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原子力機構の“いま-これから”

日刊工業新聞にて毎週金曜日連載中

第1回 原子力機構 ~国内唯一の原子力の総合的研究機関~

事業計画統括部長 大井川 宏之 (おおいがわ ひろゆき)
掲載日:2018年2月2日

大阪府生まれ。東海村での研究者生活の方が長くなったが、関西弁が抜けない。専門は原子炉物理学、長寿命放射性廃棄物の核変換技術など。現在は東京事務所で計画立案や総合調整などに携わっている。

日本原子力研究開発機構(原子力機構)は、原子力の総合的な研究開発を行う国内唯一の機関である。
連載では原子力機構の活動を紹介していくが、まずは、機構全体のあらましを紹介する。

最大の研究機関

原子力機構が誕生したのは2005年。当時の日本原子力研究所と核燃料サイクル開発機構という、二つの原子力関連法人が統合して発足した。現在の予算は年間約1500億円、職員数約3100人で、研究機関としては我が国最大級の規模を誇る。

原子力機構では研究用原子炉、加速器、放射性物質の使用施設など、特徴ある施設を使った基礎基盤的な研究とそれを土台としたプロジェクト的な研究開発を手がけており、現在の重点開発分野は四つある。

多様な取り組み

「福島第一原子力発電所事故への対処のための研究」「原子力の安全性向上のための研究」「高速炉や高温ガス炉など新型原子炉の開発や再処理技術の高度化など核燃料サイクルの確立に資する研究開発」「放射性廃棄物の処理処分や有害度低減のための研究開発」である。このほか、施設の供用促進や原子力人材の育成など原子力機構の強みを生かした多様な取り組みも進めている。

本部は茨城県東海村にあるが、研究開発を行う拠点は、規模の大小はあるものの、日本各地に広がっている。

原子力機構は多岐にわたる研究開発を行うために、多くの原子力施設を抱える。そのために安全確保や廃棄物対策については多様で、かつきめ細かな対応が必要となる。これらの課題に長期にわたって着実に取り組んでいくために、17年に「施設中長期計画」を策定。継続して利用する施設と廃止措置に向かう施設を明確化した。

「共創の場」整備

同時に、研究開発成果を生み出すため「イノベーション創出戦略」も策定した。この戦略は研究用原子炉やJ-PARCなどの大型研究施設を中心に異分野融合促進のための「共創の場」の整備や、少量の核燃料物質を使った研究と計算科学の組み合わせによる研究開発プロセスの高速化などを掲げている。

原子力機構ではさまざまな研究開発活動を行っているが、世間一般からは「原子力」という看板の下に画一的に見られがちである。連載では、「原子力機構ではこんなこともやっているのか!」という発見を読者の皆さんに提供するために、次回からはイノベーションの創出に向けた魅力ある研究拠点、研究開発テーマを中心に紹介していく。