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原子力機構の“いま-これから”
日刊工業新聞にて毎週金曜日連載中第7回 ガンマカメラで放射線を3次元可視化
効率的に除染
“見えない放射線を見る”—これは、放射線から人を守ることはもちろん、その場所がどういうところかを知るためにも重要となる。東京電力福島第一原子力発電所(1F)の廃炉作業においても、目に見えない放射線を可視化することにより、作業員の被ばく線量を少なくし、かつ除染を効率的に進める手助けをすることができる。
1F建屋内では床面や壁、天井、機器、がれきなどのさまざまな物体に放射性物質が付着しており、3次元的に拡がった汚染が存在している。また、建屋内は作業員が侵入できない、長時間作業が実施できないといった放射線量率が高いエリアが存在する。
このような高線量率環境において3次元的な汚染の分布を遠隔で測定することにより、汚染源を特定し、効率的な除染に役立てることができれば、廃炉作業の一層の加速につながる。
軽量680g実現
飛散した放射性物質の汚染分布を測定するための技術として、目に見えない放射線を可視化できるガンマカメラという放射線測定器が有望視されている。しかし、従来のガンマカメラは数kgから数十kgと重く、廃炉現場での活用が容易ではなかった。このような中、早稲田大学の片岡淳教授や浜松ホトニクスによって小型・軽量ガンマカメラが開発され、重さ1.9 kgとかなり軽量化が図られた。
原子力機構は片岡教授らの助言のもと、線量が高い現場でも持ちこみやすく、小型ドローンにも搭載可能なように約680gまで小型軽量化したガンマカメラを開発した。さらに数カ所での測定データを組み合わせることにより、汚染分布を3次元的に表示することが可能なシステムを構築した。
ドローンに搭載
今回、東電の協力により、1F3号機タービン建屋内通路で本システムを使って汚染分布の測定試験を行った結果、表面線量率が数 mSv/hのホットスポットを3次元的に表示することに成功した(図)。今後、1Fの建屋内でドローンやロボットに搭載し、高線量な場でも遠隔で詳細な3次元汚染分布が把握できるよう研究を進め、汚染源の効率的な撤去に向けて有用な情報を提供し、廃炉作業の円滑な推進に貢献できると考えている。