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原子力機構の“いま-これから”

日刊工業新聞にて毎週金曜日連載中

第5回 福島第一原子力発電所の廃炉に挑む
    ~廃炉国際共同研究センター~

福島研究開発部門福島研究開発拠点
廃炉国際共同研究センター長
小川 徹 (おがわ とおる)
掲載日:2018年3月2日

1Fの廃炉は未知の領域の分野です。従来の延長線上にはない創造的なアイデアを生み出し、それを活用していくことが、廃炉を円滑に進めていくためのカギとなります。そのために国内外の英知をどこまで動員できるか。私たちが手がける使命は、そこにあります。

未踏分野に挑戦

事故が起きた東京電力福島第一原子力発電所の炉心はどうなっているのか。これから何をすべきか。シビアアクシデント後の廃炉は、世界がまだ経験したことがない。このような未踏分野の取り組みには、多様な分野の知識や経験を動員し、創造的なアイデアとその活用が必須となる。

原子力機構ではそのために、研究者個人の独自性を尊重する「バザール型」のコミュニティーを構築した。廃炉人材育成に取り組む大学、高専、学協会と連携して立ち上げた「廃炉基盤研究プラットフォーム」がそれである。私たちはそこでの成果が廃炉の着実な進展・加速に貢献するよう、現場ニーズを十分踏まえるとともに、まだ顕在化していない将来ニーズを把握するための基礎・基盤研究の研究全体マップを検討するなどの研究活動を行っている。

言うまでもないことだが、事故炉の「廃止措置」技術の研究開発は、科学技術の最前線に位置している。炉内の状況を把握するにしても、わずかな量のサンプルから高度な分析技術を用いて最大限の情報を引き出すことが必要となるし、作業者のリスク管理には新しい原理に基づいた先端的な計測技術や耐放射線性を高めたカメラなどが不可欠である。

基礎・基盤研究

また、廃炉の各段階における安全確保のために、格納容器内の線量率分布の予測や、高度な画像処理と組み合わせた工程管理技術など、多様な計算科学的アプローチも有用である。これら先進的な技術をタイムリーに廃炉の現場に届け、それを活用することが、基礎・基盤研究に求められている。

原子力機構は2015年4月に廃炉国際共同研究センター(CLADS)を組織した。これは、文部科学省が2014年6月に公表した「東京電力福島第一原子力発電所の廃止措置等研究開発の加速プラン」に基づき、世界の英知を結集して、福島第一原子力発電所の廃炉に向けた研究開発と人材育成に関する取り組みを加速しようというものである。

2017年4月には研究開発拠点として、福島県双葉郡富岡町に国際共同研究棟の運用を開始した。今後、楢葉遠隔技術開発センター、大熊分析・研究センター(整備中)や茨城地区各施設での研究開発活動を結ぶとともに東京電力、国や福島県、国際機関、国内外の大学、研究機関、企業との研究連携と人材育成の取り組みに係る拠点としての役割を担っていく。

英知を結集

CLADSでは、「国内外の英知を結集する場の整備」「国内外の廃炉研究の強化」「中長期的な人材育成機能の強化」「情報発信機能の整備」の4つを目標とした取り組みを進めている。研究開発では、炉内燃料デブリの状況把握、燃料デブリの経年変化、取り出し完了までのリスク管理、的確な現場状況の把握に向けた新しいツールの提供、分析データの取得、拡充などに基づくより適切な廃棄物処理・処分方法の提示などを見据えている。

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