会議報告:「核鑑識に関する国際ワークショップ」
(International Workshop on Nuclear Forensics Following on Nuclear Security Summit)
2010年10月5、6日、テクノ交流館リコッティにおいて、独)日本原子力研究開発機構 (以下、原子力機構)主催の「核鑑識に関する国際ワークショップ」(International Workshop on Nuclear Forensics Following on Nuclear Security Summit)が開催されました。同ワークショップには、核鑑識に関係する国内外の政府機関、国際機関、研究所等から約80名の専門家が出席のもと、核鑑識技術、データベースの現状と課題、国際協力に関する発表と議論が行われました。

2010年4月、米国のオバマ大統領の呼びかけで開催された核セキュリティサミットにて、核テロ対策を強化するために核鑑識技術等に関する情報を国際的に共有することが合意され、また、同サミットにおいて鳩山前総理が、日本は、核鑑識技術を3年以内に確立し、国際社会と共有することを表明しました。これを受けて、本ワークショップは、今後の我が国の核鑑識技術に対する取り組みを議論するとともに、関係者間の情報共有を図ることを目的として開催されました。
ワークショップの冒頭、原子力機構核不拡散科学技術センター(NPSTC)の千崎雅生センター長の歓迎あいさつ、文部科学省核不拡散・保障措置室木村直人室長より開会あいさつがあり、本ワークショップにおいて、核鑑識技術に関する関係者間での情報共有が図られ、今後の開発の方向性に関する活発な議論が行われることを期待するとの発言がありました。その後、1日目は、核鑑識技術、データベース等に関する発表と議論、2日目の午前は、核鑑識に関して取り組むべき課題、新たな技術開発、データベースの作成、国際協力等に関するパネル討論が行われ、2日目の午後には、出席者を対象に原子力機構の大強度陽子加速器施設(J-PARC)及び高度環境分析研究棟(CLEAR)の見学が行われました(会議アジェンダおよび発表資料はhttp://www.jaea.go.jp/04/iscn/activity/2010-10-05/index_en.htmlを参照)。
1日目の発表では、原子力機構から、核鑑識に貢献可能な技術分野について発表を行い、米国ホームランドセキュリティー省より、米国の核鑑識対応の体制、核鑑識技術の開発状況についての説明があり、続いて、核鑑識に対する国際的な取り組みを行っている「核テロに対抗するグローバルイニシアティブ(GICNT)」、「核鑑識に関する国際技術ワーキンググループ(ITWG)」、「国際原子力機関(IAEA)」より、各国際イニシアティブ、組織の取り組みについての発表が行われました。

その後、技術セッションでは、欧州共同体超ウラン元素研究所(ITU/EC)、韓国原子力研究所(KAERI)、原子力機構、ロスアラモス国立研究所(LANL)、ローレンスリバモア国立研究所(LLNL)、連邦調査局(FBI)から、核鑑識に関連する分析技術、核鑑識データベース、国内法執行上の課題に関する発表が行われ、活発な議論がなされました。
2日目は、「核鑑識を支える技術」、「情報と協力」をテーマに、核鑑識に求められる情報、技術、手順、データベース、国際協力に関するパネル討論が行われ、多様な分野の専門家から核鑑識の今後の方向性等に関する意見が出されました。
本ワークショップは、核鑑識に焦点を当てた、国内で開催された最初の会合であり、核鑑識に関連する国際機関、国際イニシアティブの関係者に加え、核鑑識技術、データベースの専門家、法執行担当者が参加し、発表やパネル討論を通じて、本分野の相互理解を深めるとともに、今後の核鑑識技術の方向性に関する有意義な議論が行われることができました。
原子力機構は、今回のワークショップの成果を、核鑑識技術の確立に向けての今後の取り組みに反映させるとともに、これらの取り組みを通じて、国際的な核テロ対策の強化に貢献していく予定です。