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原子力機構の“いま-これから”

日刊工業新聞にて毎週金曜日連載中

第18回 高速炉開発 燃料増殖や廃棄物減容めざし

高速炉・新型炉研究開発部門
戦略・計画室長 根岸 仁 (ねぎし ひとし)
掲載日:2018年6月15日

我が国はエネルギーの安定供給の観点から原子力開発黎明期より高速炉の研究開発に取組み、これまで「常陽」「もんじゅ」の設計、製作、運転等を通じて技術と経験を蓄積し、国産技術による高速炉の技術的成立性を確認してきました。「夢の原子炉」を現実のものとするためにも、より柔軟性をもって着実に研究開発を進めていく必要があります

純国産目指す

高速中性子による核分裂反応と、それに伴い発生する豊富な中性子を活用したのが高速炉技術だ。その使用済燃料からプルトニウムとウランを回収して混合燃料を製造する再処理技術と燃料製造技術を合わせて、高速炉サイクル技術と言う。この技術体系が確立すれば、消費した燃料よりも多くの新燃料を生み出す燃料増殖が可能となる。

また、高レベル放射性廃棄物に含まれる長寿命核種の分離回収と、短い半減期の核種への核変換を行うことで、廃棄物を減容し有害度を低減できる。わが国ではエネルギー安全保障や環境負荷低減をめざして、この高速炉サイクルを純国産技術として確立するための技術開発を進めてきた。

開発のカギ

高速炉開発のカギとなるのが、冷却材である液体金属ナトリウムの取り扱い技術である。この技術を開発するために旧動力炉・核燃料開発事業団は、高速実験炉「常陽」を建設。これまでに約7万1000時間におよぶ安定的な運転を達成した。この間に使用済み燃料の一部を再処理して再び常陽に装荷する小規模な高速炉サイクルの輪を実証し、高速炉サイクルの技術基盤を形成した。

現在は新規制基準への適合性審査に向けた準備を進めているが、高速中性子の照射場として世界トップレベルの性能と高精度の照射量・照射温度の評価技術をもつ常陽の運転再開には、世界からも大きな期待が寄せられている。

多くの知見蓄積

常陽で得られた成果は、原型炉もんじゅのプロジェクトに引き継がれ、40%出力までの運転を達成した。しかしもんじゅはその後、東日本大震災後の新規制基準対応が必要になり、その対応に要する時間と費用については不確定要素も大きく、運転再開によって得られる効果に見合わないと判断され、廃止措置に移行することになった。これに沿って原子力機構は、もんじゅの廃止措置に関する基本的な計画を策定した。

もんじゅは100%出力には至らなかったものの、ナトリウム取り扱い技術を含め高速炉サイクル技術に関する多くの知見を蓄積してきた。また、原子力機構では安全性強化や廃棄物の減容・有害度低減を目指した研究開発や、米国や仏国などとの国際協力を今も推進している。なお政府は、それらの知見などをベースに、わが国の今後の高速炉サイクル技術開発の進め方を特定した戦略ロードマップを今年中に作成する予定である。