規制対象施設の核セキュリティ評価手法の確立の調整研究のキックオフ会合(IAEA CRP (J02004))参加報告
2013年4月8日から12日までの5日間オーストリア・ウィーンの国際原子力機関(IAEA)本部にて、規制対象施設の核セキュリティ評価手法確立(NUSAM)の調整研究(CRP)キックオフ会合が行われた。JAEAから3名参加したので報告する。なお、本会合は、手続き面等を考慮して、今後はCRPではなく技術会合として行い、名称もNUSAMではなく、規制された施設に対する核セキュリティ評価ツールの確立(NUSAT)という名称で活動していくこととなった。
このプロジェクトの主な目的は、IAEAの核セキュリティシリーズに沿った形で、リスク情報を活用した手法と性能基準に基づく手法のリスク評価ツールを完成させ、培われた知識や経験を事例研究(ケーススタディ)等、具体的な形で共有していくことである。このプロジェクト以前には国家という観点から核セキュリティ体制のリスク管理及び国家管理の自己評価手法の開発というCRPが実施された。今回のCRPでは施設の観点からリスク評価手法を開発することが目的とされており、前回のCRPとの差異、重複する点等について多くの議論があった。
会合参加者は20人。日本からの参加者はJAEAからの3名。その他の参加者はオーストラリア、ベルギー、チェコ、ハンガリー、韓国(2名)、オランダ、パキスタン、ロシア、スウェーデン、イギリス、アメリカ(5名)、欧州委員会(EC)であった。
本プロジェクトは、全体的な調整を行うグループCoordinating Group (各WGリーダーと議長で構成)を頂点として、評価の実施に必要な情報は何かを調査するEssential Information WG, 評価手法とツールを開発するAnalysis WG,それから具体的な施設等への適用について議論するSecurity Case Study WG(原子力発電所、LEU燃料製造施設、使用済燃料貯蔵施設、RI照射施設、輸送)の3つの核となるグループから構成され、初年度はEssential Information WGとAnalysis WGが活動を行い、その成果を基に2年目からSecurity Case Study WGを立ち上げ、3年目には核セキュリティ評価ツールを確立する予定である。参加者はまずEssential Information WG、Analysis WGのどちらのWGに参加するかを決めた。次回会合においてSecurity Case Study WGが対象とする5つの施設(原子力発電所、低濃縮ウラン(LEU)燃料製造施設、使用済燃料貯蔵施設、放射性同位体(RI)照射施設、輸送)のサブグループの何れかに参加することになる。事務局から各WGの概要が説明された後、各WGへ分かれて議論を行った。
Essential Information WGの役割は、評価の実施に必要な情報は何かを調査することであり、主に2つの作業が行われる。一つ目は条約、規則、ガイドライン等々より、評価を行うにあたり重要な項目、情報を抽出すること、二つ目は評価を行う対象である仮想の国『Fredonia』に関する情報を作成することである。その後、これら作業で得られた情報を、Analysis WGに提供し、逆にAnalysis WGからの要請に基づき必要な情報を収集又は作成することになる。今後、必要な情報を抽出していく作業を進め、報告書案を準備するとともに2年目より他WGとの協力を開始、3年目には報告書を完成させる予定である。
Analysis WGの役割は、評価手法とツールを開発することであり、原子力発電所及び防護区分Ⅰの燃料サイクル施設と、放射性同位体線源などを扱うセキュリティ事案が発生したときに放射線影響がそれほど大きくならない単純なセキュリティシステムを有する施設に対するものの2つを対象とすることになった。まずは前者についての評価に係るガイダンス文書を作成することになり、問題定義と活動範囲、方法論、評価尺度(メトリクス)、構成、ユーザの要求の5つの内容についてサブグループに別れて具体的な議論を行った。今会合ではさらに3つのグループに分かれ議論した。「問題定義と活動範囲、構成サブグループ」は文書の基本構成を決め、「方法論、メトリクスサブグループ」は2010年に南アフリカ共和国で行われたIAEAの脆弱性訓練コースを基に文書を作成していくこと、「ユーザの要求サブグループ」は、異なるレベルの施設職員とセキュリティ評価を行うために必要な情報などについて決めていくことなった。本WGは、今後、本WGで評価すべきソフトウェア及びツールの洗い出しを行う予定である。単純なセキュリティシステムを有する施設に適用するための文書作成も、次回会合で開始始する予定である。2年目より他WGとの協力を開始、3年目にはツールの完成を目指す予定である。