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原子力機構の“いま-これから”

日刊工業新聞にて毎週金曜日連載中

第2回 ふくしまの復興に向けて

理事・福島研究開発部門長 野田 耕一 (のだ こういち)
掲載日:2018年2月9日

当機構の1F事故対応の活動は、災害対策基本法における指定公共機関としての緊急時対応から始まりました。
そして、我が国における原子力に関する唯一の総合的研究開発機関として、国内外の英知を結集し、1Fの廃炉および福島の環境回復に向けた実効的な研究開発を行うとともに、研究開発基盤の整備を進めていきます。

職員7人が集合

2011年3月11日午後、東電福島第一原子力発電所(1F)を津波が襲い、1~3号機では炉心を冷やすすべての電源が失われた。放射線の測定を専門とする当機構の職員7人がひたちなか市にある事務所に集合したのはその日の23時。職員らは自衛隊のヘリコプターなどを利用して、福島県原子力センターに到着。翌12日早朝から、福島県内の放射線を測定する作業を開始した。

翌13日、当機構の第2陣がセンターに到着。その後もセンターに職員を派遣し、そこを拠点として放射線モニタリングや技術的助言等を実施した。

活動の規模拡大

事故発生から3ヶ月後には「福島事務所」を開設し、ヘリコプターや自動車などを利用した放射線量率の測定および分布マップの作製、除染技術のモデル実証、放射性核種の移行に伴う環境動態研究等の環境回復に係る研究など活動の規模を拡大した。これらは福島県環境創造センターに移転し、現在まで研究を継続している。

一方、原子力機構では事故炉の収束のための支援も始めた。事故直後から原子力機構は政府や東電に、専門知識をもつ職員を派遣。収束作業の進展に伴って、その後は1F建屋内に滞留した高濃度汚染水の放射能分析や処理装置に関する技術検討、遠隔操作ロボットの整備や提供も行った。

開発拠点整備

また、政府の「1F廃止措置等に向けた中長期ロードマップ」にもとづき、燃料デブリの性状把握や放射性廃棄物の処理・処分に係る研究開発を実施。そのために「楢葉遠隔技術開発センター」(2016年4月本格運用開始)を整備したほか、現在は「大熊分析・研究センター」(2018年3月運用開始予定)を整備している。さらに、国内外の廃炉研究の英知を結集し人材育成に取り組む「廃炉国際共同研究センター(CLADS、クラッズ)」の中核拠点である国際共同研究棟を富岡町に整備し、17年4月に運用を開始した。これらの施設を活用した国内外の大学・研究機関等との共同研究等を推進することにより、関係機関が一体となった国際的な廃炉研究拠点の形成を目指す。これらについて、順次、紹介していく。

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