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原子力機構の“いま-これから”

日刊工業新聞にて毎週金曜日連載中

第4回 福島第一原子力発電所の廃炉に挑む
    ~楢葉遠隔技術開発センター~

福島研究開発部門福島研究開発拠点
楢葉遠隔技術開発センターモックアップ試験施設部
利用促進課長 野﨑 信久 (のさき のぶひさ)
掲載日:2018年2月23日

楢葉遠隔技術開発センターでは東電1Fの廃止措置に向けた挑戦として、廃止措置に必要なロボットなどの遠隔装置の研究開発を支援し、福島復興の促進に繋がることをいつも考えている。

巨大な空間

建物の中に入ると突然、巨大な空間が広がる。左手には鉄骨の構造物がいくつかそびえたち、右手には東電福島第一原子力発電所(1F)の2、3号機の構造物を模した設備が視界に広がる。ここは1Fの廃止措置を進めるために、原子力機構が1Fの近くに建設した楢葉遠隔技術開発センターの試験棟だ。高い放射線にさらされている1Fの建屋内を調べ、ガレキなどを撤去する作業の多くは、ロボットや遠隔操作で行う必要がある。そのための動作試験や操作訓練を行う施設である。

広い網で覆われた鉄骨の構造物中ではドローンの飛行実験も行われている。隣の構造物は1F建屋の中を再現したもので、操作員がリモコンを操作するとロボットがそこにある階段を登り始めた。さらに隣には大きな水槽があり、別のロボットが水中を動きまわっている。

実規模で再現

右手にある2、3号機の構造物を模した設備は、技術研究組合の国際廃炉研究開発機構(IRID)が原子炉格納容器の下部を実規模で再現したもの。IRIDはこれらを利用して1F事故の大きな課題である漏えい補修や止水技術の実証試験に取り組んでいる。

これらの設備がある試験棟の隣には研究管理棟があり、その中にはバーチャルリアリティーシステムがある。ゴーグルをつけて所定のスペースに立つと、あたかも原子炉建屋内を自由に動きまわっているような動作が再現できる。建屋内で作業する際の計画の検討や作業者の教育訓練、遠隔操作機器の操作訓練を行うのが狙いだ。これらの施設がオープンして1年10ヶ月、研究者などによる利用はすでに約100件を超えようとしている。(IRID施設を除く)。

VRも

楢葉遠隔技術開発センターは研究開発を行う企業や大学などに広く活用されている。

具体的には次のような試験を行える。

① モーションキャプチャシステム
がれきの上を進むロボットの動作検証や、ドローンを飛行させた時の動作を高速度カメラで計測できる。

② モックアップ階段
傾斜角や高さを変えることで、1F現場にあるさまざまな階段を模擬した。ロボットでの走行試験や動作計測ができる。

③ ロボット試験用水槽
1F建屋内の水没調査する水中ロボットの試験ができる。昇温や水質を変えられる。

④ バーチャルリアリティー(VR)システム
仮想現実技術を用いることにより、巨大な4画面に1F建屋内を3次元で再現し、あたかも現場にいるかのような環境を立体視できる。

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