幌延深地層研究計画は、「地上からの調査研究段階(第1段階)」、「坑道掘削(地下施設建設)時の調査研究段階(第2段階)」、「地下施設での調査研究段階(第3段階)」の3つの段階に分けて進めることとしています。現在は、研究所用地やその周辺において、地下施設の建設、第2段階および第3段階の調査研究を行っています。
このページでは、調査研究の状況をご紹介します。
令和7年6月27日(金)更新
深度500m調査坑道の試験坑道8および試験坑道9では、坑道掘削時に坑道周辺に生じる割れ目の発達領域の推定や、坑道掘削前後の坑道周辺の岩盤の水の通りやすさの変化を調査するために、令和7年6月2日から6月17日にかけて、岩盤中の水の流れやすさを調べる試験(透水試験)を実施しました。
透水試験で用いるボーリング孔は、図-1および図-2に示すように、試験坑道9の側壁面から、今後掘削予定の試験坑道8に向けて掘削しました。透水試験は、ボーリング孔掘削時の調査で確認された割れ目の分布に基づき、「試験坑道9の掘削によって割れ目が発達した区間」、「試験坑道9の掘削前から割れ目が存在する区間」、「割れ目のない区間」の3つの区間を対象として実施しました(図-2)。試験実施にあたり、まずはこれらの3つの区間を区切るために、パッカーと呼ばれる強化ゴム製の栓を所定の深度に設置しました(図-3)。パッカーを目的の深度で膨らませて孔壁に密着させることにより、試験区間を区切ることができます。次に、試験区間に水を注水し、区間内の岩盤の水の流れやすさ(透水係数)を求めるのに必要なデータを取得しました。
今後、解析を進め、試験坑道9周辺の岩盤の水の流れやすさを評価するとともに、弾性波トモグラフィ調査やボーリング孔掘削により得られた岩石コアの観察結果も合わせて、試験坑道9周辺の割れ目の発達状況を評価する予定です。
図-1 試験坑道8および9を対象とした調査用のボーリング孔のイメージ
図-2 透水試験区間の割れ目分布のイメージ図(試験坑道9の入口側から見た断面図)
図-3 透水試験孔にパッカーを挿入している様子
動画 透水試験孔にパッカーを挿入している様子
令和7年6月20日(金)更新
幌延国際共同プロジェクト(HIP)に新たに参加を表明したオーストラリア放射性廃棄物機関(ARWA)*について、6月11日までにメールによる管理委員会での全会一致の承認を受け、6月13日にARWAが協定書に署名し、正式に参加が決定しました。ARWAがどのタスクに参加するかは今後の調整により決定します。
これにより、HIPのフェーズ2の参加機関は原子力機構を含め、7か国10機関となりました。
* オーストラリア放射性廃棄物機関(ARWA:Australian Radioactive Waste Agency)は、オーストラリアにおける放射性廃棄物処分の実施主体です。オーストラリアでは原子力発電を行っておらず、医療施設や産業施設から出される放射性廃棄物を対象としています。
令和7年6月13日(金)更新
令和7年6月5日に幌延国際共同プロジェクト(HIP)の第6回管理委員会がオンラインで開催され、今年度の実施内容やスケジュール、フェーズ1報告書案へのレビュー状況などを確認しました。また、新たに参加を検討している機関についてのOECD/NEAによる手続き状況などについての情報が共有されました。
令和7年6月6日(金)更新
深度500m調査坑道の試験坑道8および試験坑道9では、坑道掘削時に坑道周辺に生じる割れ目の発達領域の推定や、坑道掘削前後の坑道周辺の岩盤の水の通りやすさの変化を調査するために、弾性波トモグラフィ調査*および透水試験を実施します。
これらの調査に先立ち、令和7年4月25日から5月19日にかけて、試験坑道9から、今後掘削する試験坑道8を挟み込む形で弾性波トモグラフィ調査用の2孔のボーリング孔を掘削しました(図-1)。また、透水試験用に、試験坑道8の坑道側壁面に向けてほぼ水平なボーリング孔1孔を掘削しました(写真-1)。
その後、令和7年5月24日から25日にかけて、試験坑道9において弾性波トモグラフィ調査を実施しました。今回は、試験坑道8を掘削する前の岩盤の弾性波速度の情報を得ることを目的とした調査を実施しました。調査では、ボーリング孔の壁面に振動を発生させる機器(発振器)(写真-2)と、発振によって伝わった波をボーリング孔内で受振する機器(受振器)(写真-3)をボーリング孔に挿入して波形データを取得します(写真-4、写真-5)。
今後、取得した波形の分析を進めるとともに、別途実施する透水試験の結果とあわせて、坑道周辺の岩盤の割れ目の発達状況を推定する予定です。
*弾性波トモグラフィ調査
ボーリング孔内の様々な位置から発振した波(打撃により岩盤に伝わった波)を受振し(写真-5)、岩盤内を伝わる波の速度の分布図を作成することにより、坑道周辺の岩盤に生じたゆるみの状態を推定する調査です。今回の調査では、図-1に示す調査領域内部の弾性波速度の情報を得ることを目的としています。
図-1 掘削したボーリング孔の配置と弾性波トモグラフィ調査領域のイメージ
写真-1 透水試験孔の掘削の様子
写真-2 弾性波の発振器
写真-3 弾性波の受振器
写真-4 弾性波の受振器を斜め上向きのボーリング孔内に挿入している様子
写真-5 受振した波形の例
これらの波形から、弾性波が受振器に到達した時間を読み取ることができます。様々な深度で弾性波の到達時間を分析することで、図-1に示す調査領域内部の弾性波速度の情報が得られます。