第12回 原子力機構報告会
「原子力の未来 ―原子力機構の挑戦―」

ふくしまの復興に向けた取組 (テキスト版)

ふくしまの復興に向けた取組
福島研究開発部門 福島研究開発拠点 計画管理室
マネージャー 田中 真

〔パワーポイント映写。以下、場面がかわるごとにP)と表示〕

P) 福島研究開発部門の田中と申します。本日は、「ふくしまの復興に向けた取組」についてお話しさせていただきます。

P) 本日は、最近の情勢といたしまして、福島県の現状、それから福島第一原子力発電所の状況についてお話しした後、原子力機構における研究開発として、廃炉に向けた研究開発、環境回復に向けた研究開発、研究開発基盤の構築についてお話しさせていただきます。

P) まず福島県の現状です。避難指示区域につきましては、本年4月1日の富岡町における避難指示の解除をもちまして、赤色で示す帰還困難区域を除くほとんどの区域について避難指示が解除されました。

また、福島県の人口につきましては、震災前より約14万人ほど減少し、現在190万人ほどとなっております。このうち避難されている方につきましては、現在5万5,000人ほどとなっており、ピーク時の3分の1ほどになっております。

P) 続いて福島県の放射線状況でございます。福島県では、国や自治体によります除染などが、本年3月末までにほぼ終了し、県内の放射線状況につきましては、23年4月に比べ大幅に減少している状況でございます。

P) 続いて、福島第一原子力発電所の状況です。左側にありますのが1号機です。1号機につきましては、事故後に放射性物質の飛散防止のためのカバーが設けられましたが、使用済み燃料の取り出しや燃料デブリの取り出しに向けてこのカバーが撤去されております。今後、この上部にあります瓦れきの撤去などに着手される予定でございます。

続いて右側にあります3号機でございますが、事故の水素爆発により建屋の上部が崩れました瓦れきにつきましては、これまでに遠隔装置などで除去が完了しており、右の写真にありますように、プール燃料の取り出しのためのカバーが設置されているところでございます。

P) 原子炉の内部調査の状況でございます。ごらんの図は、本年7月に3号機において原子炉格納容器の中を水中ロボットにより観察したものでございます。原子炉圧力容器のペデスタルと呼ばれる部分の内部について初めて撮影に成功したものでございます。また、ごらんのように溶融物が固化されたと思われるもの、いわゆる燃料デブリと思われるようなものが初めて観察されました。

今後このような内部調査を継続し、宇宙線を利用したミュオンの測定など、それと組み合わせて炉内の状況を把握することになってございます。

P) 続いて、原子力機構における研究開発でございます。

P) 図は、1Fの廃炉と避難解除のロードマップでございます。1Fの廃炉に向けましては、一番最初に燃料デブリを取り出す動きにつきましては、2019年度内に燃料デブリの取り出し方法を確定することになっております。また2021年内において、燃料デブリの取り出しに着手するという計画になっております。

これらの実現に向け、東京電力を初めとする原子力機構などでも、炉内の状況把握ですとか、燃料デブリの取り出しに向けた遠隔技術等の開発に取り組んでいるところでございます。

また、避難指示区域の解除に向けましては、本年4月をもって帰還困難区域を除く区域についてはほぼ解除されましたが、今後は特定復興再生拠点、いわゆる復興拠点を各自治体で定め、おおむね5年を目途にこの拠点について避難指示を解除するという計画になっております。

P) こちらの図は、1Fの廃炉にかかる役割分担でございます。1Fの廃炉に向けましては、政府が定めます中長期ロードマップ、これに基づき東京電力で廃炉の作業を行っております。

またこの中長期ロードマップにつきましては、現場の状況等を勘案しつつ、見直しながら進めることとしております。図の真ん中にありますNDF(原子力損害賠償・廃炉等支援機構)におきまして、ことしの夏に燃料デブリの取り出し方針が定められました。これを反映して、中長期ロードマップについても第4回目の改定がなされたところでございます。

また1F廃炉に向けた研究開発におきましても、NDFが基礎から実用に向けた研究開発を一元的にマネジメントすることとしており、原子力機構としてはIRID(国際廃炉研究開発機構)のもと、中長期ロードマップに基づく研究開発を実施するとともに、現場ニーズを踏まえた基礎基盤研究に取り組んでいるところでございます。

P) ごらんの図は、福島県内における原子力機構の拠点の図でございます。原子力機構では、事故後の緊急事態に対し、指定公共団体としまして、環境中の放射線モニタリングですとか、放射能測定、住民の方々への質問への対応窓口など、総力を挙げて対応してきたところでございます。

事故後の23年5月には、福島支援本部として福島事故対応に係る組織を立ち上げるとともに、6月には県内で初めて福島市に福島事務所を設け、活動を開始しております。現在では、2つの事務所と4つの研究開発拠点において研究開発を実施しております。

また1Fの隣接地におきまして、大熊分析・研究センターを設立中でございます。

P) これらのセンターにおける取り組みの概要でございます。右にあります廃炉国際共同研究センターにおいては、福島県にあります原子力機構の施設も利用しつつ、みずからも研究開発を行い、それから国際的な研究開発拠点として国内外の研究者が集まる拠点を構築しようとしております。

また国内外の大学、研究開発機関、産業界の人材が交流するネットワークを形成し、産学官における研究開発と人材育成を一体的に進め、1Fの廃炉に貢献しようとしています。

右の下にあります大熊分析・研究センターでは、1Fの構内で発生しております瓦れき、燃料デブリの分析研究のための施設を構築しております。

下の図の楢葉遠隔技術センターでは、事故により破損した原子炉格納容器内下部の漏洩箇所の止水技術を初め、遠隔操作機器の実証、開発を行う場の提供を行っております。

また、左にあります福島環境安全センターでは、事故により環境中に放出されました放射性物質につきまして、除染技術、環境放射線モニタリング、それから環境中の放射性物質の移動、将来予測を行う環境動態研究など、福島の環境回復に係る研究開発を実施しております。

P) 続いて、廃炉国際共同研究センターを中心とした廃炉に向けた研究開発についてお話しいたします。

こちらは、事故により発生した燃料デブリというものがどういうものなのか。事故時の状況を模擬した燃料デブリですとか、スリーマイルアイランドの事故で発生した燃料デブリを用いまして、その性状の調査ですとか試験を行っております。

その結果、機械的な特性ですとか科学的な特性をまとめ、データをリスト化しております。

図で示しておりますのが、フランスの研究機関によります施設で行いました実験の様子でございます。燃料の要素でありますウランですとか被覆管の材料をまぜ合わせ、コンクリートと溶かしてコンクリートとの反応を見た実験でございます。現在この実験により生成しました物質の分析を進めているところでございます。

このようなデータをさらに積み重ね、今後決定される燃料デブリの取り出し方法ですとか、安全管理の方策に向けてデータを提供していきたいと考えています。

P) 続いて、遠隔技術の現場適用でございます。原子炉建屋ですとかタービン建屋などの高線量環境下において、放射線状況を簡単に測定するといった技術を目指し、放射線イメージングの技術を開発しております。

写真にありますように、左側にあります光学カメラにより撮影された画像に、ガンマ線センサーで測定されます放射線の強弱の結果を瞬時にあらわすことができる技術を開発しております。これらについては、本年4月より東京電力の要請により、1号機のタービン建屋内において測定を進めております。今後も、東京電力との協力により、この研究開発を進めていきたいと考えています。また、このようなガンマ線センサーをドローンですとかロボットに搭載し、遠隔で建屋内の詳細な汚染分布を把握できるように開発を進めてまいります。

P) 続いて、福島環境安全センターにおける環境回復に向けた開発の例でございます。原子力機構では、事故以降継続的に、無人ヘリですとか自動車に積みました走行サーベイによりまして、空間線量率の測定を継続的に進めております。またこれらの結果をマッピングするという技術も一緒に進めています。また、モニタリングの実績に基づきまして、地域ごと土地利用ごとに放射線量率の減少傾向を評価してございます。

このような成果につきましては、避難指示区域の解除の方針ですとか、除染範囲の決定、復興計画の策定など、国や自治体の計画決定に貢献しております。また国際学術誌での特集の掲載ですとか、放射能測定マニュアルの改定など、技術的な面でも貢献してございます。

P) 続いて、除染により除去された土壌に関する取り組みでございます。ごらんの写真のように、除染で除去されました土壌や廃棄物につきましては、仮置き場に置かれる、あるいは住宅の敷地に置かれるような状態になっております。これらの除去土壌につきましては、27年より1Fの周辺に設けられました中間貯蔵施設への搬出が徐々に行われ、中間貯蔵施設においては先日本格稼働が開始されたところでございます。

原子力機構では、このように発生した除去土壌について、その性状、発生量、放射線セシウムの濃度から、再生利用量と最終処分量を試算し、環境省が進めます除去土壌の安全な再生利用などの戦略、安全指標の策定、さらには南相馬市で行われました再生利用実証試験での実施において貢献してございます。

P) 続いて、研究開発基盤の構築でございます。1Fの事故で発生しました原子炉格納容器の下部の止水技術など、実規模での実証試験ですとか、個々の遠隔技術開発の要素試験を行うために、楢葉遠隔技術開発センターを整備し、28年4月より本格運営を行っております。

図の左にありますように、国際廃炉研究開発機構におきまして実規模の止水試験を行うほか、全国の13高専、15チームが参加した廃炉創造ロボコン、それから県内の企業によります技術マッチングの場として利用がされており、人材育成、地域の活性化に貢献してございます。

P) 続いて、大熊分析・研究センターでございます。1Fの事故により、多種多様な廃棄物が発生するほか、燃料デブリなども発生しており、これらを安全に処理処分するには、これらの性状を把握する必要があります。この分析研究を行うために、1Fの隣接地に大熊分析・研究センターを建設してございます。事務室や会議室を設けました施設管理棟につきましては、今年度内を目途に運用を開始する予定でございます。また、低線量の瓦れき、水処理廃棄物などを分析する第1棟につきましては、建設を29年4月に開始したところでございます。

今後も、帰還困難区域における施設の建設を着実に実施し、1Fの廃炉に貢献してまいります。

P) 続いて、廃炉国際共同研究センターでございます。1Fの廃炉に向けましては、東京電力、IRIDのほか、大学や研究開発機関における基礎的な研究を取り込む必要があります。このような国内外の大学研究機関との共同研究などによる廃炉の研究ですとか人材育成を一体的に行う拠点として、富岡町に国際共同研究棟を建築し、29年4月より運用を開始しております。

またこの場におきまして、廃炉関連の基礎研究を取り扱います専門家の会合でございます福島リサーチカンファレンスを開催するなど、福島県内で継続的な活動を行っているところでございます。

また大学研究機関における基礎基盤研究を、廃炉の現場に橋渡しする廃炉基盤研究プラットフォームの形成を行い、基礎基盤の技術を廃炉の現場に橋渡しする活動を行っているところでございます。

P) 最後にまとめでございます。原子力機構としては、我が国における原子力に関する唯一の総合的研究開発機関として、国内外の英知を結集し、1Fの廃炉、福島の環境回復に向けた実効的な研究開発を行うとともに、研究基盤の整備を行ってまいります。

1Fの廃炉に向けては、廃炉現場における課題の解決に向けた研究開発に取り組むとともに、基礎基盤研究の成果を1F廃炉の現場に橋渡しする取り組みを行ってまいります。

また福島の環境回復に向けては、環境中の放射性物質の移動量の測定や、将来予測など、実効的な研究開発を行ってまいります。

また1F廃炉に向けた研究開発基盤の整備、運用を適切に行い、1F廃炉の研究の推進、国内外の人材育成ネットワークの構築、さらには地域の活性化に貢献してまいります。

以上でございます。御清聴ありがとうございました。