなどが設置されており、カメラが捉えたデータで監視の結果を確認します。また査察の際には、装置の保守を行っています。さらに、施設内の核物質が動かされた場合でも分かるように、そしてカメラなどに細工されないように封印を取り付け、査察の際にその封印をチェックします。

国及びIAEAの査察官による帳簿の検査

燃料集合体中のプルトニウム量の測定

UF6シリンダー中のウランの濃縮度の測定

査察者側が持ち込んだ標準分銅で施設者側の重量計を確認後、施設の秤を使って重量を検査・確認

監視カメラを設置し、核物質の動きを監視
1 参考:科学技術庁パンフレット