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原子力機構の“いま-これから”

日刊工業新聞にて毎週金曜日連載中

第3回 福島第一原子力発電所事故後のJAEAにおける福島への貢献
    ~福島環境安全センターの取り組み~

原子力機構福島研究開発部門福島研究開発拠点環境安全センター
プロジェクト管理課長 川瀬 啓一 (かわせ けいいち)
掲載日:2018年2月16日

私たち職員は福島県や関係機関と連携し、住民の方々が安全で安心な生活を取り戻すために何が必要か、何ができるかを常に自問しながら、必要な環境回復に係る研究開発を進めていく予定です。

河川水を調査

福島県東部に位置する南相馬市と浪江町にまたがって流れる太田川の源流域には、深い森が広がる。蛇行する渓谷に沿って延びる林道を、2017年の夏、職員を乗せた四輪駆動車は進んだ。原子力機構では原発事故後、事故で放出された放射性物質が環境中でどう動いているのか、これからどう動くのかを調べる、いわゆる環境動態研究に取り組んでいる。河川水に含まれる放射性セシウムの起源を突き止めるのが、今回の目的だ。

林道の終点で車を降り、その源流までは、職員自身の足で登る。コンパスと地図が頼りだ。源流に到着した時には、全身が汗と土、枝葉にまみれていた。職員は持ってきた容器を取り出し、地表からしみ出す湧水を採取した。

湖底の泥採取

下流のダム湖では、別の職員が専用の機材を用いて深度40 mの湖底から泥を採取している。さらにその下流の河川や河口では、放射性セシウムの移行調査を継続的に行っている。水系のみならず、森林では樹木や土壌、落葉落枝を各地で採取し、放射性セシウム濃度を測定している。多様な環境で継続的な調査を行っているのは、陸域から水域にかけた放射性セシウムの移行挙動について、包括的に理解することを目的としているためである。

原子力機構は福島の環境回復に取り組むために事故直後から、ヘリコプターや自動車、あるいは歩いて放射線量率を調べ、それらをまとめた分布マップを作成してきている。また、除染技術のモデル実証や環境動態研究、さらには住民からの質問に答える「放射線に関する質問に答える会」を実施してきている。その拠点となっているのが、当機構の福島環境安全センターだ。同センターは現在、福島県が設置した福島県環境創造センター内にあり、県や国立環境研究所とともに協力や連携体制を敷いている。

情報サイト公開

原子力機構では、放射性物質の沈着分布やその経過を把握し、住民の方々の被ばく線量の推定や除染の計画立案の基本情報として整理した。関係機関によるデータを集約した「放射性物質モニタリングデータの情報公開サイト」を公開している。

また、これまでの環境動態研究の結果、森林内における放射性セシウム蓄積量は森林土壌が大部分を占めていること、森林から河川水系への放射性セシウムの流出は限定的であることを明らかにした。これらの知見はQ&A形式で整理して公開している

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