原子炉施設の廃止措置を行う際には、建屋の解体前の汚染レベルを測定する必要があります。一括して汚染確認を行う測定法として、一般には、高いエネルギー分解能をもつGe検出器を用いた測定が考えられています。これに対して、ここでは汚染確認測定をより効率的に実施することを目的に、エネルギー分解能は悪いが高い検出効率をもつ大型のNaI(Tl)検出器の適用性について評価しました。
合計で40cm x 40cm x 10cmの結晶をもつ極めて高効率なNaI(Tl)検出器。本来は上空から地質探査をするために開発されたγ線検出器であるが、原子力施設の緊急時における広域の汚染を上空から迅速に測定をするために、世界各国で用いられている一般的な形状・大きさをもつ検出器である。
図1:航空機γ線サーベイ用NaI(Tl)検出器の適用例
Ge検出器に比べてNaI(Tl)検出器は非常に高い検出効率を示しますが、建屋にある自然の放射線に対しても高い検出効率をもつため、NaI(Tl)がもつ長所を生かしきれません。そこで、自然成分による放射線場は建屋内部では均等であると仮定して、自然の主な3成分毎に検出器応答を予め計算で評価し、各強度に応じて差し引くことでバックグラウンド成分が除去し、汚染核種の検出を高めることを検討しました。図は、汚染のない実験室の波高スペクトルから差し引きを行った例です。差し引き後に残った図中の青い波線は宇宙線成分に相当し、低いエネルギー部を除き、おおむね良く差し引けることを確認しました。
図2:汚染のない実験室の波高スペクトルから差し引きを行った例