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原子力機構の“いま-これから”

日刊工業新聞にて毎週金曜日連載中

第37回 あらたなる挑戦 国内初 再処理施設の廃止措置

核燃料サイクル工学研究所 再処理廃止措置技術開発センター
技術部 計画管理課
マネージャー 岡野 正紀(おかの まさのり)
掲載日:2018年11月2日

東海再処理施設の廃止措置は長期にわたるため、その終焉を自身で見届けることは難しい。問題を先送りせず、効率的かつ合理的な方法により、期間の短縮とコスト削減に知恵を絞りたい。

歴史の幕開け

70年、1兆円の超長期にわたる大プロジェクトが始まった。茨城県東海村にある日本初の使用済核燃料再処理施設の廃止措置である。廃止とはいえ、東海再処理施設を構成する30あまりのさまざまな施設を全体的に掌握すると同時に、安全を確保するため細部まで繊細な配慮を要する、未開の地への挑戦とも呼ぶべき魅力あふれる取り組みである。

これを確実に実行するため、国内の先端技術だけでなく、先行技術を有する仏・英・米などの海外機関と密接に連携し、英知を結集しなければならない。そのスタートに立会い、責任の大きさと未知への挑戦に身震いする思いである。

原子炉とは異なり、東海再処理施設の機器内には組成の異なる放射性物質が広く分布している。高線量下における遠隔での機器解体、水中作業用のロボット、放射性廃棄物の安定化などに関する技術開発は、チャレンジングで魅力的なテーマであり、原子力発電所の廃炉にもその成果を生かすことができる。若い技術者や研究者のアイデアも積極的に採用し、世界に誇れる日本独自の廃止措置技術の確立を目指す。

果たした使命

日本で初めて原子炉の使用済み燃料を再処理した東海再処理施設は、1977年から2007年まで運転を行い、その処理量は約1140トンに達し、日本の再処理需要の一部を担うとともに、六ヶ所再処理施設を先導する大きな役割を果たした。

東海再処理施設の中心となる分離精製工場はフランスからの技術導入で建設した。国内技術者の知恵と努力により導入技術を我が物としつつ運転を続け、私もその一員として、運転管理を行いつつ、工程管理や保障措置のための分析技術の開発を進めてきた。

回収したプルトニウムはMOX燃料として加工し、自主技術で開発した新型炉の燃料として供給し、国内における核燃料サイクルの環をつないだ。さらにMOX燃料(新型転換炉ふげんの燃料)を再処理して回収したプルトニウムを再利用し、核燃料サイクルが持続可能なものであることを実証した。

こうして数々の経験を通して培われた技術や人材は、六ヶ所再処理施設へと受け継がれた。日本の再処理技術の実証に先導的な役割を果たし、東海再処理施設は一つの役目を終えた。

廃止措置の道

廃止措置計画では、放射性廃棄物によるリスクを早期に低減させるため、高放射性廃液のガラス固化を最優先で進めることとしている。廃棄物の処理などのため今後も継続して使用する施設の安全性をより高くすべく、新規制基準を踏まえた安全対策を速やかに進める。一方で、今後使用しない分離精製工場などの主要な施設の除染と機器の解体に着手する。

我々が目指す核燃料サイクルの確立に向けて、再処理施設のライフサイクルを完結するための廃止措置は、最後の仕上げの作業である。日本の再処理施設のフロントランナーとして、今後もその役目をしっかりと果たしていく。