1_12_11 品質管理手法
達成目標

地下深部の地質環境特性の調査・解析結果の信頼性を確保するための,各調査および取得した調査データの品質を管理することを目標とします。

方法・ノウハウ

地下深部の地質環境特性の調査・解析では,調査の目標(あるいは反映先)である安全評価および地下施設の設計・建設に向け進め方を設定し,それぞれの調査および調査データの品質を管理することが必要不可欠です。

例えば,ボーリング調査においては,調査全体および個別調査の目標を策定し,それに向けて必要な調査手法が適用されます。この調査の品質を確保するために,個々の調査手法を具体化した調査マニュアルの整備や調査ごとの品質を確保するための品質管理計画書を策定する必要があります。ここでは,超深地層研究所計画における地表からの調査研究として実施した,MIZ-1号孔ボーリング調査の品質管理方策を参考として紹介します1)

MIZ-1号孔ボーリング調査では,以下の品質管理計画書を策定しました。これらの計画書には,作業の基本的な流れや手順を示した作業フローと作業手順書ならびに使用する装置などの性能を事前に確認するための品質管理チェックシートなどが含まれます。

ボーリング調査に限らず,現場での調査を実施するうえでは,発生し得る事象を事前に可能な限り想定し,それぞれの事象への対応策を検討・準備しておくことが重要です。MIZ-1号孔では,図1に示すProcess Decision Program Chart (PDPC) 手法を適用しました。これはある目的を達成するために,その過程で発生し得る事象を抽出し,それぞれの対応策をフローチャートの形式で示したものです。また,一連の品質管理手法を実効的なものとするためには,関係者全員が調査の目的や手法を理解し,意識的に取り組むことが最も重要です。

ボーリング掘削中に起こり得るトラブルや事象,それが生じる順番,その原因と対策をフロー図で表した図。MIZ-1号孔での250mコントロール掘削(SDS同時掘削)において発生し得る事象として抽出されたのは,コントロールの可否,修正した場合の傾斜方位,掘進率,水理試験の可否(逸水の有無)である。
図1 Process Decision Program Chart (PDPC) 手法(MIZ-1号孔の例)
東濃地域における実施例1)

MIZ-1号孔ボーリング調査では,取得した調査データについて調査中もしくは調査終了後に担当者が確認をとり,適時に適切な判断ができるような体制を整えました。調査中にトラブルが発生した場合は,受注者がその発生事象と原因ならびに再発防止策などを記述した報告書を速やかに作成・提出することで再発防止に努めました。また,1つの調査が終了した直後には,受注者が生データを中心とした速報を作成し提出することで品質を管理しました。さらに,MIZ-1号孔ではPDPC手法を適用することによって効率的かつ適切に目的を達成することができました。

ここで紹介した品質管理手法は,ボーリング調査以外の他の調査においても適用しました。その結果,調査や調査データの品質を確保することができ,その反映先である安全評価および地下施設の設計・建設で実施される解析・評価結果の信頼性を確保することができました。

参考文献
  1. Nakano, K., Amano, K., Takeuchi, S., Ikeda, K., Saegusa, H., Hama, K., Kumazaki, N., Iwatsuki, T., Yabuuchi, S. and Sato, T. (2003): Working Program for MIZ-1 Borehole Investigations, Japan Nuclear Cycle Development Institute, JNC TN7400 2002-008, 77p.

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