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原子力機構の“いま-これから”

日刊工業新聞にて毎週金曜日連載中

第24回 連携・協働で原子力のイノベーションを目指す

高速炉・新型炉研究開発部門
敦賀総合研究開発センター
拠点化推進室長 鈴木 隆之 (すずき たかゆき)
掲載日:2018年7月27日

平成28年12月の国の方針では、敦賀の地を「周辺地域や国内外の原子力関係機関・大学等の協力も得ながら、我が国の今後の原子力研究や人材育成を支える基盤となる中核的拠点」と位置づけており、この実現のために、大学はじめ関係機関との連携を強化した活動を展開していきたい。

安全性・経済性

イノベーションとは、新しい考え方や新たな価値の創造を意味する。日本では高度成長時代に「技術革新」と訳された。しかし、その後、イノベーションは技術を超えて、21世紀の現在では「経営革新」、「新しいビジネスモデル」へと展開されている。

原子力利用におけるイノベーションは当初、安全性や経済性の向上に主眼が置かれた。内外での事故やトラブルの経験を経て、安全性はより高い水準をめざした取り組みが進められてきている。さらには、廃棄物の最小化や核拡散抵抗性の向上を通じて、社会による受容を向上させるための取り組みも行われている。これらの取り組みは、本連載でも紹介してきた。

このようなイノベーションの原動力となるのが、さまざまな関係者による連携や協働がもたらす相乗的な効果である。今回は、そうしたシナジーをめざした原子力機構の福井県での取り組みであるエネルギー研究開発拠点化の活動について、特に福井大学との連携協力に焦点を当てて紹介したい。

福井大と原子力機構は、2006年に包括的連携協力協定を締結した。これは産学官の連携や社会啓発活動、原子力専門研究教育を推し進めるのが狙いだ。本年度から福井大では、原子力工学の一貫教育(学部3年~修士課程)を敦賀キャンパスでスタート。これに呼応して原子力機構は、サマースクールを開催して、学部生を含む学生が、研究開発現場を体験し専門家とディスカッションできる機会を提供していく。

留学生も体験

さらに、原子力機構は、国外からの留学生についても、プラント現場での経験の場を提供し、将来の国際協力の一層の発展につなげていく。これまで、10年以上にわたって敦賀地区に留学生を受け入れているが、特に11年からは、福井大と連携して留学生に実務経験を積ませている。

原子力の先進国であるフランスからやってきた留学生が、帰国後に原子力技術者となるなど、この取り組みが実を結び始めている。今年受け入れた学生からも、「将来、原子力の仕事で活躍したい。日本での廃止措置研究は、近年進展しており、きわめて参考になる。」との声があがっており、非常に積極的である。

共同研究活発化

一方、原子力機構の体制面では、高速炉や廃止措置、レーザー応用などの研究開発を行う敦賀総合研究開発センターを4月に発足させた。特にクロスアポイントメント制度を活用して福井大附属国際原子力工学研究所の安濃田所長を招き、両研究組織のトップを兼ねることで有機的かつ効率的に運用していく。

原子力機構は、レーザー研究やナトリウム工学などの保有施設を用いて、共同研究や学生インターンシップなどを活発化させるとともに、「ふくいスマートデコミッショニング技術実証拠点」(福井県、福井大、若狭湾エネルギー研究センターと原子力機構の共同提案をもとに設置)の運用を6月から開始し、電気事業者と連携して地域経済の発展と廃止措置の課題解決にも乗り出す。

世界では、これから大量の「廃炉」の時代を迎える。地域連携で培われた企業の技術力が、日本のみならず世界に貢献していくことが期待される。