1_12_9 地質構造/水理地質構造のモデル化および地下水流動解析技術
達成目標

調査の進展とともに,データの解釈,地質構造/水理地質構造モデルの構築,地下水流動解析を迅速に実施するためのモデル化・解析環境を整備することを目標とします。

方法・ノウハウ

地質環境特性を効率的かつ合理的に把握するためには,調査終了後,迅速に取得したデータの解釈を行い,地質環境モデルを構築し,その結果に基づき次の調査計画を立案できることが重要です。地下深部の岩盤を対象により実際の地下水流動場を表現するためには,岩盤中の地下水流動に与える影響が大きい断層や割れ目などをモデル化し,数値解析を行うことが必要です。このモデル化・解析は水理地質構造が複雑になるほど多大な時間と労力が必要となるため,この作業を迅速に実施するためのシステムを整備することが必要になります。

モデル化・解析のシステムとしては,調査データの分析,メッシュ分割,物性値の割り当て,解析条件の設定,解析結果の可視化といった一連の作業がパッケージ化されたものや,上記の各作業で用いる複数のソフトをインターフェースでつないだものがあります。評価対象領域の地質環境の特徴やモデル化・解析の目的に応じて,使用するシステムを使い分けることが一般的です。

東濃地域における実施例1)

調査の進展に応じて,迅速に地質環境モデルが構築できるようにするため,地質構造モデルの構築から水理地質構造モデルの構築および地下水流動解析までの一連の作業に必要なソフトウェアや解析コードを統合したGEOMASS(GEOLOGICAL MODELLING ANALYSIS AND SIMULATION SOFTWARE)システムを構築しました。本システムは,数値解析作業の中で多くの労力を必要とする空間領域の離散化を地質構造モデルに基づき自動で行えるなど,モデル化作業から数値解析までの作業が一体化されており,作業労力の節減が可能です。

GEOMASSシステムは,主に地質構造モデルの構築および可視化を支援するEarthVision®,水理地質構造のモデル化と地下水流動解析を行うFrac-Affinityの2つのソフトウェアで構成されています。本システムにおける地下水流動のモデル化・数値解析作業は,図1に示す手順で進められます。本システムの主な特徴として,①モデル化作業と数値解析作業が一体化されている,②不連続構造と岩盤マトリクス部を同時に考慮できる,の2点が挙げられます。前者の特徴により労力の節減を図ると同時に,情報量の増加等に伴うモデルの修正,解析の再実行を短期間で行うことができます。また後者の特徴により,断層などの不連続構造の影響を考慮した地下水流動場をより実際に近い形で表現することが可能となります。

本システムを用いて,地上からの地質環境調査や地下施設の建設時・維持管理時の地質環境調査の進展に応じて,地質構造/水理地質構造モデルの構築・更新および地下水流動解析を実施してきました(図2)。その結果,以下のことが確認できました。

GEOMASSシステムでは三次元可視化ツールであるEarthVision®で水理地質構造のモデル化を行い,地下水流動解析ツールであるFracAffinityで浸透流を解析する。処理の流れは次のとおり。1.データセットを用い,2.EarthVision®で地質構造モデルを構築する。3.Frac-Affinity Export機能によりエクスポートされた地質構造モデルにFrac-Affinity Interfaceでパラメータを指定する。4.Frac-Affinityで水理地質構造モデルの作成および数値解析を自動実行する。5.Frac-Affinity Interfaceで可視化用ファイルを作成する。6..EarthVision®で解析結果を可視化する。
図1 GEOMASSシステムの概要
地層境界や断層の分布を三次元的に表現した地質構造モデル。このモデルから,各地質・地質構造がもつ透水性のパラメータを付加した水理地質構造モデルを作成する。さらに水理地質構造モデルを用いて数値解析を行い,地下深部の地下水の水圧分布を計算して図化する。
図2 GEOMASSシステムによる地質構造/水理地質構造モデルおよび地下水流動解析結果の図化の一例
二台のモニタを使用してモデル化作業を行っている。1台のモニタには地質構造の立体的な画像が,もう1台には細部の画像が映されている。
図3 GEOMASSシステムによるモデル化作業風景
参考文献
  1. Ohyama, T. and Saegusa, H. (2009): GEOMASS System, JAEA-Testing 2008-007, 248p.

PAGE TOP