平成30年10月12日(金)更新
深度350m調査坑道では、これまでに健岩部(岩盤中に割れ目がない領域)や割れ目を対象とした地下での物質の動きを把握するための試験を行ってきました(平成29年1月20日掲載記事、平成27年9月11日掲載記事など参照)。
昨年度に開始した層理面*1の影響や割れ目の存在が物質の拡散に与える影響を検証するための拡散試験(平成30年1月26日掲載記事参照)を終了し、平成30年10月11日より、トレーサー*2が岩盤中をどのように移行しているかを評価するための、岩石試料の採取を開始しました。
写真1は岩石試料の採取のために、掘削を行っている状況です。今後は順次、岩石試料の採取を行うとともに、採取した岩石試料内のトレーサー濃度を測定し、岩石中でのトレーサーの移行挙動について分析する予定です。
*1 層理面とは…
地層を構成している層と層の境界面をいいます。
*2 トレーサーとは…
地下水の流れの方向や流れる時間などを調べるために、地下水に目印として混ぜる染料やその他の薬品を指します。なお、幌延深地層研究センターでは環境に影響のない一般的な試薬を用いており、放射性物質を目印としてまぜていません。
写真1 岩石試料採取のための掘削状況
(場所:地下施設深度350m調査坑道)
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平成30年10月12日(金)更新
平成30年9月25日から28日の日程で、地下施設内において今年度の地下水水質分析のための採水・測定作業を行いました。水質分析は、地質環境モデルに関する調査・解析技術の開発の一環として、主に地下水の地球化学に資する基礎データを取得するために、毎年実施しています。地下水は、換気立坑や東立坑の壁面に設置された集水リング*1や、坑道内で掘削されたボーリング孔から採水しました。また、地下水の採水時に地下水のpHや電気伝導度*2、酸化還元反応*3に敏感な第一鉄イオン濃度などをその場で迅速に測定しました(写真1)。その他の溶存イオン種濃度などは、採水した地下水を地上へ持ち帰り、分析室において分析します。
*1 集水リングとは…
立坑内で、坑壁から染み出した地下水を回収・採取するために、立坑壁面に30〜40mごとに設置されている設備です。
*2 電気伝導度とは…
電気の通しやすさを表す値で、電気伝導度が大きい(電気を通しやすい)ほど地下水に溶けているイオンの量が多いことを表します。
*3 酸化還元反応とは…
ある反応物間において、電子の授受がある反応のことを言います。この反応では、ある反応物の酸化還元状態が変化します。地下水に含まれる酸素が少ないほど、還元状態であることを表します。
写真1 採取した地下水のpHや電気伝導度測定の様子
(場所:地下施設深度140m調査坑道)
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平成30年10月4日(木)更新
平成30年9月25日(火)~26日(水)、フランスのブローニュ・ビアンクールにあるOECD/NEA*1本部において開催されたClay Club*2の第28回定例会議(写真1)に出席しました。本会議には、ベルギー・カナダ・フランス・ドイツ・ハンガリー・日本・オランダ・スイス・イギリス・米国から30名の研究者らが出席しました。
会議では、各国での調査研究の現状に関する情報交換が行われるとともに、一昨年から開始されたプロジェクトの実施状況と今後の計画について議論されました。幌延深地層研究センターからは、掘削影響評価に関わるセッションにおいて、幌延における調査結果を紹介しました。また、昨年度まで取り組んできた各国の堆積岩のデータセットの更新版(Clay Club Catalogueの更新版)が完成し、早ければ今年度末頃にOECD/NEAの報告書として出版される予定です。
*1 OECD/NEA(経済協力開発機構/原子力機関)とは…
原子力発電を安全で環境に調和した経済的なエネルギー源として開発利用することを加盟諸国政府間の協力により促進する経済協力開発機構(OECD)傘下の国際機関。
*2 Clay Club(クレイ・クラブ)とは…
OECD/NEAの放射性廃棄物管理委員会(RWMC)の下に置かれた常設ワーキンググループの1つであるセーフティーケース統合グループ(IGSC)のプロジェクト。
写真1 会議の様子
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