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原子力機構の“いま-これから”
日刊工業新聞にて毎週金曜日連載中第22回 「もんじゅ」の財産と夢を受け継ぐ
50年の活動
2010年5月、もんじゅは14年半ぶりに性能試験を再開し、順調にいけば2013年に本格運転に入る予定だった。しかし、性能試験からまもなくで炉内中継装置が落下。その復旧は2012年に完了したものの、2011年の東日本大震災を受けて規制基準が見直される。この基準を満たすためには、莫大な費用などが必要となるとの理由から、政府は2016年暮れにもんじゅの廃止を決めた。日本の将来を担う新型炉開発の象徴であった高速炉の「夢」は、途絶えてしまったのか。
いや、その「夢」はしっかりと根付き、それは今も受け継がれている。1958年に予備設計が始まったもんじゅではこれまでに、設計や開発、製作、建設および40%出力運転など、50年にわたる活動を続けてきた。その中で原子力機構などはさまざまな技術開発を進め、膨大で多岐にわたる技術成果を得てきた。
ノウハウ蓄積
もんじゅの建設などを通じて、高速炉発電システムの成立性を日本で初めて確認し、ナトリウム取り扱い技術、高温構造設計手法などのナトリウム冷却ループ型炉の枢要技術を確立するとともに、原子炉容器などの大型薄肉構造物、蒸気発生器などの大型ナトリウム機器の製造や運転に関するノウハウが参加した各社に蓄積された。
また、核燃料サイクル技術としては、軽水炉使用済み燃料から得られる多様な同位体組成のプルトニウムを利用したMOX燃料によって炉心を構成した。さらに、これまでの運転などの知見をもとに世界標準となる高速炉用維持規格の開発、高速炉の安全設計ガイドラインを構築したことである。もんじゅはまさに、高速炉の安全システムの設計面で世界をリードする役割を果たしてきたといえよう。
「負」の教訓も
もんじゅの設計・開発、製作および建設の各段階においてはこれまで、ほぼ100%の成果が得られており、これらは今後の高速炉の開発に幅広く適用できる。今後、廃止措置中に取得される技術情報も同様である。また、これらに関わってきた関係者の「夢」とその「思い」は、これからの廃止措置や今後ロードマップで定められる次世代高速炉開発などに生かされ、引き継がれる。それが、冒頭の「夢」の実現につなげる我々の使命だ。
もう一つ、忘れてはいけないことがある。もんじゅの運営ではナトリウム漏えい事故後の対応や保守管理不備により、社会の信頼を失った。私たちはそのことももんじゅの残した教訓として真摯に受け止め、今後のもんじゅの廃止措置を安全かつ確実に進めていく決意だ。